AMGTAが金属3Dプリンター廃棄物を安全輸送する新技術を発表

2022年 7月 4日

AMGTA 2022年6月27日

Additive Manufacturer Green Trade Association(AM事業者グリーントレード協会・AMGTA)は2022年6月27日、3Dプリント工程で発生する金属粉の廃棄物を安全に輸送する新手法を概要にまとめ、報告書を発表した。航空宇宙部品のサービス機関であるSintavia社と粉末関連のスペシャリストであるKBM Advanced Materials社が開発したこの新プロセスは、粉末廃棄物に樹脂材料を加えることで、非危険物の混合物を作成するものとなっている。これにより、廃棄物をリサイクル工場に安全に輸送し、またマトリックス樹脂を再生して積層造形に再利用できる可能性も秘めている。

AMGTAのエグゼクティブディレクターであるSherri Monroe氏は、この最新報告書はレーザー粉末溶融炉(PBF)技術を使用する企業にとって必読であると述べている。

この新しいプロセスは輸送コストを削減するだけではなく、可逆的であるため、金属リサイクル会社は受け取った粉末を汚さずに利用することができる。またこれまで有害物として埋め立てなければならなかった廃棄物を、一部リサイクルすることも可能となった。

AMGTAでグリーン3Dプリンティングを推進

AMGTAは、設立メンバーのSintavia社、大陽日酸株式会社、QC Laboratoriesによって2019年に設立され、積層造形における環境面でのメリット推進を主な目的としている。

2020年11月には、GE Additive社、Materialise社、Siemens Digital Industries社、EOS社といった業界大手を含む12社が加盟した。さらに最近では、Stratasys社もサステナビリティーと社会変革への取り組みの一環として、AMGTAのメンバーとなった。

AMGTAは設立以来、金属3Dプリントが環境に及ぼす結果について、委託を受けた大学の分析論文を公開している。この文献は、技術が環境に与える影響について既存の学術研究を統合し、従来の製造方法と比較評価して、特定の材料およびプロセスについて深く掘り下げている。

さらに同協会は、3Dプリントされた航空宇宙部品と、従来の製造品とを比較するライフサイクル評価(LCA)を事前に委託している。ロチェスター工科大学(RIT)が実施したLCAは、最大18種類の環境指標が含まれ、ジェットエンジンの低圧タービンブラケットを3Dプリントすることによるプラスの影響を定量化している。

廃棄物輸送の新たなアプローチ

粉末凝縮物とは、金属3Dプリント材料の再生バッチからふるい落とされたススと粉末スパッタを指すものである。現在Sintavia社では、凝縮された粉末に砂とシリコンオイルを混ぜて輸送している。これにより発火の危険性はなくなるが、危険物として輸送しなければいけないことには変わらず、再生処理にもコストがかかる問題を抱えている。

AMGTAの最新報告書によると、全く新しい不動態化処理方法として、凝縮水をKBM社が供給する特殊な樹脂と混合して非危険物とし、規制の制約を受けずに輸送できるようにすることが検討されている。KBM社ではこの混合物を受け取ると、樹脂を粉末から分離し、金属を新しい粉末および製品の製造に再利用できるとしている。

Sintavia社とKBM社では、インコネルとヘインズという2種類のニッケル合金で不動態化処理のテストを行い、有望な初期結果を報告した。また、試験環境における空気の質も許容範囲内であり、試験中に危険な状況が発生しなかったことも報告されている。

今後、さまざまな種類の復水廃棄物についてさらに試験を行う必要があるとしているが、Sintavia社とKBM社が生み出した方法によって、物流上の制約を受けずに安全かつ費用対効果の高い方法で金属製の復水廃棄物を輸送できることが明らかになった。

AMGTAの理事長でSintavia社CEOであるBrian Neff氏は次のように述べている。「この報告書は、AMGTAが積層造形の持続可能な利用方法の開発においてリーダーシップを発揮している素晴らしい例です。この新しい方法がほかの企業でも採用されることを願っています。」

報告書の全文は、「KBMの樹脂プロセスを用いたSintaviaの粉末凝縮物の不動態化評価」と題されている。

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