Siemens Digital Industries Software社が製造用ソリューション「NX for Manufacturing」をアップデート

2023年 6月26日

Siemens Digital Industries Software社 2023年6月16日

Siemens Digital Industries Software社は 2023年6月16日、製造用ソリューションである「Siemens NX for Manufacturing」のアップデートを発表した。

NX CAMの新機能

Cloud Connect Tool Managerはグラフィックベースのインターフェイスで、工具とコンポーネントの管理を容易化し、NX CAMでの工具データのメンテナンスを効率化できる。また、web技術を利用してベンダーのデータベースから工具をインポートすることもできる。

使いやすいインターフェイスとグラフィカルなデザインにより、工具の定義と編集を行うプログラミングワークフローが簡素化されている。必要な工具を迅速に見つけることができ、ダイナミックな工具プレビューと寸法表示によって時間短縮と労力削減が実現できる。

ナビゲーションと表示を簡単にするための四つの表示モードと二つの検索モードが備わっており、インテリジェントな検索機能は基本的なクエリのみならず多くの数式、記号、キーワードを認識することができる。ベンダーのデータベースから直接工具をインポートし、豊富なライブラリにアクセスすることで生産性と効率の最適化を図ることができる。

今回、新たにMachine Contextの Position Part & Fixtures機能が強化されたことにより利便性と視認性が向上し、CAMセットアップにおける位置決めを迅速かつ正確に行うことができるようになった。例えば、バウンディングボックスやシリンダーを使ったハンドルの位置決めを動的に行うことができる。部品と関連する治具アセンブリの位置決めも可能となっており、機械の代わりにセットアップを動的に移動できるため、工作機械内のセットアップの視認性が向上する。

また、Automatic Turning Tool Holder Collision Shape Creationにはホルダー干渉チェック工程の安全性を向上させる新機能が導入された。ユーザーは、工具作成プロセスで衝突形状やレイヤー設定を手動で指定する必要がなくなり、プログラミングミスをなくすことができる。旋削工具ホルダーの2Dホルダー形状は、ツールパス検証中に自動的に作成されるようになった。

さらに、Dovetail Mill Tool工具の機能強化により、業界の命名規則を使用しての工具作成が簡素化され、基本的なダブテール工具パラメーターを容易に指定できるようになった。ダブテール工具は、平面ミル、Zレベルアンダーカット、ソリッドプロファイル、3軸バリ取りなどの加工タイプをサポートするものである。

一方、シャンクデータの定義の簡素化と正確なシャンク表現を実現する「Simplified Shank Creation」機能が登場した。データをマルチシャンクライブラリに整理することで、重複のリスクが減少し、シャンク管理が簡素化される。ホルダーの定義と同じ方法で3Dパーツからシャンクデータを抽出することで、複数ステップのシャンクを定義でき、複雑なステップを経ていたシャンク定義を簡単に行うことができる。

Distance Measure with Pick on Path機能により、ツールパスが表示されている場合、ツールパス上の2点間またはツールパス上の点とジオメトリオブジェクト間の距離を簡単に測定することが可能になった。また、ツールパス上の点と切削工具の間や、切削工具とジオメトリオブジェクトの間の測定値の検証も容易になる。

カットエリア抽出機能により、選択した形状をほかの加工に再利用しやすくなった。選択したカットエリアを「Mill_Area」として抽出し、その後の加工に使用することができる。

NX CAM On-Machine Probingの新機能

NX CAM On-Machine Probingは、既存のCAMプログラム構造に測定オペレーションを統合して精度と効率性を実現するもので、加工プロセス全体のプロセス変動を測定、評価、補正し、品質と効率を向上させる。

プロービングテンプレートの下にはプロービングオペレーションテンプレートがあり、合理的かつ直感的なワークフローを提供する。プログラマーは、測定作業を必要なツールや機能に簡単にアクセスして、加工オペレーションに組み込むことができる。これにより、プログラミング~計測間を迅速に移行することができ、生産性の最適化と機械のダウンタイム削減が実現できる。

インテリジェントな機能であるNX CAM On-Machine Probingは、選択された形状について可能なサイクルを包括的に提供する。最適な測定タスクを迅速にナビゲートして選択できるため、効率的で正確なプログラミングが可能になる。

この機能は実際のコントローラーと統合され、パラメーター表現をミラーリングするため、経験の浅いプログラマーにコンテキストとガイダンスを提供する一方で、経験豊富なユーザーにもプログラミングプロセスの簡素化というメリットをもたらす。測定サイクルのツールパスは、オンボードツールを介して検証することができ、マクロから実行される機械の動きを表現する。また、さまざまな形状に対応する幅広いサイクルを提供し、SiemensならびにHeidenhainのコントローラーに対応する。

NX Additive Manufacturingの新機能

積層造形用のNX Additive Manufacturingでは、パーツをSinterboxで囲むことができるようになった。Sinterboxは、選択したパーツの周囲に作成されるかごのような格子構造で、ボックス型またはフリーフォームで囲むパーツの形状をとることができる。

Sinterboxは以下の目的で使用できる。

  • 3Dプリント中および後処理中の損傷から壊れやすいパーツを保護。
    特にビルドトレイに多数のパーツや非常に小さなパーツがある場合にパーツの紛失を防止。
  • 3Dプリント中や後処理中におけるパーツの区別。ビルドトレイに似たようなパーツがあり、迅速かつ簡単に区別したい場合に特に役立つ(例:複数の顧客からの注文を一つのビルドにまとめる場合など)。

なお、Sinterboxの構造には、グリッドとロッド(設計ライセンス不要)、標準格子、ボロノイの3種類がある。

NX 2306では、積層造形トレイ内のNXアセンブリのサポートも強化されている。ビルドトレイにアセンブリを追加すると、そのアセンブリの部品とサブアセンブリが全て自動的にグループとして追加され、そのグループがビルドトレイパネルに表示される。

Build Trayパネルの既存のアセンブリは、ドラッグや、Print Reorder BeforeまたはPrint Reorder Afterコマンドで並び替えることができる。 NX AMはアセンブリを個々のオブジェクトとして管理するため、アセンブリからパーツを移動するとほかのアセンブリメンバーも全て移動する。 つまり、アセンブリ内の個々のメンバーの相対的な位置や向きを保持したまま、アセンブリを移動できるのである。ネスティング時には、アセンブリも一つのオブジェクトとしてネスティングされる。

また、NX2306の積層造形機能では、造形トレイをセットアップする際の使いやすさも向上している。NX2306では、パーツ、サポート、ビルドボリュームなど、特定のタイプのオブジェクトをワンクリックで簡単に表示・非表示できる。オブジェクトを個別に選択しなくてもすむため、特にパーツやサポート構造が多くあり、全てのパーツやサポートを一度に非表示にしたい場合に役立つ。

このように多くの積層造形準備機能が新たに追加されており、NX2306はこれまで最も利便性と有用性が高いバージョンとなっている。

Teamcenterを活用したManufacturing Data and Process Managementの新機能

製造データとプロセス管理によって企業は人、システム、機械をデジタルでつなぐことができるようになる。PrimeTurning ToolsがManufacturing Resource Library(MRL)に統合されたことで製造データと工程管理が大きく飛躍した。SandvikのPrimeTurning Toolsによって、CAM操作の効率が最大化し、切削時間が最大50%短縮できるほか、正確な仕上げ面や優れた切りくず処理、工具の長寿命化が実現する。

PrimeTurning ToolsとMRL工具ライブラリとの統合により、全てのSandvik Coro PrimeTurning製品に特化した新しいクラスが作成され、同社の高度な工具の統合と効率的な取り扱いが可能になった。MRLには自動マッピング機能があり、工具のパラメーターやグラフィックがベンダーのデータから新しいクラスに自動的にマッピングされるため、MRLからコンポーネントを管理し、プライム旋削工具アセンブリを構築することが可能となっている。NX CAMユーザーは、工具アセンブリの作成から加工工程へのシームレスな移行を提供するPrimeTurningツールパス計算をフル活用できる。

製造データとプロセス管理については、NX CMMからのデバイス検索機能も強化されている。NX CMMでは、CMMデバイスを搭載する保持システムのサポートやCMMアクセサリへのアクセスなど、必要なリソースを全てMRLライブラリから検索できるようになった。CMM Inspectionはスタンドアロンアプリケーションとしても使用でき、CMMマシン、測定装置、プローブツールに関連する必要なリソースが全てNXで利用できるようになっている。

従来のNXではCAMとCMMは別々のアプリケーションであり、どちらか一方を使用するか選択する必要があったが、NX CAMとNX CMMライブラリの統合によって、NX CAMの複合加工アプリケーションであらゆる製造リソースにアクセスできるようになった。

現在では、ツールパス生成と検査プログラミングの両方を一つのアプリケーションで実行できるようになり、よりシームレスで効率的な製造ワークフローと、必要な機械、デバイス、工具などへのアクセスが実現した。

Active Workspace Manufacturing Workspaceは、製造部門のユーザーに明確なアサイン概要を提供することで生産性が向上するよう設計されたものである。明確で整理されたレイアウトにおいて、ユーザーは異なるビューを簡単に切り替えることができる。CAMセットアップ、AMプリントジョブ、検査など、さまざまなタスクの製造オブジェクトが作成可能となっているため、生産性が最適化され、毎日のタスクに集中できるようになる。

NX Assembly Line Plannerの新機能

新機能である操作ライブラリは、NX Assembly Line Plannerでステーションの内容を計画する際に、再利用と最適化のためのナレッジリポジトリを提供する。操作や操作グループは、ステーションの詳細を作成する際に任意のプロセスプランに追加することができ、その後は各ユースケースに正確に適合させることができる。ライブラリには、一般的なベストプラクティス、地域標準、工場固有のプロセスなど、有用な知識が豊富に掲載されている。

また、PERTビューアーが多品種アセンブリに対応するよう強化され、機能性と製品ビルドアップの可視性が向上した。各ステーションの実際の計算サイクルタイムをPERTビューで直接確認できるようになり、問題のあるステーションや利用可能なキャパシティを持つステーションが迅速に特定できる。さらに、PERTビュー内でのバリアントの画像の取り扱いが強化された。分析と意思決定を支援するために、各ステーションの各バリアントの画像をキャプチャーして、各構成の製品ビルドアップが正確に表現できるようになっている。

NX Line Designerの新機能

新たに導入されたAttribute Viewerは、NX Line DesignerのPlant Navigator内のプラント構造内のリソースの属性を効率的に表示・編集する機能で、管理者が定義した属性に簡単にアクセスして修正でき、属性データの一貫性と正確性を保証する。

管理者は、内容が類似する属性をグループ化し、柔軟に構造を構築することができる。例えば、リソースのコストに関連する属性をグループ化してデータ管理の合理化を図ることができる。現時点では、Attribute ViewerオプションはNX管理モードでのみ利用可能である。

Resource Libraryは新たなコンテンツが加わった拡張版がサポート・センターで公開予定になっている。新たなコンテンツには、フラットトップコンベア、ペデスタルコンベア、ジャンクションやターンテーブルなどの電化モノレール、3レールパワー&フリーコンベア、ストラクチャートラックコンベアなど、さまざまなタイプのコンベアや関連機器に焦点が当てられている。

NX Fixture Plannerの新機能

新たにSet as End Itemコマンドが追加され、治具設計者は任意のユニット設計をエンドアイテムとして定義できるようになった。これにより、治具の詳細設計とキネマティックな定義を維持するためのデータが簡素化され、読み込み速度が改善されるほか、設計とシミュレーションアプリケーション間の統合が向上する。

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