Ansys社がマルチフィジックス解析ソフトウェア「Ansys 2023 R2」をリリース

2023年 7月31日

Ansys社 2023年7月25日

Ansys社は2023年7月25日、同社製シミュレーションソフトウェアの最新版となる「Ansys 2023 R2」をリリースした。Ansys 2023 R2は、分散したエンジニアリングチームに新しいテクノロジーとパフォーマンスの向上を提供し、業界のイノベーションを推進する。強化された数値計算機能、さらに向上したパフォーマンス、分野横断的なエンジニアリングソリューションなどの優れた機能を兼ね備えたAnsys 2023 R2は、高度な物理ソルバー、スケーラブルなGPUベースのコンピューティング、シームレスなワークフローを実現する。

Ansys社の製品担当シニア・バイス・プレジデントであるShane Emswiler氏は、「当社の最新のソフトウェアリリースは、半導体メーカーや電気自動車メーカー、自律型航空機の開発者の皆様にデジタルトランスフォーメーションに不可欠なスケーラブルなデジタルエンジニアリングワークフローを提供します。バーチャルな設計と開発は、業界をリードする企業における変革的イノベーションの最前線であり、当社はその実現を支援します」と述べる。

各業界がデジタルエンジニアリングで革新とコラボレーションを実現

高度なエレクトロニクスは、電気自動車(EV)、垂直離着陸機、救命医療機器などの次世代製品の設計に不可欠であるが、このような製品は、新しい半導体や集積回路(IC)技術と高度な電子機能に依存している。高密度3D ICのようなイノベーションによって小さなスペースに多くの機能を詰め込むことが可能になったものの、コンパクトなフォームファクタのために、熱、電磁気(EM)、電力に関する課題が複雑になっている。ANSYSのソリューションは全ての主要な半導体ファウンドリから認定されており、ANSYSの電熱ソリューションは、信頼性の高い3D IC設計に不可欠なものとなっている。半導体向けマルチフィジックス・サインオフ・ソリューションであるANSYS RedHawk-SCがアップデートされたことで、熱解析ワークフローが大幅に加速した。IC設計のための完全な電磁場シミュレーションとモデリングチェーンでは、ANSYS High Frequency Structure Simulator(HFSS)、ANSYS Q3D Extractor寄生抽出解析、ANSYS RaptorX電磁場ソルバーが統合しており、さらに、Ansys EMC Plus(旧Ansys EMA3D Cable)は、完全な電磁両立性(EMC)ワークフローを提供する。2023 R2では数々の新機能が統合されており、複雑化する製品要件の中で、ハイテク分野の課題に効率的に対応できるようになる。

ヘルスケア、自動車、航空宇宙などの産業分野でも、2023 R2のデジタルエンジニアリング・ワークフローのメリットを享受できる。シグナルインテグリティ、パワーインテグリティ、EMI解析のためのAnsys SIwave-CPA、寄生抽出ツールのAnsys Q3D Extractorにより、EVパワーエレクトロニクスの電熱ワークフローがパワーICからパッケージ、ボードまでのソリューションを提供する。また、ANSYS MotionとANSYS Soundが統合したワークフローにより、EV設計者はシミュレーションを使用してサウンドソノグラムを可視化し、メーカーが定義する音響のモデリングを行うことができる。

Ansys medini analyze 2023 R2の新しいデジタルセーフティコラボレーションプラットフォームは、航空宇宙、防衛、自動車業界のエンジニアにとって有用であり、組織全体の安全プロジェクトの中心的なハブとして機能する。既存のデスクトップクライアントに代わる新しいAnsys Digital Safety Manager Webアプリケーションにより、安全性とサイバーセキュリティプロジェクトの計画、監視、検証が一元化される。

ZF Friedrichshafen社のセーフティアセッサであるGunter Gabelein氏は次のように述べている。「乗用車、商用車、産業技術のシステムサプライヤーであるZF Friedrichshafen社は、アジリティとイノベーションを重視しています。自律走行や電動モビリティのようなエキサイティングな開発をサポートするためには、迅速で費用対効果が高く、技術的に正確な研究開発プロセスを持たなければなりません。当社では、多くのプロジェクトにmedini analyzeが提供するシナジーを活用しています。中規模プロジェクトでは、ワンツールソリューションとサードパーティツールとのインターフェイスにより、300時間以上の労力を削減できています。ZFはモデルベースエンジニアリングを強力に支持しており、medini analyzeは組み込みシステムの解析の複雑さを軽減するのに役立っています」

大規模コンピューティングによる高速シミュレーション

Ansys 2023 R2は、大規模ジョブの実行を可能にし、オンプレミスおよびクラウドの両方で、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)によるハードウェア容量の制限の克服を支援する。また、ソルバーアルゴリズムが強化され、GPUを活用してシミュレーションを高速化する。Ansys 2023 R2では、Fluids製品ラインによってGPU上でネイティブに実行できる産業用シミュレーションが追加され、解析時間と総消費電力が大幅に削減された。例えば、2023 R2では、スライディングメッシュ、圧縮性流体、渦散逸モデルの燃焼シミュレーションに対するマルチGPUサポートが拡張されており、内燃エンジン、遠心ポンプとファン、ターボチャージャーとコンプレッサー、攪拌タンクとリアクター、油圧機械の解析がANSYS FluentマルチGPUソルバーで超高速化できるようになった。

シミュレーション駆動型3D設計ツールのAnsys Discoveryは、ライブ構造物理により予測精度がさらに向上し、薄肉構造のGPUメモリ要件が最大10分の1となった。Discoveryのサブディビジョン・ジオメトリ・モデリングは、複雑な部品の作成と編集に新しい方法を提供し、トポロジー最適化の結果を含め、多くの一般的なCADモデルの「what-if」分析による変更の結果をほぼ瞬時に確認できる。Discoveryが2019年時点で提供していた機能は乱流モデル、電磁気学、製造制約など四つのみであったが、2023 R2では50の機能を提供するまでになった。

光学設計ソフトウェアであるAnsys SpeosもGPUアクセラレーションを活用して、レイトレーシングを使用する光学シミュレーションに完全に対応するようになった。Speosは、GPUアクセラレーションによる3D放射照度もサポートしており、光の寄与をより適切に解析できる。光子レベルでは、シミュレーションツールであるANSYS Lumericalの有限差分時間領域(FDTD)ソルバーに新しいExpressモードが搭載され、NVIDIA GPUでシミュレーションを実行できるようになった。

今回の最新リリースでは、ANSYSの高度なシミュレーション数値計算と、GPUとクラウドコンピューティングによるHPCで強化されたシミュレーションとが統合され、あらゆる業界のエンジニアや研究者がデジタルエンジニアリングの変革力を活用できるようになっている。

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