Autodesk社が「AutoCAD 2025」を発表

2024年 4月 8日

Autodesk社 2024年3月26日

Autodesk社は2024年3月26日、同社製汎用CADソフトウェアAutoCADシリーズの最新版「AutoCAD 2025」を発表した。AutoCAD 2025には、AIを活用した機能ならびに最新の作図機能が備わっている。

今回発表されたAutoCAD 2025について、AutoCADバイスプレジデントであるMarcus O’Brien氏は「Autodesk社は、市場で最もパフォーマンスに優れたCADツールの開発に全力を注いでいます。AutoCAD 2025では、2Dファイルを開く速度が2024バージョンの最大2倍になっています」と述べている。

建築、エンジニアリング、建設会社にとって、AutoCAD 2025は、Autodesk製品全体とのより深い連携を実現するものとなっている。これについて、AutoCADプロダクトマネジメントディレクターであるDania El Hassan氏は次のように述べる。「AutoCADユーザーは、Autodesk Docsを使用して、クラウド上でコネクテッドエクスペリエンスを利用できるようになります。マークアップインポートを使用すれば、DocsでPDFファイルを共有してフィードバックを受けられ、そのマークアップをAutoCADで即座に確認できるため、地理的に分散したチーム間で設計のイテレーションを迅速に行えるようになります」。

AutoCAD 2025には、Autodesk AIを活用して洞察の取得や自動化を行う機能があり、2Dおよび3Dの設計エクスペリエンスも強化されている。これについて、El Hassan氏は次のように述べている。「CAD業界向けの強力なAIによって、お客様の作業を加速できることを誇りに思います。AutoCADは、最も使用されるワークフローをターゲットにすることで、お客様が創造的な仕事に集中できるようにし、より良い成果をもたらし、AI時代のCAD業界をリードしていきます」。

AutoCAD 2025の新機能は以下のとおりである。

スマートブロック

AutoCAD 2024では、スマートブロックが配置と置換機能で初めて導入されたが、AutoCADはこのスマートブロックにAutodesk AIを活用して、2D作図のコアエクスペリエンスを向上させている。AutoCAD 2025では、コンテンツの再利用と図面全体の標準化を通じて設計効率を向上させる二つの新機能が導入された。

「AutoCAD 2025でリリースした新しいスマートブロック機能は、イノベーションとお客様への価値の提供に対する我々のコミットメントを象徴しています」とEl Hassan氏は語る。

AutoCAD 2025で導入された新たなスマートブロック機能の一つが、ジオメトリを素早くブロックに整理する「検索・変換」である。ジオメトリを選択して図面を検索し、キャンバス上で見つかった一致するオブジェクトを全てハイライトし、Autodesk AIを活用してブロックのインスタンスに変換するオプションを提供する。

「検索・変換機能により、AutoCADのワークフローがより効率的になります。ブロックは見当たらなくなったり、扱いが大変だったりすることがありますが、この機能によって効率性に優れたアプローチが可能になり、図面内の要素から新しいブロックを素早く作成できるため時間が短縮できます」。

-設計アソシエイト Joe VanderPluym氏

もう一つの新しいスマートブロック機能が「オブジェクト検出テクニカルプレビュー(Object Detection Tech Preview)」である。この機能を使えば、図面をスキャンしてブロックに変換するオブジェクトを探せる。このツールは、ブロックを使用せずに作図された図面や、AutoCAD以外のアプリケーションで作成された図面、またはPDFなどのほかのファイル形式からインポートされた図面をクリーンアップする時間を短縮するために設計された。

AutoCADデータ・AI担当シニアプロダクトマネージャーのBritta Ritter Armour氏は、この機能について次のように述べている。「オブジェクト検出をAutoCAD 2025のテクニカルプレビューとしてリリースできることを嬉しく思います。これは新しいタイプの機能で、ユーザーにアップデートを要求することなく、年間を通して機能を強化することができます」。

この機能はまだ開発中のテクニカルプレビューであり、ブロックとして提案するオブジェクトを認識・区別する機能などは今後も改善され、進化し続ける。なお、リリース時点では、この機能の対象となっているのは平面図のみであるため、平面図上の建築要素を検出するのに適している。最新情報については、AutoCAD 2025ヘルプページを参照されたい。

オートデスクアシスタント

AutoCADおよびAutoCAD LT 2024.1アップデートで初めて導入されたオートデスクアシスタントは、パレットを使用してヘルプリソースに素早くアクセスできる機能だが、AutoCAD 2025では、このオートデスクアシスタントがAutodesk AIで強化され、生成的な応答を提供する会話型インターフェイスとなった。

「これまでは、ほかのツールを使って情報を求めていましたが、特定の問題に対応する内容を見つけるには多くの情報を指定する必要がありました。オートデスクアシスタントは、正しいコマンドを直接返信してくれます。これこそ、まさに私がAIアシスタントに求めていたことです」。

-造船シニアデザイナー Markus Karlsson氏

ワークスペースを離れることなく、AutoCADの機能に関する質問や、設計上の課題のトラブルシューティングを行うことができる。さらに詳しいヘルプが必要な場合は、同じインターフェイスを使用してオートデスクのカスタマーサポートエージェントに連絡できるため、チームメンバーとコミュニケーションをとりながら作業を続けることができる。

AutoCAD 2025でAutodesk AI搭載のオートデスクアシスタントを利用できる言語は英語のみとなっている。

Autodesk Docsでのプロジェクトの強化

AutoCAD 2025では、AEC Collectionで利用可能なクラウドベースの共通データ環境であるAutodesk Docsを使用して設計プロジェクトを管理する顧客向けの機能強化も行われている。マークアップインポートにより、Autodesk DocsでマークアップされたPDFファイルをAutoCADに接続し、Docsで利用可能なマークアップツール一式を使用して共同作業者が行った変更を継続的に同期できるようになった。

また、AutoCAD 2025では、アクティビティインサイトが強化され、詳細なイベントプロパティ、DWGバージョンによるフィルタリング機能、従来のDWG履歴ツールの機能を統合したファイル比較機能が追加された。Autodesk Docsで管理されている図面ではバージョン管理がサポートされるようになり、アクティビティインサイトを表示するための追加設定や構成が不要になった。図面を開かなくても、アクティビティインサイトパレットを使用するか、AutoCADスタートタブから35種類以上のアクティビティの追跡を開始して直接表示できる。

また、AutoCADの特殊ツールセットにAutodesk Docs機能が追加された。AutoCAD Plant 3D 2025では、サブフォルダー内のプロジェクトで共同作業ができるようになり、溶接記号をAutodesk Docs ViewerとNavisworksの両方で表示できるようになった。また、AutoCAD Architecture 2025とAutoCAD MEP 2025の両ツールセットでは、Autodesk Docsでホストされているプロジェクトで作業する際に、複数のユーザーやマシン間でのDWGファイルの自動同期がサポートされるようになった。接続する場所を問わず、二人以上のユーザーが同時にファイル上で共同作業を行う必要があるチームの生産性が向上する。

コアパフォーマンスと作図

AutoCAD 2025およびAutoCAD LT 2025では、コマンドを開始した後にハッチの境界を描画するオプションが追加された。

これに加え、指定した幅を使用してパスに沿ってハッチングのテクスチャを作成できるようになり、ハッチングを使用してハイライトを作成し、図面の可読性を向上させる機能がさらに拡張・合理化された。

ArcGISベースマップ

AutoCAD 2025ではEsriのArcGISベースマップが直接使用できるようになり、実世界の地理情報をプロジェクトに適用できるようになった。

高解像度の衛星写真や航空写真、OpenStreetMaps、Streets、ライトグレーとダークグレーのモノクロ地図スタイルなど、5種類のベースマップにアクセスできるため、建築家、エンジニア、建設専門家は、十分な情報に基づいた意思決定を行うための基盤を得られる。

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