Ansys社がマルチフィジックス解析ソフトウェア「Ansys 2024 R2」をリリース

2024年 7月29日

Ansys社 2024年7月23日

Ansys社は2024年7月23日、同社製シミュレーションソフトウェアの最新版となる「Ansys 2024 R2」をリリースした。Ansys 2024 R2は、シングルフィジックスシミュレーションの限界を超え、複雑な製品の性能を多角的に把握できるようにすることで製品設計の限界を再定義する。実行時間の短縮、能力の拡張、デジタルトランスフォーメーションの実現、ハードウェアの柔軟性に重点が置かれたR2の機能強化により、ANSYSのマルチフィジックスシミュレーションはこれまで以上に利用しやすく、パワフルなものになっている。

Ansys社の製品担当上級バイスプレジデントであるShane Emswiler氏は、今回の最新版について次のように述べている。「ANSYS 2024 R2は、当社のポートフォリオをこれまで以上に深く、幅広く、スマートで、接続性の高いものにするものです。システムシミュレーションからデジタルツインまで、あらゆるフィジックスと領域をカバーするソフトウェアであるANSYSは、お客様から信頼を寄せていただいています。ANSYSの広範なシミュレーションインサイトとANSYSカスタマーエクセレンスサポートチームの専門知識により、お客様が真に変革的なイノベーションを実現されることを期待しています」。

R2では、ANSYSの全ポートフォリオのコネクテッドワークフローが強化されており、これによってさまざまな業界の顧客が生産性とコラボレーションの向上が実現できるとみられる。

Malvern Panalytical社のシミュレーション技術スペシャリストであるJon Powell氏は、次のように述べている。「当社はANSYSエンタープライズツールのユーザーであり、設計ツールであるANSYS Discoveryのようなソリューションが提供する予測精度、スピード、柔軟性に信頼を置いています。あるエンジニアリング部門で開始したワークフローと同じものを、忠実度を損ねることなく別の部門に引き継ぐことができます」。

複雑な問題への対処に必要な包括的なソリューション

Ansys 2024 R2は、マルチフィジックスワークフローを合理化し、複数の異なるソフトウェア技術をドメイン間で接続するプロセスを簡素化する。今回の最新版では、最も複雑なチップから電気自動車のパワートレインまで、コストと性能の包括的な評価が製品のライフサイクルを通じて容易になった。

次世代IC設計のための高度なパッケージング技術により性能は大幅に向上するが、設計は複雑になる。新しいANSYS HFSS-ICソルバーは、複雑化する現在の先端チップ設計に対応するもので、Ansysの最先端のエレクトロニクス技術と半導体技術が統合された新しいHFSS-ICソルバーは、ICサインオフのための深い電磁界解析とパワー解析・シグナルインテグリティ解析に優れており、イテレーションで次世代エレクトロニクスデバイスが要求する性能を確実に実現する。

複雑化するマルチフィジックス設計の課題は、自動車を含むほぼすべての業界に広がっている。企業が電気自動車(EV)技術の成熟を目指す中、EVモーターのノイズ、振動、ハーシュネス(NVH)を最適化することは、車両の性能と安全性にとって極めて重要である。e-powertrainワークフロー用の構造シミュレーションソフトウェア「Ansys Mechanical」は機能が強化され、正確な試験相関、音響シミュレーション、速度向上を実現し、NVH解析の全体的な生産性が向上する。

また、今回の最新版では、光学システム設計ソフトウェア「Ansys Zemax」と光学性能解析ソルバー「Ansys Speos」の間におけるシームレスなデータ転送が可能になり、複雑なフィールドや波長を持つ大規模システムなどの光学設計の評価と最適化をより効率的に行えるようになった。例えば、光学系の迷光解析が効率化化され、光学系におけるレンズフレア、光漏れ、散乱による不要な影響を排除できるようになった。

ANSYS AIにより、チップからミッション、配備まで多分野のソリューションが強化

Ansys社は、ANSYS TwinAIソフトウェアを自社のポートフォリオに追加し、AIの新たなユースケースを提供し続けている。TwinAIソフトウェアは、最先端のAI技術を駆使した実データからのインサイトと、マルチドメインモデルの精度をシームレスに結びつける。Ansys 2024 R2では、クラウドやエッジへの拡張展開を可能にする改良も行われており、実世界のデータからさらなる洞察を引き出すことができる。

Tata Steel Nederland社のR&D部門ナレッジグループリーダーであるPaul van Beurden氏は、「進歩は革新によって推進されますが、当社では、持続可能性に向けた変革の旅を切り開こうとしています。Ansys TwinAIソフトウェアのパワーを活用することで生産プロセスを最適化し、エネルギー損失を最小限に抑え、2030年までに30~40%の脱炭素化を達成、2045年までにカーボンニュートラルの実現という目標に向かって邁進する中、Ansys社の技術は、その実現に役立っています」と語る。

Ansys Missions AI +ツールは、ANSYS Digital Mission Engineering(DME)製品の強化に焦点を当てたアルゴリズムを提供する新技術であり、専門家レベルの解析と飛行ルーチンの安全性向上を提供するために、調整されたモデルを使用して軌道ソリューションの品質を自動的に評価することができる。ANSYS DMEソリューションにAIを組み込むことで、さまざまなシミュレーションの専門知識を持つユーザーがこの技術に簡単にアクセスし、導入できるようになる。

また、ANSYS AIの統合により、ナノメートルスケールの半導体アプリケーションの設計効率も向上している。電磁界モデリングソフトウェア「Ansys RaptorX」には、AIによるICフロアプラン最適化ソリューションが追加され、アナログICおよびRF IC設計における電磁結合の問題を軽減するための理想的なレイアウトが特定できるようになった。RaptorXソルバーとAIを組み合わせることで、回路面積を削減し、設計期間を数週間から数日に短縮することができる。

ANSYSのハードウェアパートナーとオープンエコシステムにより、圧倒的なシミュレーション速度を実現

2024 R2では、CPU上での動作が最適化されたソルバー技術や、複数のベンダーが提供する最新のGPUハードウェア用に最適化されたソリューションが増加しており、高度にスケーラブルなハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の導入が容易になっている。これには、自律システムテスト用のAnsys AVxcelerate Sensorsソフトウェアも含まれており、長距離物体検出用のアダプティブグリッドサンプリングが追加された。シミュレーションでは、アダプティブグリッドサンプリングによって仮想走行シナリオ内の特定の物体に焦点を絞り、より的を絞ったデータを収集することができる。オーバーサンプリングとなる運転シナリオの全データを収集するグローバルサンプリングと比較した場合、AVxcelerate Sensorsの機能強化によって、物体検出と予測精度は同等かそれ以上を保ったまま、シミュレーション速度は3倍となり、GPUメモリ消費量は6.8倍削減される。

流体シミュレーション・ソフトウェアであるANSYS Fluentは、AMD GPUとの新しいハードウェア互換性を誇り、より幅広いハードウェアオプションをサポートする。物理モデリング機能が拡張され、音響、反応流、亜音速/遷音速の圧縮性流体を扱うユーザーはマルチGPUソルバーを活用して、飛躍的な高速シミュレーションを実行できるようになった。また、Ansys optiSLangプロセスの統合と設計最適化ソフトウェアとの組み合わせにより、パラメトリック最適化が組み込まれ、設計オプションのさらなる検討が可能になっている。

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