DigitalEngineering247.comが2025年のテクノロジー展望を発表

2025年 1月 6日

Peerless Media社 2024年12月20日

Peerless Media社の技術系ニュースサイト「DigitalEngineering247.com」が、設計およびエンジニアリング分野の読者を対象に毎年行っているアンケートを2024年末も実施し、設計やシミュレーションに関する技術の利用状況について質問を行った。

シミュレーションならびに設計ソフトウェア分野や3Dプリント業界における数々の合併・買収、人工知能(AI)搭載のシミュレーションツールの登場、設計やシミュレーション、CAMなどの分野におけるGPUアクセラレーションの採用拡大、複雑化するモデリングやシミュレーション向けのクラウドならびにHPC(High Performance Computing:ハイパフォーマンス・コンピューティング)ソリューションの採用増加など、エンジニア向けのテクノロジー環境は進化を続けている。

昨年のこの時期、AIと機械学習(ML)はシミュレーションの有力なツールとして登場したばかりだった。この12カ月間で、Siemens、Altair、Autodesk、Ansys、Monolithなどの大手企業がAIベースのモデリングツールやシミュレーションツール、AIアシスタントを発表し、さらにチップ業界の重鎮であるNVIDIAが設計者に関連するAIベースのソリューションを発表した。

今回の調査では、200名以上の読者から回答が寄せられた。回答者の主な職業は、製品またはシステムの設計エンジニアリングと答えた人が最も多く(32%)、次いでエンジニアリング管理(13%)、研究開発(12%)、企業管理(9%)と続いた。回答者はさまざまな業種に分散しており、大半は航空宇宙/航空/防衛、産業機械/製品、電子製品/機器、自動車に従事していた。

エンジニアリングの課題

回答者は、2年連続で採用と人材確保を最大の課題として挙げ、この問題について84%が「非常に重要」または「ある程度重要」と回答した(昨年の89%から減少)。スタッフに対する適切なトレーニングの欠如とコラボレーションがそれぞれ87%で同率2位となり、次いで製品開発の納期の短さが3位の84%だった。2023年における3番目の課題は「非効率的なワークフロー」であった。

また、設計における持続可能性の重要性についても質問をしたところ、持続可能性が「非常に重要」だと答えた回答者は、2023年の31%から2024年には25%に減少し、「ある程度重要」だと答えた回答者は50%から53%に増加した。「まったく重要でない」と答えた回答者は、昨年の19%から今回の調査では22%に上昇した。

また、エンジニアリングテクノロジー企業の間では、持続可能性(サステナビリティ)の問題への注目度が低下しているが、興味深いことに、その詳細を尋ねたところ、持続可能性を重要視している回答者からも、そうでない回答者からも持続可能性について否定的なコメントはほとんど出ず、かなり肯定的な意見が今年は多かった。以下にその例を挙げる。

- 持続可能性はもはや単なる流行語ではなく、当社のような企業にとっては必須のものだと確信しています。ハイテク産業、特に半導体は地球に大きな影響を与えています。使用する材料からチップの製造方法まで、私たちは真の変化をもたらすことができます。より環境に優しい製品を設計することで、地球を助けるだけでなく、当社に対する世間の目も向上し、競争力を維持できるようになります。それは正しいことであり、良いビジネスでもあるのです。
- 環境サステナビリティは、当社の設計・エンジニアリング活動の基本的な考慮事項です。環境に優しい素材、エネルギー効率の高いプロセス、廃棄物や資源の消費を最小限に抑える設計を優先しています。サステナビリティを業務に取り入れることで、規制要件を満たすだけでなく、消費者の期待に応え、より持続可能な未来に貢献できるようになります。
- 当社は欧州(フランス)企業ですが、ヨーロッパの人たちは環境の安定性を非常に重要視しており、取引する前に、その会社の製品が耐用年数を通じて、また最終的に環境にどのような影響を与えるかを知りたがります。

AIが足跡を拡大

今後5年間で製品開発に最も大きな影響を与えると考えられる技術について尋ねたところ、AIが64%(昨年の65%から若干減少)で昨年に続き1位となった。2位はシミュレーションで43%(38%から上昇)、3位はHPC/クラウドコンピューティング(36%、昨年の31%から上昇)、4位は積層造形(34%)、5位はジェネレーティブデザイン(31%、昨年の29%から上昇)、6位は先端材料(28%)だった。

エンジニアリングにおけるAIの価値と有用性に関する読者のコメントは、次のように楽観的な発言から懐疑的なものまでさまざまであった。

- AIと機械学習は、製品設計と開発を大幅に強化できる革新的な技術です。より効率的なデータ分析が可能になり、反復作業が自動化され、より良い意思決定に役立つ洞察が入手できます。このような技術を活用することで、よりパーソナライズされた製品を生み出し、パフォーマンスを最適化し、市場投入までの時間を短縮することができます。
- 理想としては、未知数であるがゆえに通常よりリスクが高いプロジェクトにAIを活用することが想定されます。AIは、不確実性を減らし、リスクが高いものに対する安心度を高め、コストとリードタイムが最適化するようにプロジェクトをナビゲートできる可能性があります。その結果、受注量は増加し、売上総利益も増加すると思われます。
- 私の組織では、半導体のエンジニアリングサンプルを設計していますが、私自身は、AIと機械学習は、半導体設計のための超スマートな実験助手を持つようなものだと常々考えています。AIや機械学習は、膨大なデータを分析し、私たちが見逃してしまいそうなパターンを見つけ出し、回路のレイアウトから材料の選択まで、あらゆるものを最適化する手助けをしてくれます。例えば、AIはさまざまな条件下でどの材料が最高の性能を発揮するかを予測してくれるため、時間とリソースを節約できます。さらに機械学習は、より効率的で強力な新しい半導体アーキテクチャの設計にも役立ちます。それはまるで、開発プロセスにおける秘密兵器を手に入れたようなものです。
- 機械学習は重要になるでしょうが、現在は過大評価されています。人々は、自分たちにはできないことができるようになると期待しているのです。
- 私たちはこの技術を20年間使ってきました。AIは不可能を可能にし、当社の製品においてますます重要な役割を果たすでしょう。
- 私は、AIと機械学習が多くの産業での生産に決定的な変化をもたらすと確信しており、製品の設計に与える影響は驚異的なものになると感じています。私の唯一の希望は、AIや機械学習が進化するにつれて、規制やセキュリティ面に焦点が当てられるようになることです。それが実現すれば、より速く、そしてより安全な進化を目の当たりにできるでしょう。
- AIはエンジニアリングに利益をもたらす可能性を秘めています。しかし、私はAIが過度に使用され、批判的思考に悪影響を及ぼすのではないかと心配しています。全てのツールが有用なものとはかぎりません。
- AIが工業製品の設計にもたらす影響は甚大です。機械学習は製造・加工に大きな変化をもたらす可能性があります。
- AIや機械学習には細心の注意が必要です。AIや機械学習は、それをプログラミングする人間ほど賢いものではありません。

シミュレーションがトップを独走

今回のアンケートでも、現在使用している技術や製品開発中の技術、また今後2年間に採用が予想される技術について質問した。読者が現在使用している技術としては、昨年に続いてシミュレーションソフトウェアがトップとなり、56%が使用していると回答した(昨年の50%から上昇)。積層造形/3Dプリントは42%で昨年同様2位となった。

これに次いで、製品ライフサイクル管理(PLM、41%)、先端材料とHPC/クラウド(同率32%)、AI/機械学習(昨年の22%から29%増)が続いた。HPC/クラウドは、2023年に現在使用していると答えた回答者が22%から今年は32%に急増した。

今後2年間で、回答者の38%がAIや機械学習を設計や開発プロセスに取り入れる予定であり(昨年は35%)、予測分析、デジタルツイン、ジェネレーティブデザインを取り入れる予定の回答者はいずれも25%前後であった。仮想現実/拡張現実の現在の利用率はわずか9%だが、23%が2年以内の導入を計画している。

積層造形が部品生産で地歩を固める

主にプロトタイピングに重点を置く積層造形ユーザーは、昨年の86%から今年は82%と再び減少した(2022年は89%)。一方、テスト用途は昨年の55%から今年は68%へと大幅に増加し、最終用途部品のプリントは現行ユーザーの44%から48%に上昇した。

積層造形の費用対効果面での要素において、今年トップに躍り出たのが「製品品質の向上」である。これに対して、「新しいデザインの発見」は昨年の72%から今年は59%に減少し、「製品開発スケジュールの短縮」ならびに「製品開発コストの削減」と同率2位となった。積層造形のそのほかの重要な目的としては、技術革新の促進、エンジニアリングの生産性、製造コストの削減などが挙げられた。

積層造形ソリューションの利点に対する満足度については、ユーザーの54%が製品開発スケジュールを短縮できる技術に非常に満足しており、その理由としては、45%がほかの技術では実現不可能な設計を作成できる点を挙げている。また、回答者の39%が部品の複雑さの軽減を理由として挙げており、開発コストの削減(36%)がそれに続いた。

回答者らはまた、積層造形の可能性についての考えや、現在どのように技術を利用しているかについての事例について次のように述べている。

- 積層造形はAIとともに次の大きなフロンティアです。当社ではまだあまり利用していませんが、時間が経てば、私の職場でも当たり前のように使われるようになると思います。
- 積層造形と3Dプリントは、より自由な設計と迅速なプロトタイピングを可能にすることで、製品設計と開発に革命をもたらす可能性を秘めています。これらの技術は、従来の製造方法では実現できなかった複雑な形状の作成を可能にし、より革新的なソリューションにつながります。さらに、設計を迅速に反復し、少量のカスタムパーツを製造する能力によってリードタイムとコストを大幅に削減できるため、市場の需要への対応が容易になります。
- 想像力と予算の制限を受けているけれども素晴らしいものです。しかし、少なくとも私の同僚の間では、まだそれほど受け入れられてはいません。
- 技術は年々進歩しています。10~15年前には、FDM方式プリントを生産部品に使うなど想像もできなかったでしょうが、今では実行可能な選択肢があります。積層造形を活用していない多くの企業は、自分が何を見逃しているのか分かっていないのだろうと思います。この技術に投資することで、継続的な改善と斬新なアイデアが生まれ、リードタイムの短縮、コストの改善、廃棄物の削減、そして時には適切なユーザーによる市場参入が可能になります。
- 実際の部品性能を検証するための手段を提供し、シミュレーションでは必ずしも正確には予測できない部品の挙動に関する洞察を与えてくれるものだと思います。
- 荷重を支える部材に積層造形を利用するのは、まだ懸念があります。複雑な合金の材料均質性や機械的特性が保証されるかどうかは、まだ分かりません。

ジェネレーティブデザイン、デジタルツインは未だ水面下に

ジェネレーティブデザインの導入はまだ遅れており、この技術を使用していると回答したのはわずか16%であった(昨年の14%から微増)。26%が今後2年間に導入する予定としており、これも昨年の22%から増加している。回答者は、ジェネレーティブデザイン導入の目的について、開発スケジュールの短縮(61%)、ほかの方法では実現不可能な設計の製造(43%)、開発コストの削減(42%)を挙げている。

現在のユーザーは、ジェネレーティブデザインが新しいデザインを発見するのに役立つことに最も満足していると回答しており(47%が非常に満足している)、次いでイノベーションの促進(50%)、軽量化(41%)が挙げられている。

ジェネレーティブデザインのソリューションは、AIシステムの影に隠れているが、はるかに成熟している。回答者は、このテクノロジーについて次のように複雑な思いを抱いている。

- シミュレーション理論に基づいているため、設計の方向性を示すことはできるが、実世界でのテストにはまだ不十分です。
- ジェネレーティブデザイン・ソフトウェアは、定義されたパラメータと制約条件に基づいて多数の設計案を検討でき、製品設計の常識を変えるものです。手作業では考えられなかったような革新的な解決策を生み出す能力により、開発プロセスの創造性と効率を大幅に向上させます。このテクノロジーは、設計段階を高速化するだけでなく、性能と持続可能性を最適化し、最終的に高品質な製品へと導きます。
- 初期投資が高くつきます。うまく使うためには、エンジニアリング面での高度な監督と環境条件の知識が必要です。適切なケースでは、部品コスト、時間、安全性の点で実行可能です。但し、適切な訓練を受けたエンジニアが同様の問題を評価するのと比べるとインパクトは少ないでしょう。
- 今のところ、あまり感心することはありません。見栄えの良いジオメトリだけです。ジェネレーティブデザインは、その分野で欠けているものか、部品の性能とコストにとって最適でない可能性のある特定のプロセスに制限されます。製造のための設計、製造と組立のための設計をあきらめるわけにはいきません。
- 明確に定義された、制約の多い問題領域では、有用性が限定的です。既存製品の最適化には非常に優れていますが、成功させるには手取り足取り指導が必要となります。

デジタルツインも同様に導入が非常に遅れており、デジタルツインがどのようなものであるかを実際に知っていると答えた回答者は58%となっている(昨年の54%からは上昇)。現在デジタルツインを使用していると回答したのはわずか17%(14%から増加)で、今後2年以内にデジタルツインを導入する予定があると回答したのは25%(18%から増加)だった。PLM/製品データ管理またはデジタルスレッドソリューションを現在使用しているか、または今後導入する予定があるかという質問に対しては、40%が「はい」と回答した。

シミュレーション革命は続く

設計エンジニアリングに革命をもたらす可能性が最も高いテクノロジーについては、回答者の58%(前年は54%)がシミュレーション主導の設計だと答えている。AIは55%で2位、次いで積層造形(49%)、HPC/クラウドとジェネレーティブデザインがそれぞれ40%と39%でほぼ同率となった。

さまざまなテクノロジーへの精通度について質問したところ、シミュレーションが再びトップとなり、回答者の83%が「非常に詳しい」または「ある程度詳しい」と回答した。積層造形(78%)、PLM(77%)、HPC/クラウドコンピューティング(69%)がこれに続いている。

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