Ansys社がマルチフィジックス解析ソフトウェア「Ansys 2025 R1」をリリース

2025年 2月10日

Ansys社 2025年2月5日

Ansys社は2025年2月4日、同社製シミュレーションソフトウェアの最新版となる「Ansys 2025 R1」をリリースした。Ansys 2025 R1は、既存のインフラストラクチャと容易に統合できる洗練されたデジタルエンジニアリングを実現するテクノロジーを備えており、混乱を最小限に抑え、より革新的な製品に向けたチームのコラボレーションを支援する。AI、クラウドコンピューティング、GPU、HPCのパワーを活用したAnsys R1の機能強化により、さらに迅速で協調的な意思決定、幅広い設計検討、製品設計期間の短縮が可能になる。

Ansys社の製品担当シニア・バイス・プレジデントであるShane Emswiler氏は次のように述べている。「Ansys 2025 R1はこれまで以上に統合機能を強化しており、開発前後のデータ管理を専門的に支援するためのツールやソリューションにより、製品のライフサイクル全体を通じてデジタルパスを作成できるようにします。今回のリリースによって当社のソリューションが道しるべとなり、バラバラだったチームが単一のアクセス可能な真実の情報源から進路を維持し、共同作業を行えるようになります。これにより、コストが大幅に削減されるだけでなく、市場投入までの時間も短縮され、お客様が競争力を維持できるようになります」。

製品の統合化と複雑化が進むにつれ、研究開発プロセスは、成長と変化し続ける市場の需要に適応する必要があるが、Ansys社はお客様のデジタルトランスフォーメーションに対応し、進化する市場ニーズに応えるツールとソリューションを提供する。

先進の物理ソルバー

製品の性能を確保することは、コンポーネントからシステムに至るまで、関連するマルチフィジックスを理解することから始まる。Ansys社の最新リリースでは、高速で忠実度の高い物理ベースの結果を提供し、設計サイクルの早い段階で十分な情報に基づいた意思決定を支援する新しい製品と機能に焦点が当てられている。

- Ansys Discovery 3Dシミュレーションソフトウェアは、スピードと使いやすさを維持しながら、電熱解析、直交導体、内部ファンの追加により、熱モデリングを大幅に拡張する。
- 構造解析スイートは、騒音、振動、ハーシュネス(NVH)のための完全統合ソリューションを備え、10倍高速な周波数応答関数(FRF)計算、振動音響マッピング、最適化されたメッシング、およびモード寄与解析を提供する。
- Ansys Electronicsは、他のAnsysソフトウェア製品に接続することで、3D集積回路に不可欠なメッシングの改善、ワークフローの自動化、シミュレーション性能の向上を実現する。
- 新しいPolymer FEM製品は、忠実度の高いモデルを使用して実世界の材料挙動を把握し、顧客の進化する材料シミュレーション要件に対応する。

Firefly Aerospace社のエンジニアリング担当バイスプレジデントであるBrigette Oakes氏は次のように語る。「Ansysのプラットフォームは、迅速な宇宙サービスをサポートするために急速な技術革新を行っているFirefly社に重要なメリットを提供します。CFDはAnsysが最も得意とする分野の一つで、Fluentはエンジン設計における燃焼ダイナミクスと複雑な熱相互作用をモデル化します。熱解析と構造解析の統合によりワークフローが簡素化され、ユーザーフレンドリーなインターフェイスと迅速なサポートチームにより、当社のようなペースの速い企業にとって重要なツールとなっています」。

クラウド、HPC、GPU

クラウドコンピューティング、HPC、GPUのパワーは、最新の製品の設計スピードを変えつつある。アクセシビリティ、相互運用性、スケーラビリティがこの進化の中心であり、デスクトップアプリケーションの限界を超えて、より革新的な製品を共同で設計する力を顧客に与える。Ansys R1では、GPUソルバーの進化が強調されており、さまざまなアプリケーションに次のようなウェブベースのオンデマンド機能が追加されている。

- Ansys FluentのマルチGPU流体シミュレーションソルバーは、自動車の外部空力など、メッシュセル数が非常に多いアプリケーションをサポートするようになった。これにより、設計者はシミュレーションの全体的な速度を損ねることなく、より多くのパラメータを追加して精度を向上させることができるようになる。
- Ansys CFD HPC Ultimateは、HPCライセンスを追加せずに、複数のCPUコアまたはGPUを使用してエンタープライズレベルのCFD機能を実現する新製品である。
- 高度な3D電磁界シミュレーションソフトウェアであるAnsys Lumerical FDTDの新しいGPUアクセラレーションシミュレーションでは、GPUメモリの使用量が50%削減し、メッシング時間がCPUに比べて20%短縮している。
- Ansys MechanicalのGPUアクセラレーションによる直接構造有限要素解析ソルバーは、代替ソリューションに比べて最大6倍高速化し、反復ソルバーはCPUのみのバージョンに比べて6倍高速化している。
- Discoveryで利用できるAnsys Cloud Burst Computeにより、設計者は10分で1,000の設計バリエーションを解析できるようになる。NVIDIA GPUを活用することで、Discoveryのパラメトリックスタディが100倍以上高速化される。
- Ansys Cloud Burst Compute機能は、Ansys Mechanical、Fluent、および高周波電磁界シミュレーションソフトウェアであるAnsys HFSSに、弾力的で柔軟なオンデマンドHPC能力を提供する。

人工知能

Ansys社は、AIを活用したテクノロジーでポートフォリオをさらに充実させ、CAE業界に比類ないスピード、イノベーション、アクセシビリティをもたらす。Ansys AIを使用することで、新規データまたは過去に生成したデータを使用して数分以内に設計を解析し、独自のAIモデルを迅速にトレーニングし、市場投入までの時間を短縮し、コストを削減することができる。

- Ansysは、SimAIモデリング用のデータ準備を効率化する直感的でインタラクティブなツールを開発した。
- SimAIでは、学習データを拡張して、大規模な設計の中で特定のコンポーネントの解析を行うなど、後処理でさらなる知見を得られるようになった。
- Ansys Electronics AI+はAI駆動技術を使用して、Ansys Maxwellアドバンスト電磁界ソルバー、Ansys Icepakエレクトロニクス冷却シミュレーションソフトウェア、およびHFSSのエレクトロニクスシミュレーションのリソースと実行時間を予測する。
- 高忠実度のワイヤレスチャネルモデリングソフトウェアAnsys RF Channel Modelerの高度な合成レーダーシミュレーションにより、デジタルミッションエンジニアリングコミュニティは、地上ベースのAIターゲット識別のための包括的なトレーニングおよび検証データセットを利用できるようになった。

Vertiv社のエンジニアリング担当バイスプレジデントであるSteve Blackwell氏は次のように述べている。「業界をリードするAnsysのシミュレーションソリューションは、将来に向けたソリューションを設計するVertiv社のビジネスモデルの推進に役立つことでしょう。当社の使命は、冷却技術や電力技術から、データセンター自体の設計にAIを導入することに至るまで、世界のデータセンターの概念と開発方法に革命を起こすことです。Ansysを導入することで、エネルギー効率と信頼性の高い未来志向の設計で、AIを活用したお客様のプロジェクトをサポートする最適なインフラを提供するための重要なマイルストーンをより迅速に達成することができます」。

コネクテッドエコシステム

最先端の研究開発では、ワークフローをシームレスかつ効率的に維持するために、モデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)のような設計手法や自動化を採用する必要がある。Ansysのソリューションは相互運用性と拡張性に優れているため、新しいテクノロジーを既存のインフラストラクチャに簡単に統合でき、製品設計の中断を回避できる。Ansys 2025 R1には、MBSE機能とデータ管理に重点を置いた機能強化が含まれており、デジタル移行が容易になっている。

- Ansys ModelCenter MBSEソフトウェアとSAMは、SysML v2のサポートが強化されており、製品要件にアクセスしやすくし、エンジニアリング組織全体でスケーラブルにする一方で、製品設計の最適化と、チーム間の緊密な連携による大幅な時間短縮を実現する。
- ModelCenterは、Capellaコネクタの強化や、直感的な検索、保存、修正が可能なAnsys SAMとのより深い統合など、MBSEとの接続性が向上し、互換性が高まっている。
- Ansys Minervaシミュレーションプロセスとデータ管理ソフトウェアのジェネリックコネクタの改良により、外部データをMinervaに取り込む方法を標準化し、アップロード前に競合を検証して解決できるようにすることで、導入にかかる時間とコストを削減できる。このコネクタは、新しい非同期ジョブ起動機能により、エンジニアの生産性を向上させるのにも役立つ。

ほかにも、R1には以下が含まれている。
- プロセス統合および設計最適化ソフトウェアであるAnsys optiSLangでは、インターフェイス、分散コンピューティング、高度なアルゴリズムが強化され、設計ワークフローに柔軟性とパフォーマンスが加わった。
- Ansys Granta Materials Intelligence (MI)製品コレクションのCAE、CAD、製品ライフサイクル管理ソフトウェアとの統合により、Grantaエンドユーザーインターフェイスと統合インターフェイス間で統一されたユーザーエクスペリエンスが実現した。
- Fluentのフォールトトレラントメッシングとウォータータイトメッシングワークフローのタスクベースのパフォーマンス改善により、メッシング速度が向上した。
- パワー電界効果トランジスタ(FET)およびパワーマネージメント集積回路(PMIC)の解析、シミュレーション、最適化のための新しいツールであるAnsys PowerXが導入された。

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