SimScale社がエンジニアリング分野におけるAIに関する調査結果を発表
2025年 6月30日
SimScale社 2025年6月25日
エンジニアリング分野のリーダーを対象とした新たなグローバル調査によると、AIによる設計やシミュレーションの生産性向上を期待する回答者が大多数を占める一方、現時点において顕著な成果を報告しているのはわずか3%に留まり、期待と現状の間にギャップが存在することが浮き彫りになった。
SimScale社がGlobal Surveyz社と共同で発表したレポート「The State of Engineering AI 2025」(2025年エンジニアリングAIの現状)は、米国と欧州における従業員1,000人以上の大企業のシニアエンジニアリングリーダー300名を対象に実施された調査に基づくもので、エンジニアリングにおけるAI導入の早期ベンチマークを提供し、文化面、プロセス面、技術面で解決が必要とされる課題を特定している。
本調査の主な調査結果を以下に述べる。
- AIへの期待に実行がまったく追いついていない
エンジニアリングリーダーの93%がAIによる生産性向上を期待しており、そのうち30%が非常に高い向上を見込んでいる。しかし、現時点でそのように高い成果を達成していると報告しているのはわずか3%に過ぎない。 - クラウドネイティブ型を採用する企業が先行
クラウドネイティブのシミュレーションツールを採用している組織は、成熟したAIプログラムの保有率が3倍高く、AIの拡大に不可欠なクリーンで中央集約化されたデータの保有率が6倍高いことが報告されている。また、今後12カ月以内にAI目標を達成する自信についても2倍高い結果となっている。 - データのサイロ化とレガシーツールが最大の障壁
55%がサイロ化されたデータを、42%がデスクトップのレガシーCAEツールを主要な障害として挙げており、多くの組織で基盤インフラのギャップが浮き彫りになっている。 - リーダーシップのミスマッチが進展の妨げに
最高技術責任者の42%が技術チームによるAI導入への抵抗を指摘しているが、エンジニアチームリーダー自身は29%しか抵抗を示しておらず、技術チームはリーダーシップが想定するよりもAI導入にオープンで準備が整い、意欲的であることが示唆されている。 - AIは効率化だけでなく成長のドライバーと見なされている
エンジニアリングリーダーは、AIが設計イノベーション(54%)、エンジニアリング生産性(51%)、市場投入までの時間短縮(47%)を促進すると期待している。期待される利益のリストにおいて、コスト削減は非常に下位に位置している。
「3%クラブ」:最も進歩的なチームが他と異なる点
エンジニアリングAIによる成果を達成していると報告した技術リーダーはわずか3%にすぎないが、この「3%クラブ」はAIのコンセプトを拡大するのではなく効果的な実装によって測定可能な成果を挙げている。これらの者は以下の4つの主要な特徴を共有している。
- 現代化されたエンジニアリングアーキテクチャ:孤立したデスクトップ時代のツールチェーンを廃止し、クラウドネイティブプラットフォームを採用している。エンジニアリングデータは中央集約化され、アクセス可能かつ構造化されており、オープンフォーマットとAPIを使用している。
- 統合されたエージェント型ワークフロー:AIエージェントを実際のワークフローに直接組み込み、設定、評価、最適化の各段階で埋め込まれた意思決定者として機能させている。これについては、単なる追加ツールではなく、ワークフローに統合されたエージェントとして活用している。
- プロトタイプからループへの迅速な移行:低リスクな環境でテストを実施するものの、現実世界のループ内での展開へ迅速に移行し、その価値を数週間で証明している。
- データとモデルをインフラとして扱う:シミュレーションからモデルまで、全てをログ記録しバージョン管理している。これにより、ツールやプロセス全体でAIの拡張性、信頼性、移植性が実現できている。
本調査について
「State of Engineering AI 2025」は、2025年6月にGlobal Surveyz社が独立して実施した調査を基に作成されたレポートである。この調査は、米国、英国、ドイツの工業機械、自動車、電子機器、ライフサイエンス、エネルギー、AECの6つの主要産業における300名のシニアエンジニアリングリーダーを対象に実施されたものである。