ENCY Software社が産業用ロボットプログラミングシステム「ENCY Hyper」をリリース

2025年 9月29日

ENCY Software社 2025年9月22日

ENCY Software社は2025年9月22日、産業用ロボットと補助装置のプログラミングおよびシミュレーションシステム「ENCY Hyper」をリリースした。このプラットフォームは、タブレットと産業用PC向けに設計されたワークフローに関するオフラインプログラミングとリアルタイム手法を統合する。ENCY Hyperは、EMO Hannover 2025で発表される予定となっている。

エンシーハイパーの機能等

  • プログラミングとシミュレーション:産業用ロボットと補助装置向けのハイブリッドシステム。タッチ操作に最適化されたワークフローで、オフラインプログラミングとリアルタイム操作を統合する。
  • 主要な機能:リアルタイムのロボット・センサーフィードバック、AI支援補助ツール、内蔵衝突回避機能、ロボットセルのデジタルツイン、単一インターフェース上での複数メーカーのロボットのキャリブレーション。
  • 柔軟な運用:ピックアンドプレイス、パレタイジング、包装、組立を単独で実行可能。また、ENCY Robotと連携し、フライス加工、溶接、スプレー塗装、研削などの作業にも対応。
  • インタラクティブ環境:ロボットとリアルタイム通信を行い、動作の即時実行・テスト・調整が可能。インテグレーターやエンジニアは設計から導入まで制御ロジックと動作を微調整できる。

ロボットプログラミングの現行課題

オンライン(ティーチングペンダント)のプログラミング

簡単な調整を迅速に行うことができ、コントローラ上でプログラミングを直接実行できるものの、複雑なパスだと制限がある。操作者のスキルと視覚的判断に依存し、セル全体のシミュレーションが不十分で、実際のセルでのテストが必要となるため、ダウンタイムが増加することがある。

オフライン(CAM+シミュレーション)

デジタルツインで精密なパス生成と検証が可能だが、現実の世界におけるわずかな変動(取付オフセット、グリッパーの摩耗、固定具の傾き)により不一致が発生することがある。セルに関する変更は、オフィスに戻ってプログラムを再生成し、ロボットに転送してテストを行う必要があり、調整ごとにこのプロセスが繰り返される。

ENCY Hyperが上記の課題を解決する方法

ENCY Hyperは、デジタルツインシミュレーションとリアルタイムのロボット通信をタッチ操作に最適化された単一環境で統合し、オンラインとオフライン両方の手法の利点を維持する一方で、それぞれの制限事項を軽減する。

オンライン(ティーチングペンダント)の制限への対応

  • ポイントごとのティーチングなしでスケール可能。ピックアップの対象と配置場所を定義するだけで、Hyperがピックアンドプレース、パレタイジング、包装、組立などのルーチン作業の動作を生成・実行する。
  • 動作前に可視化。オンライン編集の応答性を維持しつつ、ロボットセル全体のシミュレーションを実現。生産用ハードウェアでの「ブラインドテスト」を回避する。
  • 安全かつ迅速なデバッグ。コントローラにコマンドをストリーミング送信し、ロボットとセンサーのフィードバックをリアルタイムで確認しながらステップを実行。即時停止と安全な再開が可能。

オフライン(CAM+シミュレーション)の引き継ぎ問題を解消

  • オフィスとセル間を往復するループ作業を排除。ファイルのエクスポート・コピー・往復移動の代わりに、Hyperがプログラムをロボットに直接ストリーミング送信する。即時実行と現場での調整を実現。
  • デジタルツインと現実のギャップを解消。ポイント&確認方式のキャリブレーションを採用しているため、実際のピック/プレースポイントを数箇所示すだけで、Hyperがデジタルツインを更新し、残りを自動再計算する。
  • 衝突回避機能を内蔵。セルの調整中でもHyperが継続的に障害物を検知し、安全に編集ができるよう障害物回避パスを生成する。
  • 複数メーカーに対応する単一インターフェース。異なるベンダーのロボットのキャリブレーションやプログラミングが単一のUIで可能。プロセス変更なしでドライバー追加による対応範囲拡大を実現。
  • 簡易作業に最適な作業量。小規模な変更時には大掛かりなCAM再構築を省略し、リアルタイムのフィードバックで直接修正可能。

ENCY Hyperの適用範囲 ― 簡易作業から複雑な操作まで

ENCY Hyperのハイブリッドワークフローは、単純なセルから高度なツールパスまで適用可能で、デジタルツインの信頼性とセル上でのライブ実行を融合する。以下にその例の一部を挙げる。

簡易操作

ドリフト治具を用いた既存設備のパレタイジング(7軸のある6軸ロボット、パレタイズ/デパレタイズ)

プログラムをコントローラにストリーミングし、セルでレイヤーパターンを微調整。実際のピック/プレースポイント数点からオフセットを迅速に再校正。衝突チェックにより支柱やガード付近のクリアランス維持を支援。

キット組立と軽作業のネジ締め(協働6軸コボットによる組立/ネジ締め)

タブレット上でターゲットを微調整し、更新された動作をリアルタイムでストリーミング。I/Oフィードバックにより各ステップを確認でき、ポイントごとの再ティーチングが不要。

高度な操作(ENCY Robot使用時)

ENCY Robotでプログラミングされたすべての機能がENCY Hyperで実行可能。主な違いは調整が行われる場所で、オフィスに戻らずロボット本体で直接行える。オペレーターやエンジニアはENCY Hyper上で部品位置、進入、退出、バッチサイズ、トレイ/ボックスの仕分け先、ステップサイズ、パス回数をインタラクティブに変更できる。新規部品の場合はENCY RobotでCAMプロジェクトを更新するが、同一部品の日常的な生産変更にはENCY Hyperを使用する。

ロボットミリング(6軸ロボット、オプションの直線7軸、スピンドル)

プログラムはENCY Robotで生成され、現場のHyperで調整を行う(進入/退出編集、送り速度、局所調整)。

研削/研磨/バリ取り(6軸ロボット、研削/仕上げ工具)

ENCY Robotで工具パスを生成。Hyperではロボットの横でパス数、ステップサイズ、進入/退出動作をインタラクティブに調整する。

コーティング/塗装(6軸ロボット+回転テーブル)

パスの定義はENCY Robotを使用。Hyperではパス数や開始/停止タイミングなどのプロセスパラメータをセルで微調整する。

アーク溶接(6軸ロボット+2軸ポジショナー;GMAW/TIG)

定義とシミュレーションはENCY Robotで行い、セルではHyperで溶接パラメータ(ワイブステップ、パス長、戦略など)を調整可能。その際にCAMプロジェクトの再構築は不要。

ENCY Hyperは、オンラインとオフラインのワークフローを組み合わせることでコミッショニングを効率化し、柔軟な短納期生産や工程切り替えを支援し、ダウンタイム削減に貢献する。ENCY Hyperは、製造・ロボットエンジニア(設計から導入までの調整が可能)、現場オペレーター・技術者(ポイントティーチング不要のガイド付きセル内編集)、システムインテグレーター(FAT/SATサイクル短縮・現地訪問削減)、OEM/機械メーカー(複数ブランド対応ワークフローの統一・フィールド更新の簡素化)に利益をもたらす。

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