ENCY Software社がCAD/CAMソフトウェア「ENCY 2.0」をリリース
2025年10月15日
ENCY Software社 2025年10月7日
ENCY Software社は2025年10月6日、同社製CAD/CAMソフトウェア「ENCY」の最新バージョンとなる「ENCY 2.0」をリリースした。ENCY 2.0では、ENCY Xエコシステム全体に新機能と機能強化が導入されており、エンジニア、オペレーター、インテグレーターの実際の作業に基づくアップデートが組み込まれている。
ENCY 2.0の新機能
インターフェース
ENCY 2.0のインターフェースでは、チュートリアル、プロジェクトライブラリ、共同作業スペースへのアクセスを効率化するために再設計されたスタートページが導入された。ユーザーはホーム画面から直接プロジェクトをプレビューでき、共有コンテンツに即座にアクセスできるようになるとともに、クラウドベースのセッションに参加するための手順が減少した。
また、ライセンスとメンテナンス状態を表示するステータスバーが追加された。小規模な機能だが実用的で、ユーザーが常に情報を把握して予期せぬアクセス問題を回避するのに有用なものである。
もう一つの重要な変更点として、ライトモードのUIが追加された。長時間の作業にはダークモードが依然として人気だが、ユーザーの好みや作業環境の照明条件に応じて、明るいインターフェースに切り替えられる柔軟性が加わった。
プラットフォームの強化
ツールアセンブリ
新しいマシンキットエディタにより、ホルダー、アダプター、切削工具を組み合わせたミルターン機械用の完全な工具アセンブリを作成できるようになった。設定はプロジェクト構築中に完全にインタラクティブかつ編集可能な形で行うことができ、タレット変更が即時反映され、詳細な3Dビジュアライゼーションが可能になっている。
プロパゲーション
フィーチャー認識によるプロパゲーションにより、ジオメトリの選択が高速化された。これにより手動入力が減り、特に反復的なフィーチャーを持つ部品のジョブ定義が迅速化される。
新技術
内部加工
ENCY 2.0が内部面加工をネイティブサポートするようになった。回転仕上げ、モーフ、6Dコンタリング、5Dサーフェシングなどの加工を、回避策や手動編集なしに閉じた形状内部に適用できる。
5Dサーフェシングの強化
制御性と表面品質を向上させるために、テーパーバレルミルでの接触点のスムーズな遷移を実現するバレルツールサポート、工具の均一な接触と優れた仕上げを確保する曲線追従戦略の適応ステップ、2方向で材料余裕量を独立設定可能なラジアル/アキシャルストックなどの機能向上が実施された。
サーフェス延長
部品形状の延長がモデルモードで直接可能となり、境界付近の工具の挿入/引き抜きが簡素化され、仕上げ加工におけるパスの連続性が向上した。
送りと回転*
ENCY 2.0では、ワーク材質・工具材質・コーティング・加工タイプに応じて切削パラメータを適応させるスマート送り速度・回転速度表が導入された。
工具寿命と表面品質が向上するよう、コーナー部や交差穴の交点では送り速度が自動的に低下するようになっている。
切削量グラフ
切削量グラフが新たに追加され、1秒あたりの切削体積を可視化・最適化できるようになった。これにより部品品質が損なわれることなく効率的な加工が実現する。これらの機能は現場管理強化のため、ENCY Tunerにも統合されている。
ENCY Robot 2.0:ロボットプログラミングの新機能
ENCY 2.0では、オフラインロボットプログラミングの大幅なアップデートが行われた。新しい衝突回避アルゴリズムによって複雑なロボットセルに不可欠な高速かつ安定した経路計画が実現し、安全性が損なわれることなくプログラミング効率が向上した。
また、自動ロボット軸マップ*がアップデートされ、多軸運動管理が簡素化された。ガントリー上のロボット構成を含むロボット設定が自動定義可能となり、産業オートメーションやAPI駆動型統合シナリオにおいてENCY Robotの有効性がさらに高まった。
積層造形のアップデート
積層造形のアップデートにより、ENCYの積層造形ワークフローで切削加工ツールと同等の制御精度が実現した。
ENCY 2.0では、非平面スライサーが強化され、サーフェスモデル(IGES/STEP)のサポートが拡大された。これにより、さらに正確なスライシングと高速なツールパス生成が可能となった。ユーザーは開始点をカスタムで定義し、レイヤーごとにシフトさせ、法線、ベクトル、ガイドカーブを含む高度なツール方向戦略を適用して、積層品質を向上させることができるようになった。
新たな最小レイヤー時間の設定は、レイヤーごとの時間閾値を強制することで材料の安定した硬化を担保する。
フライス加工から採用したコーナー送り制御は、積層プロセス中の堆積や過熱を防止する。
インフィルについては、新しいパターン(線、グリッド、三角形)、調整可能な向き、カスタム法線などの向上が実施され、部品強度、外観、プリント挙動の制御性が向上している。
ENCY AIプロセスプランナー:プロジェクトデータ駆動型のCAM支援
ENCYでは、AIを流行ではなく実用ツールと位置付けている。新しいAIプロセスプランナーは3Dモデルとプロジェクトデータを分析し、加工工程を自動生成する。エンジニアに取って代わるのではなく、エンジニアを支援することを目的としたこのAI機能は、日常業務を高速化しつつ完全なユーザー制御を維持する。
すべての処理はローカルで実行されるため、完全なデータプライバシーと知的財産保護が担保される。フライス加工に加え、旋盤加工、積層造形、検査にも対応するAIプロセスプランナーは、実際のCAD/CAMワークフローにシームレスに統合されるインテリジェント自動化への第一歩である。
ENCY Tuner 2.0:インタプリタ設定の簡素化
ENCY Tuner 2.0では、明快さと使いやすさに焦点を当てて再設計されたインターフェースが導入された。最大の変更点は、インタプリタの設定にプログラミングスキルが不要になったことだ。新しいステップバイステップウィザードにより、ユーザーは直感的なグラフィカルインターフェースを通じてインタプリタの作成や修正を行える。
この変更により、Gコードシミュレーションのカスタマイズに対する参入障壁が大幅に低下し、柔軟性や精度が損なわれることなく、現場の専門家からサポートエンジニアまで、より多くのユーザーがツールを利用できるようになった。
ENCY API:カスタマイズ、自動化、統合
ENCY Open APIは開発者、販売代理店、上級ユーザー向けの強力なツールキットへと進化した。COM技術に基づき、C#、C++、Delphiをサポートし、GitHub上に完全なドキュメントとすぐに使えるサンプルが用意されている。
ユーザーは、カスタム操作の作成、CLDataの修正、インタプリタの設定、TeamenterのようなPLMプラットフォームをはじめとする外部システムとENCYの統合ができるようになった。SVGファイルのインポートからクラウド接続型フィード・速度データベース構築まで、APIはシステム制限を排除し、新たな自動化への道を拓く。
ユースケースライブラリの拡充、専任開発チームの存在、そしてロードマップ上のローカルAI統合により、ENCY APIは、ENCYを複雑な製造ワークフローに拡張・組み込むための中核ツールとなりつつある。
- * 注記:これらの機能は、今後のアップデートで展開される予定