設計作業の「気づき」をサポートするAI技術
課題解決策の一つとなるAIの活用
市場のグローバル化や競争の激化が進む製造業では、常にさまざまな要求対応や改善が求められています。しかし、実際には思うような改善が進められていないという現場も多いのではないでしょうか?
製品設計の分野では、これまでも3D CADをはじめ、さまざまなツールの導入が進められてきましたが、要求が高度化している現状では、これまでのようなツールやマンパワーに頼った対策では対応しきれなくなってきています。
そこでご提案したいのが「AI技術」の活用です。人間にしかできないとされていた作業の自律的な処理を可能にするAI技術は、設計現場における課題解決策の一つになります。
有効な改革が進められていない現状
対応できていない設計者の「気づき」「悩み」
業務をより効率的に行うための改革を進めるには、日々の作業の中で得られる「気づき」や設計者が抱える「悩み」が重要になります。製品の中で軽量化や強度の向上ができる「気づき」があれば、製品の品質を高めるチャンスになりますし、設計者の負担が大きい作業で「悩み」があれば、それを解決することで作業の効率化を図れます。
しかし、日々の業務に追われている環境ではそうした「気づき」を見逃していたり、工数上の問題で対応できなかったりするというケースがあるかと思います。
本来の業務に集中できない設計者
現場では3D CADをはじめ、さまざまなツールの進化や技術革新が進んでいますが、設計者の作業自体はあまり変化していません。設計要件を満たす設計を行うためにモデルを修正して解析による検証を行う、という変更~検証作業は全て手作業で行われています。
そして、有効な結果が得られるまで何度も変更~検証が繰り返されるため、多くの工数が掛かります。シミュレーションツールの活用により効果的な設計ができていますが、反復的な試行錯誤に人的なリソースが割かれるため、本来設計者が行うべき高度な業務に集中できない状態にあります。
「気づき」や「悩み」をAIで解決
多数の作業を抱えることで対応できていない「気づき」や「悩み」に対処する方法として、昨今注目されているのが「AI技術」です。
従来、人間が知能を用いて行っていた作業や問題解決をAIを活用することで自律的に処理できるようになります。これまで設計者自身が対応していた手間の掛かる手作業や反復作業、検討、検証などの作業を設計者に負担を掛けずに実施できるようになります。
AIを活用した機能 ジェネレーティブデザイン
製品設計におけるAI活用法の一つとして注目されているのが「ジェネレーティブデザイン」です。
ジェネレーティブデザインとは、生成型AIに分類されるこの機能は、AIやプログラムによるアルゴリズムなどを用いて自動的に形状やデザインを生成する手法になります。設計者自身が形状を考えて作成するのではなく、与えられた条件を基にAIが最適な設計案を自動生成します。
設計者は製品の設計要件として、保持領域や除外する領域を指定する他、構造解析のような荷重・拘束条件、「質量を最小化する」といった目標、製造方法、材料などを条件として設定するだけで、要件を満たしたあらゆる形状を自動生成できます。設定された材料や製造方法などの条件ごとに多数の形状が生成されるため、設計者は最終的な設計案を選択的に検討できます。
反復作業をAIに置き換え
従来の設計では、設計要件や軽量化などの目標をクリアするためにモデルを変更して解析ツールによる検証を繰り返す、という手間の掛かる試行錯誤が必要でした。
ジェネレーティブデザインを使用すれば、モデルの変更~検証の反復作業をAIに置き換えて実施できるため、設計者の負担を大幅に軽減できます。自動で要件を満たした形状を生成できますので、開発時間の短縮にもつながります。
独創的な形状を生成
自動生成される形状は人間では考えつかないような複雑さを持った、有機的な形状が多いのが特徴です。柔軟な方法で材料を減肉または補強して要件を満たす形状を生成されるため、積層造形を行う3Dプリンターの利用にも適しています。切削マシンによる加工など、製造方法を指定することで加工方法に合わせて最適な形状を計算するようコントロールすることも可能です。
その他のAI機能
生成型AI機能
3D CADではジェネレーティブデザインの他にも、AI技術を用いたさまざまな機能開発が進められています。生成型AI機能では3Dモデルから2次元図面を生成する機能(Autodesk Fusion)や、モデルのタイプ、材質、サイズを指定するだけで家具を自動生成する機能(Dassault Systemes:MakebyMe)の他、ラフスケッチから3Dモデルを自動生成できるような機能(3DEXPERIENCE Works:Magic SOLIDWORKS〈開発中〉)などがあります。
支援型AI機能
支援型AI機能では合致や要素の選択操作、スケッチ作成などを支援する機能(3DEXPERIENCE Works:Design Assistant〈開発中〉)や、画像や写真を基に輪郭をトレースしてスケッチを自動作成する機能、AIでコマンドを予測して表示する自動運転モード(SOLIDWORKS〈開発中〉)があります。設計者の負担になる作業や操作をAIでサポートすることで、より設計に集中できる環境を提供できるようになります。
動画で分かる まとめ
本動画は音声オンで再生されます。音量は、動画プレーヤー画面の下部にあるスピーカーアイコンで調整可能です。
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