設計現場で求められる熱流体解析ソフト4選

熱流体解析ソフトの特徴を解説

製品の小型化・高性能化が進む中、設計段階での熱や流体の挙動予測はますます重要になっています。従来は試作や実験に頼っていた熱設計や流体設計も、ソフトの進化により、設計担当者や開発担当者自身が解析を行える環境が整いつつあります。

また、操作性の向上や自動化機能の充実により、専門部署に依存せずとも、設計者が自ら解析を実施し、設計判断に活かすケースが増加しています。

熱流体解析ソフトの選定が設計力を左右する

設計現場で熱流体解析を活用する目的は、単に「流れを見る」「温度分布を確認する」といった可視化にとどまりません。重要なのは、設計判断に必要な情報を、試作前に得られるかどうかです。つまり、解析結果をもとに設計を最適化し、試作回数を減らし、不具合を未然に防ぐことが、解析ソフト導入の本質的な価値です。

そのためには、解析精度だけでなく、操作性や連携性、サポート体制など、実運用に耐えうる総合力が求められます。特に設計者が自ら使う場合、ユーザーインタフェイスの分かりやすさや教育支援の充実度は、導入後の活用率を大きく左右します。

代表的な熱流体解析ソフトウェア

ここからは、設計者にも扱いやすく、かつ高い解析性能を誇る代表的な熱流体解析ソフトウェア4製品について、それぞれの特徴と導入メリットを詳しくご紹介します。

SOLIDWORKS Flow Simulation :3DCAD完全統合の熱流体解析ソフト

SOLIDWORKS Flow Simulationは、SOLIDWORKS環境に完全統合された機能豊富な熱流体解析ソフトであり、SOLIDWORKSの3Dモデルを利用して流体シミュレーションを行うための革新的なソフトウェアです。この強力なツールを使用することで設計者やエンジニアは、3Dモデリング環境上で空気や水などの流体の流れの挙動や熱伝導を分析し、設計の最適化や検証を短時間で簡単に実行することが可能です。

さらに、熱流体解析結果(圧力・温度分布など)を構造解析ソフト SOLIDWORKS Simulationに荷重条件として転送できます。SOLIDWORKSの画面上で、熱流体-構造連成をシームレスに実行可能です。

SOLIDWORKS Flow Simulation 製品情報

scFLOW:日本発の高機能熱流体解析ソフト

scFLOWは、ソフトウェアクレイドル社が開発した日本発のCFDソフトウェアであり、日本語ユーザーインタフェイスや国内サポート体制が充実している点が大きな魅力です。熱伝導、構造連成、回転体、移動境界など、複雑な物理現象を高精度に解析できる機能を備えており、設計現場での実用性が高く評価されています。自動メッシュ生成機能と並列計算による高速解析により、解析準備や実行時間の短縮にも貢献します。

さらに、MSC NastranやAdamsなどの他CAEツールとの連携にも対応しており、構造解析や機構解析との連成解析が実現できます。これにより、従来では評価できなかった現象のモデル化に取り組むことも可能です。

scFLOW 製品情報

Ansys Fluent(Ansys CFD):世界最高峰の熱流体解析ソフト

Ansys Fluent(Ansys CFD)は、強力な計算ソルバーを搭載した、世界でもトップクラスの熱流体解析ソフトです。電子機器の放熱、配管・バルブなどの圧力損失から、化学反応、超音速流れ、回転機器など、幅広い物理現象に対応しており、あらゆる業界・製品に適用可能な高い汎用性を備えています。

最大の特長は、Ansys Workbenchを介した製品間連携の強さにあります。Ansys Mechanical、Ansys Electronicsなど、同一プラットフォーム上で流体・熱・構造・電磁場などの解析を統合的に実施できるため、設計から解析までの一貫したワークフローを構築できます。これにより、設計変更の影響を多角的に検証し、製品開発の精度とスピードを大幅に向上させることが可能です。

Ansys Fluent 製品情報

Particleworks :メッシュレスで液体挙動をリアルに再現する粒子法解析ソフト

Particleworksは、MPS法(Moving Particle Simulation)という粒子法を採用したメッシュレス型の熱流体解析ソフトです。潤滑油の挙動や液体の混合、飛沫、スロッシングなど、大変形を伴う液体現象の解析に強みを持っています。従来のメッシュベースのCFDでは困難だった複雑な液体挙動を、直感的かつ高精度に再現できる点が大きな特長です。

操作性にも優れており、設計者でも扱いやすいユーザーインタフェイスが整備されているため、解析専門部署に依存せず、設計部門内での活用が可能です。

Particleworks 製品情報

まとめ

熱流体解析ソフトの導入は、単なるツール選定ではなく、設計プロセスそのものを変革する可能性を秘めています。従来の試作中心の設計スタイルから、解析を活用した「設計のフロントローディング」へシフトすることで、試作回数の削減、設計品質の向上、開発期間の短縮といった具体的な成果が期待できます。設計力の強化と開発効率の向上を目指す企業にとって、熱流体解析ソフトの導入は、競争力を高めるための有力な選択肢となるでしょう。

大塚商会では本記事で紹介した製品だけでなく、設計現場の課題や業種・業務フローに応じた最適なご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。