3Dスキャナーは万能の入力装置ではありません。3Dスキャナーが不得意とする対象物もあり、デジカメや3Dプリンターのように誰が操作してもある程度の品質が確保されるものでもないからです。単純に入力処理を装置任せにしようと3Dスキャナーを導入しても、なかなか上手くいかないでしょう。3Dスキャナーの性能以上に操作するユーザーの工夫と技能(スキャニングノウハウ)が重要になります。また、スキャニング後のモデリング技術が良い3Dデータの作成には必須となります。
今回はあらかじめ知っておいた方が良い3Dスキャナーの特徴や注意点を大塚商会3Dスキャナー担当がぶっちゃけます。この記事を読めば、きっとスキャニング上達の助けになるはずです。
1.3Dスキャナーは全ての形状をスキャンできません
スキャン機器の性能にもよりますが、測定対象物の形状を完全にスキャニングできません。表面の不要な凹凸のノイズ、エッジや小径穴、奥行形状の欠損などが発生するからです。スキャニング後に点群編集ソフトで補完する必要があります。
2.黒や透明、光沢のある物はスキャンできません
非接触式の3Dスキャナーはレーザー光やLED光を測定対象物へ照射することで、形状を計測します。そのため、光を反射しない黒い物や透明な物、光沢のある物や鏡面状の物などは上手くスキャンできず、取得した点群データに「抜ける」箇所が発生します。このような場合は、サーフェイサー(白粉)を対象物に吹き付けて回避します。
しかし、対象物によってはサーフェイサーを吹き付けることが許されない物もあるので要注意です。
3.カタログに記載されている性能と実際のスキャニングが異なることがあります
3Dスキャナーで測定したデータは点群(点の集まり)になっています。デジタルカメラの画素数と同じで、高精度になればなるほど取得できる点の容量が大きくなり、結果的に形状の再現性が良くなります。
「精度」とは、この点群が実際の形状とどのくらい合っているかを数値化したもので、形状に対する点群のバラつきの範囲を示します。「分解能」という精度表示もあり、これは測定した点群がどのくらいの点間隔でスキャンされているかを示し、エッジや細かな形状の再現性を表しています。
3Dスキャナーの製品性能を見るときに一番重要なのが精度ですが、表現が「長さの精度(誤差)」「点群のバラつき精度」「繰り返し測定の精度」など多数あります。メーカー各社、違う基準や独自の条件(撮影環境やレンズ)を使用して性能評価をしているため、表現やカタログ表記が違ってくるのです。そのため、実際にスキャニングしたあとにカタログに記載された性能が出ないこともありえます。
4.3Dスキャナーの装置以上に重要なのは操作する人のテクニックです
通常、1回のスキャンで完全に形状を読み取れません。そのため、複数回スキャンしたデータを重ね合わせて結合し最適化する必要がありますが、重ね合わせる際に「合成誤差」が生じてしまいます。精密なスキャニングのためには、スキャン回数を増やしてできるだけ多くのスキャンデータが必要になりますが、かえって合成誤差を大きくしてしまうことにつながってしまいます。
メーカーが公表する精度はワンショット(1回のスキャン)での精度です。例えば、カタログスペックに精度0.2mm(ミリメートル)とあっても、複数のショットを最終的に合成したときには、合成誤差が加わって精度が落ちてしまうことになります。
つまり、情報量と合成誤差はトレードオフの関係にあり、なるべく必要最低限のスキャニング回数で高い精度の形状を読み取ることが必要になります。そこには操作する人のスキャン・テクニックが必要とされ、一朝一夕に身につくものではありません。合成誤差を小さくするには、物体形状に合わせた最適なスキャニング方法の確立とスキャナー制御ソフトウェア特性の理解など、運用ノウハウがとても重要となるのです。
5.スキャンだけで3DCADデータはできません
3Dスキャナーでスキャニングするとそのまま3DCADCADデータになるとつい誤解しやすいのですが、スキャンデータは点群データのため、そのまま3DCADで直接編集はできません。そのため、点群(ポリゴン)データをCADデータへ変換する必要があります。
この段階では、ただ単にデータを変換するのではなく、スキャンできなかったデータ欠損箇所の補完、修正、ノイズ処理、表面スムース処理などの操作も行う必要があります。その処理に必要なソフトウェアとして、Geomagic Design XやFreeFormなど、点群(ポリゴン)編集ソフトとよばれる製品があります。
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