製造業や建築業向けのプロフェッショナルVR、NVIDIAイベントで各社がデモ

NVIDIAは2017年1月26日、東京都内でイベント「NVIDIA Pro VR Day 2017」を開催。VR(仮想現実)を製造業や建築業向けに応用する“プロフェッショナルVR”に関する講演や展示が行われた。本稿では、展示コーナーのVR体験デモンストレーションについて紹介する。

なお、これらのVR体験デモで使用されていたハードウェアは、NVIDIAのグラフィックスボード「Quadro P6000」もしくは「Quadro P5000」を組み込んだ高性能PCと、VRシステムはHTCの「HTC Vive」による基本構成となっている。

  • * 本記事は、製造業技術者向けポータルサイト「MONOist」から転載しています。

VR空間で複数人が同時参加できる自動車のデザインレビュー

SCSKは、オートデスクの3Dビジュアライゼーションソフトウェア「VRED」を用いて「VR空間で複数人が同時参加できる自動車のデザインレビュー」を披露した。

  • SCSKの「VRED」用いたVRのデモ。「HTC Vive」を装着した2人のユーザーが、車両のデザインデータ内の運転席と助手席に座ってデザインレビューを行っている

  • 自分以外のユーザーは人の顔を模したアバターによって確認できる

VREDは、モデリングツールなどで作成したデザインデータを、シェーダーなどを使ってフォトリアルに表現できるソフトウェアだ。デモでは、HTC Viveを装着した2人のユーザーが、同じVR空間の中で1つの車両のデザインデータを共有して、その車両の外装や内装のデザインを評価する「デザインレビュー」を実行できるようになっている。

オートデスクは、2人までVR空間を共有できるVREDのユーザー向けカスタムスクリプトを公開している。しかし3人以上についてはこのカスタムスクリプトでは対応していない。そこでSCSKは、イントラネットワークで接続していれば3人以上でもVR空間を共有できるソリューションを開発した。「今のところ4人までは接続可能なことを確認している。既に販売も可能な状態」(SCSKの説明員)という。

ゲームエンジンで作成したキッチンをVR空間で体験

ボーンデジタルは、ゲームコンテンツなどの3D空間の作成に用いられるAllegorithmicのソフトウェアで設計した住宅のキッチンをVR空間で体験できるデモを行った。

  • ボーンデジタルの住宅のキッチンをVR空間で体験できるデモ

  • 3D空間はAllegorithmicのソフトウェアで作成した

VRの3D空間は、「Unity」「Unreal」などのレンダリングエンジンを使って表現されることが多い。Allegorithmicのソフトウェアはその際に広く使用されるPBR(物理モデリング)テクスチャを軽量に作成できることを特徴としている。

また、「VRED」による自動車のデザインレビューや、ハイエンドコンテンツの表示を劣化させずにポリゴン数を3分の1~4分の1に減らしてミドルレンジのPCでも扱えるようにするフランスPixiesのソフトウェアも展示した。

ハードウェア販促に向けて建築用BIMデータのVR変換をサポート

アスクは、グラフィソフトの建築用BIMソフト「ARCHICAD」の3Dデータを使って、施工前に設計内容をVR空間で体験できるデモを披露した。

アスクのVRデモ

現時点ではARCHICADの3DデータをそのままVRで表示することはできない。デモでは、UnityでVR表示するための3Dデータ変換をアスクが行っている。またデモでは実施していないが、「Cinema4D」によるフォトリアルなテクスチャ表現も可能だという。

アスクが手掛ける事業は、ソフトウェア販売ではなくハードウェア販売だ。ARCHICADの3DデータのVR空間向け変換サービスは、VR対応のハイエンドPCやHTC Viveなどのハードウェアの販促を目的としたものだという。

VR対応ハイエンドPCの条件とは

レノボ・ジャパンは、同社のVR対応ハイエンドPC「Think Station」による、福井コンピュータアーキテクトの建築用BIM「GLOOBE」のVR体験デモを実施した。

GLOOBEは、作成したBIMモデルをVR表示用に変換する機能を備えている。その変換データを専用ソフト「GLOOBE VR」で表示すれば、BIMモデルをVR空間でリアルに体験できる。

レノボ・ジャパンのVRデモの構成(出典:レノボ・ジャパン)

なおレノボ・ジャパンの説明員によれば、「VR表示を行うPCは熱対応が重要になる。当社のThink Stationは、同性能の他社PCと比べて冷却ファンの数が2分の1で済むような構造になっており、より静音で故障しにくい」としている。

GPUレンダリングで3D CADデータを滑らかに表示

フランスのルミスカフ(Lumiscaphe)は3D CADデータをVR空間内で滑らかに表示する製品群を披露した。

同社は、さまざまなベンダーの3D CADデータを、DAM(デジタルアスペクトモックアップ)としてフォトリアルに表現できることを特徴としている。機能的には、先述したオートデスクのVREDの競合に当たる。「特徴はGPUレンダリング。VR空間では、3D表示のフレームレートが重要になるが、その場合にGPUレンダリングが効果を発揮する」(同社の説明員)。なお、デモにおける片眼当たりのフレームレートは80fpsだという。

ルミスカフによる3D CADデータのVR表示

  • * 本記事は、製造業技術者向けポータルサイト「MONOist」から転載しています。