コンパクトで持ち運びでき何度も現場に足を運ぶ手間と時間が不要になった意義はとても大きいです

名工建設株式会社

業種
総合建設業
事業内容
土木工事、建築工事、軌道工事およびその設備工事の実施、監理、並びに企画、設計、測量、コンサルティングの請負など
従業員数
1,275名(2020年3月現在)
サイト
https://www.meikokensetsu.co.jp/

導入事例の概要

名古屋に本社を置き、土木・建築分野の総合技術を有する名工建設株式会社。早くからBIMに取り組んできた同社は、BIMとの連携によるさらなる業務効率向上を目指し3Dスキャナーを導入。現地調査業務の大幅な省力化だけでなく、足場やクレーンの配置検討など施工現場の干渉を事前チェックし、精度の高い施工計画の立案に役立てている。

導入の狙い

  • 何度も足を運ぶ現地調査の工数を減らしたい。
  • 測量した点群データをBIM活用促進に活かしたい。

解決策

  • かばんに入れて持ち歩けるサイズの3Dスキャナーの導入。

導入製品

  • 3Dスキャナー「Leica BLK360」
  • 点群編集ソフト「Autodesk ReCap Pro」
  • 3次元CAD「Autodesk Architecture,Engineering & Construction Collection」
    (導入時の製品名はAutodesk Building Design Suite)

導入したメリット

  • 現地調査が1回で完了し、手間と時間が減った。
  • 点群データを活用し、精度の高い施工計画が立てられるようになった。
  • 解体用図面の作成など、点群データをBIMに活用できた。

土木・建築・軌道の総合技術で社会の発展に貢献

名工建設株式会社は、名古屋に本社を置く土木・建築分野の総合技術を有するゼネコンである。同社の特長は、1941年の創業以来、鉄道省、国鉄、JR東海等の鉄道工事に一貫して携わり続けてきたことにある。起伏に富む日本の国土において、新幹線・在来線の新設工事・改良工事・メンテナンスを手掛ける中で培われた技術力や「安全」を前提としたマネジメントは各方面で高く評価され、近年は南米やアジア各国の鉄道近代化に関する技術協力にも積極的に取り組んでいる。

建築部門で注目されるのは、省エネや再生可能エネルギーの利用を通して、建物の運用段階でのエネルギー消費量を限りなくゼロに近づけることを目指す「ZEB(ゼロエネルギービル)」への取り組みだ。ZEBには達成度に応じて4段階の定義があり、同社は既にエネルギー消費を50%以下に削減するZEB Readyを実現。今年度中には、創エネにより25%以下に削減するNearly ZEB達成を目指している。

また、自社開発の開放型耐震補強工法「SMIC工法」による、公共施設や集合住宅の耐震補強ニーズ掘り起こしも注目される取り組みの一つだ。

名工建設株式会社が自社開発した「SMIC工法」は、柱・梁(はり)の構面内に、鉄骨と繊維補強コンクリートで構成された部材を一体化し、耐震性能を向上させる技術

いち早くBIM活用を推進し、設計品質を向上

同社が設計品質の向上を主な目的としてBIM推進を開始したのは、今から10年ほど前のことだ。設計・施工を一貫して手掛ける強みを生かし、フロントローディングによる設計段階での課題洗い出しと共に、施工部門にデータを受け渡し、作業の効率性・生産性向上、さらには安全や品質の確保にBIMデータを活用するという流れが定着化している。次のステップとして、2019年4月から取り組んだのが3Dスキャナーによる点群データの活用だった。その狙いを建築本部 設計部 設計課 課長の岡嶋慶氏は、「例えば鉄道沿線の再開発では、トロリ線や法面の状況、建築物との位置関係などを把握する必要があります。現地の点群データがあれば、BIM3次元モデルと重ね合わせることで現地の状況と建築物との関係性が一目瞭然になり、現地調査の省力化が図れると判断しました」と説明する。

同社は検討のうえ、大塚商会の勧める3DスキャナーLeica BLK360の採用を決定。機種選定のポイントは、女性一人でも公共交通機関を使って持ち運べるコンパクトさだった。実際にLeica BLK360による現地調査に出向くことも多いという建築本部 設計部 設計課の木村美穂氏は、「通常の測量機器を持ち運ぶ際は電車による移動は考えにくいのですが、Leica BLK360なら問題なく電車やバスで現地に行くことができます。そのため、私一人で現場調査に行くことも増えています」と語る。

建築本部 設計部 設計課 課長 岡嶋慶氏

「今後BIM / CIMの取り組みにおいて、点群データが大きな役割を果たすことは間違いないと思われます。小型で利用しやすい機器が登場したこともあり、いち早く取り組みを開始した方がメリットも大きいと思います」

建築本部 設計部 設計課 木村美穂氏

「メーカーと違い、ユーザー視点で新しい提案をしてくれる大塚商会さんには、いつも助けられています。自分たちがしっかりと理解したうえで製品を紹介する点にも好印象を持っています」

試行錯誤を通し効率の良い運用ノウハウを蓄積

Leica BLK360により360度の点群を取得し、点群データをタブレット端末に転送する。それをオフィスに持ち帰り、点群合成・編集ソフトAutodesk ReCap Proによりデータの合成編集を行う。点群合成・編集ソフトは測量スキャニングポイントの点群データを自動合成する機能を備えるが、その機能を生かすには適切な撮影ポイントの選定が大きな意味を持つと岡嶋氏は指摘する。

「ポイントを絞り込めばより効率良く点群データを取得できますが、間隔が広がるにつれ自動合成が難しくなる傾向があります。そのため、最適なポイントを見つけ出すことが大切です。導入後、数カ月にわたって試行錯誤を繰り返しましたが、その中で培ったノウハウが運用において大きな役割を果たしています」

設計業務に必要十分な精度を確保

Leica BLK360はシリーズのエントリーモデルに位置付けられるが、設計業務には必要十分な精度を備えていると岡嶋氏は言う。「設計段階はクリアランスをある程度見ることが前提ですが、それには十分な精度を備えています。また施工部門でも、例えば新・旧の建物間を渡り廊下でつなげる案件では、足場の配置に点群データを利用しました」

Leica BLK360を用いたスキャニングの様子。コンパクトで軽量なため、女性一人でも現地調査が可能に

調査のために何度も現地に足を運ぶ時間が不要に

導入効果としてまず挙げられるのは、現地調査の大幅な省力化だ。現地調査では、調査後に再確認や追加の採寸が必要になることも多い。しかし3Dスキャナーであれば、再び現地に足を運ぶことなく一度の測量で正確な情報を得ることが可能だ。

「先日、設計図がない建物の解体用図面の作成で、Leica BLK360による点群データをBIM3次元データとして活用しました。間仕切りされた仮眠室が数多くある建物だったこともあり、撮影には多少時間がかかりましたが、以前のように図面を起こす際に何度も足を運ぶということは一切なくなりました。これまで2、3回行っていた現場調査が1回で済むため、調査に要する時間は確実に短くなっています」(岡嶋氏)

もう一つのポイントは施工計画におけるメリットだ。点群データと建物の3次元モデルを重ね合わせることで、現場の状況が一目瞭然になることがその理由である。

「従来の現場調査でも、電線など気付いたものは写真に撮るなどしてチェックしますが、施工時の干渉は見落としもあり、完全ではありません。そういう意味でも点群データの意義は大きいです。以前、施工計画立案後に点群データをチェックしたところ、足場が電話線に干渉していることに気付き、急きょ電話線の移設を依頼したことがありました」(岡嶋氏)

自社設計施工ではなく施工のみの受注案件では、施工部門がLeica BLK360で点群データ取得を行っている。特に、複数の重機や足場の配置パターンを検討できるようになった意義は大きいという。

「3次元モデルと点群データを重ね合わせることで、クレーンの干渉などさまざまなことが見えてきます。それにより複数の足場やクレーンの配置パターンを机上でシミュレーションし、最適なパターンを選択できるようになった点も効果としては大きいです。点群データの活用は、設計・施工両部門で効果を上げています」(岡嶋氏)

  • Leica BLK360による点群データの活用は、設計だけでなく施工部門においても確実な効果を上げている

施工監理における活用を視野に取り組みを続ける

同社は将来的に出来形管理や品質管理に点群データを活用することを視野に入れている。

「当社の設計部門は施工監理を兼務していることもあり、将来は出来形管理や柱の倒れをはじめとする品質管理にも点群データを活用していきたいと考えています。点群データとして確実なエビデンスが残せることは建設業界にとって大きな意味を持つと思います。その実現に向け、より高精度の機器がより低コストで購入できるようになることを期待したいですね」と岡嶋氏は言葉をまとめた。