広幅複合機の導入で高精度の図面を出力。クライアントとの情報共有や社内文書の電子化を推し進める

平川建設株式会社

横浜スタジアムやよみうりランドの木製コースター、みなとみらいの最新オフィスビルまで、神奈川県内のランドマークを数多く手がける、とび工事業大手の平川建設株式会社。同社では、クライアントのゼネコンから支給された図面に、作業に必要な情報を書き込んで使用してきたが、利用していた出力機に限界を感じていた。このほど、大塚商会より広幅複合機『Oce ColorWave 300 MFR』を導入。これまでの図面出力などに関する不満を一気に解消すると共に、スキャン機能を活用して、図面の電子化にも取り組み始めた。

数多くのビッグプロジェクト成功の陰には、同社が提供する職人技が不可欠だ(写真はみなとみらいODKビル建設風景)

数多くのビッグプロジェクト成功の陰には、同社が提供する職人技が不可欠だ(写真はみなとみらいODKビル建設風景)

導入事例の概要

導入の狙い

  • 建設現場で使用する精度の高い図面の出力による作業の円滑化
  • 既存機の性能面における課題解決

導入システム

  • カラー広幅複合機『Oce ColorWave 300 MFR』
  • AutoCAD
  • 基幹系オーダーシステム

導入効果

  • 図面出力に関する課題やストレスの解消
  • 図面の電子化による記録の蓄積
  • 総務分野での活用におけるコスト削減等

機械ではできない職人技で、大手ゼネコンの信頼を得る

平川建設株式会社(以下、平川建設)は、1959年に重量とび工事の請負業として創業。現在では約270人の従業員を抱え、とび・土工工事業の分野では国内最大規模を誇る。本社所在地の神奈川県を中心とした首都圏全域において、超高層・高層の商業施設、中高層の新築マンション、大型レジャー施設などの建設には欠かせない存在として、大手ゼネコンから多数の受注を得ている。

過去のビッグプロジェクトでは、横浜スタジアムや、よみうりランドの木製コースターの建設に携わったほか、最近では、みなとみらいセンタービルの工事を担当。総務部 部長の深澤 友秋氏によると「当社では、スーパーゼネコンのプロジェクトにこだわっている部分もあります。中堅規模の企業から依頼を受けることもありますが、目先の売り上げや利益率に惑わされずに、継続して安全に仕事を成し遂げたいという考えから、既存のお客様との信頼関係を第一に考えています」と同社の経営方針を話す。

建設業界は、長引く不況の影響が深刻といわれているが、とび工事大手の同社の悩みは、仕事不足よりも人材不足である。とび工事を扱う会社は、一般に5~10人規模の職人集団というところが多く、同社のように会社組織が整備されている企業は、神奈川県内にも数社しかない。取引先の大手ゼネコンにとっても、同社のように高い技術力のある人材を確実に集められる下請けは貴重な存在だ。

「確かに、工事件数全体は縮小傾向にあるといえます。しかし、当社で扱うとび工事は、機械に頼ることができないので、どうしても人手が必要となります。しかも、建設業界が3K職場といわれるようになってから、若い人が集まりにくく、人材の確保がいっそう難しくなっています。ですから、同社では入社してくれた人が、できるだけ長く働けるよう、人材教育にも力を入れています」と深澤氏は力強く語る。かつて、職人の世界は現場で仕事を覚えるのが普通だったが、同社では安全性の面からも、現場に出る前の研修に時間を割くように腐心している。

図面出力に多くの課題。代替機の登場を待つこと8年

同社の業務では通常、取引先のゼネコンから配付された紙図面コピーや、CADデータを出力して現場に持参している。ゼネコンは一つのプロジェクトに膨大な量の図面を必要とするが、そのうち同社が使用するのは一つの現場で10枚程度だという。その図面に障害物の有無や、材料の搬入ルートなど現場の状況を手描きで書き込みながら、事前に作業工程を確認していく。

「工事の進行状況や工程の変化などで、クライアントが事前に作った図面と、現場の状況が違うことは珍しくありません。また、クライアント側が使うために作成された図面なので当社の作業に必要な情報が不足していることもあり、図面への加筆作業が必要になります。それも作業のスピードを考えると、どうしても手描きになるのです」と深澤氏は図面利用の様子を説明する。

そんな大事な図面を出力する広幅出力機だが、同社が長年使用していたものは多くの問題を抱えていたという。

深澤氏は当時の様子を次のように振り返る。「広幅のモノクロのレーザープリンターだったのですが、A1サイズの出力でも、印刷にムラが生じて、現場での使用に耐えないこともありました。また、長尺印刷ができない、CADなどのアプリケーションソフトにドライバーが対応しないなど、不満に感じることが多かったのです。メーカーには何度も申し入れましたが、対応してくれる気配が感じられませんでした」

また、その出力機にはスキャン機能がなかったため、同社で加筆した図面の控えを取ることができず、取引先に現物を提出してしまうと、後で閲覧するのが難しい状況となったことも、深刻な課題の一つであった。

とはいえ、同社が欲する機能を全て有した代替機がなかったため、不満を感じながらも結局、8年間も使用し続けていた。最近になってようやく、同社が必要とする性能を備えた大判複合機を扱うメーカーが増え始め、満を持して、新機種の導入に踏み切ることとなった。

従来の課題は全て解消。予想外の高性能に大満足

「今度は絶対に満足できるものが欲しいと考え、7~8社を対象に検討を進めました」と深澤氏。

コピー機を得意とするメーカーの機種や、業務用の大判複合機専門メーカーの製品を検討対象とする中で同社が選択したのは、大塚商会から紹介された日本オセの広幅複合機『Oce ColorWave 300 MFR』だった。この機種は、1台でカラーとモノクロのプリント・コピー・スキャンができ、同社のニーズを満たしていた。操作も簡単で、いろいろなタイプのファイル形式に対応できることから、建設用のCAD図面だけでなく、社内の幅広い用途での使用も可能で、大判オールインワンプリンターとして高く期待されたという。

導入間もないが、工事部に限らず全社で活用が進んでいる

導入間もないが、工事部に限らず全社で活用が進んでいる

「組織としてはシステムに詳しくない人間でも、プロッターとプリンターの性能の違いを意識しなくても使えるものが必要でした。図面を印刷するときも、普通のプリンターに出力するような感覚ですね」と深澤氏は話す。

インクジェットプリンターの最大の難点といえば、印刷速度だが、深澤氏は「推測していたよりずっと速かったのです。心配していただけに、予想外のスピードに驚きました。しかも速いからといって解像度を犠牲にしていません。その印刷品質の高さにも驚かされました」と、事前の不安がかえって好印象につながったという。

また、同社の業務特性上、図面を外へ持ち歩くことも多く、雨などの水ぬれへの耐久性も懸念していたが、こちらも合格だった。

「さすがに、雨があたる場所に図面を貼り出すようなことはしませんが、移動中のちょっとした水ぬれなどには、持ちこたえてほしいという希望がありました。インクジェットプリンターなので、耐水性は弱いだろうと覚悟していたところ、印字サンプルに直接水をかけるなどしてテストしてみたら、意外と大丈夫でした。これならいけるという手応えをつかめました」

こうした実践的なテストにもパスして『Oce ColorWave 300 MFR』は、2010年6月、同社に導入された。

導入後、3カ月ほどたった現在では、早くも利便性を実感する場面が増えている。「一言でいうと、以前の出力機では諦めなければならなかったことが、諦めなくてもよくなった、ということです」と深澤氏は笑顔を見せる。

「まずは、カラー出力とスキャン機能が便利ですね。以前から現場での作業用図面への加筆は色違いのペンやマーカーを使っていたのですが、うちで加筆した記録をスキャンし、さらにそれをプリントアウトすることが多くなりました。また以前は、加筆した図面そのものをクライアントに渡してしまっていました。今ではスキャンデータを送ることで、お客様にも早く確認してもらえますし、社内でも控えが取れ広く閲覧できるようになり、記録としても残せるようになりました」

現場で使用する図面出力やスキャンだけでなく、総務部などにおいても『Oce ColorWave 300 MFR』の使用頻度が高まっているという。

「図面出力以外の用途も結構あります。実は、我々総務が、『Oce ColorWave 300 MFR』を欲しかった理由の一つとして、社内行事で使用する横断幕や社内掲示の製作への利用があります。例えば、入社式の横断幕や、安全決起集会の立て看板などは、長尺の出力が可能なので非常に助かっています。以前、横6メートルの幕などは、外注で2万円くらい製作費がかかっていたので、社内で作成できるようになりコストメリットが大きいですね。また、駅構内に張り出す求人広告ポスターなども、内製しています。総務部門以外でも社長が年度初めの計画表作成に使用したり、工事部が社内用のポスターを作成したり、全社的に活用が進んでいます。エクセルで作ったデータをポスターサイズで出力することもあります」

ランニングコスト面でも満足度は高い。「今、オセさんの純正用紙を使用していますが、品質もインクの乗りもよく、単価も安くて助かります。安いからといって、他社製の消耗品を使用するとトラブルの元になることが多いのですが、紙もインクもオセさんのものなので、安心して使用できますね」

手堅いIT導入で職人たちの現場をサポート

平川建設では、これまでにもAuto CAD導入のほか、基幹システムの開発などで大塚商会との取引があった。

「実は、基幹システムの開発の時には、大塚商会さん以外にも『システム開発に加えて、サーバのメンテナンスや保守までやります』と申し出たシステムベンダーは複数ありました。しかし、あれから何年かたって、大塚商会さん以外の会社は1社も残っていません。またITを活用する以上、OSのバージョンアップに必ず対応しなければなりません。ちょうど今、Windows XPから7への移行を考える時期になっていますが、基幹システムを他社に依頼していたら、バージョンアップしようにも、開発元の会社がないという恐ろしい事態になっていたかもしれません。やはり、基幹システムにしても、今回の出力機にしても、安定的に長く付き合えるところにお願いしたいと痛感しました」と深澤氏は語る。

クライアントから提供されるCADデータのA1出力もスピーディだ

クライアントから提供されるCADデータのA1出力もスピーディーだ

今回の『Oce ColorWave 300 MFR』導入を機に、深澤氏は社内のIT化を進めたいと考えている。

「大判の図面のスキャニングが可能になったので、まずは、図面の電子化に取り組みたいと思います。図面をお客様に戻してしまったり、保管場所の確保が大変だったりで、今まで手元に残すことを諦めてきた部分もありますが、実績を記録する意味でも、図面の電子化、さらに社内文書の電子化は急務の課題です」と深澤氏は意欲を見せる。また、取引先のゼネコンが使用していることから導入したAutoCADについても、さらに活用頻度を高めていく考えだ。

機械が代わることができない熟練したとび職の仕事を、ITが支えることで、信頼と品質向上へ向けた取り組みに拍車がかかりそうだ。

平川建設株式会社

業種建設業
事業内容とび・土工工事業、建築工事業
従業員270名(2007年3月現在)
サイトhttp://www.hirakawa-co.jp/