Dassault Systemes社が3D Experience Worldで将来に向けたビジョンを発表

2025年 3月10日

Dassault Systemes社 2025年2月26日

30年前、SolidWorksは高品質のCADソフトウェアを世界中のエンジニアやイノベーターに提供し、3D設計に革命をもたらした。この先駆的なプラットフォームを開発したDassault Systemes社は今週、米国・ヒューストンで開催された3次元CADの年次イベント「3D Experience World」において、SolidWorksの30周年を記念して、人工知能、自動化、デジタルトランスフォーメーションを活用する大胆な将来ビジョンを発表した。

Dassault SystemesとSolidWorksのシニアエグゼクティブが主導したこのイベントのオープニング・セッションでは、かつてはニッチな存在だった設計ソフトウェアが、現在ではAI主導の自動化、デジタルツイン、高度な製造ソリューションを統合した包括的なプラットフォームへと進化していることが強調された。同イベントには、ヒューストンの会場に4,000名、オンラインでは数千名の参加者が集い、エンジニアリングと製造におけるAIとクラウドベースのコラボレーションの重要性が深まっていることが示された。

SolidWorksの新時代

同イベントでは、Dassault Systemes社のメインストリームイノベーション担当シニアバイスプレジデントであるGian Paolo Bassi氏が登壇し、SolidWorksの継続的な進化を強調した。業界のベテランであり、エンジニアリング技術の一般普及に長年取り組んできたBassi氏は、人工知能とクラウドコラボレーションを日常の設計ワークフローに統合するための同社のロードマップについて概説した。

「SolidWorksは、強力なツールを世界中の設計者、エンジニア、学生の手に届けるというアクセシビリティを常に追求してきました。現在、当社はAIを活用したアシスタンス、ジェネレーティブデザイン、リアルタイムのコラボレーションにより、このコミットメントをさらに強化しています」とBassi氏は述べる。

同氏は、実際の製品をリアルタイムに高精度で仮想的に表現したデジタルツインがもたらす変革的な影響についても強調し、デジタルツインは単なるビジュアライゼーションではなく、製品のライフサイクルを改善するための予知保全、リアルタイム性能追跡、自動最適化を可能にするものだと語った。

「私たちはもう、単に3D設計の話をしているのではありません。企業による技術革新の迅速化、コスト削減、製品の市場投入の効率化を支援するインテリジェントでデータ駆動型のシステムの創造へと話題は移っているのです」とBassi氏は語る。

同氏はまた、持続可能性の重要性が高まっていることを挙げ、AIを搭載したSolidWorksのツールが、企業によるスマートな材料の選択、廃棄物の削減、エネルギー消費の最適化に役立っていることを挙げた。「持続可能性はもはや選択肢ではなく、必要不可欠なものです。AI主導のインサイトにより、エンジニアは革新的なだけでなく、環境に配慮した製品を創り出せるようになっています」。

AI、デジタルツイン、そしてバーチャルコンパニオンの力

最も印象的な発表の一つは、AIを搭載したバーチャルコンパニオン「Aura」だ。Dassault Systemes社によると、Auraは、複雑なワークフローの自動化、設計効率の分析、知的財産の保護によってエンジニアや製造業者を支援するものであるという。同社は、AIは人間のエンジニアに取って代わるものではなく、むしろエンジニアの意思決定能力と効率を高めるものだと強調した。

SolidWorksの最高経営責任者(CEO)であるManish Kumar氏は、「Auraはユーザーから学び、ユーザーから教わり、ユーザーの作業の最適化を支援します。ジェネレーティブAIと自動化により、エンジニアが反復作業よりも創造性と革新に集中できる未来を切り開いていきます」と述べる。

Manish Kumar氏はステージに立ち、SolidWorksを従来のCADアプリケーションの枠を超え、完全に統合されたデジタル製造・エンジニアリングプラットフォームへと押し上げる同社の取り組みについて説明した。同氏は、SolidWorksがクラウドベースのコラボレーションを採用し、エンジニアがどこからでも設計にアクセスできるようにするとともに、セキュリティを確保し、サプライチェーンパートナーとのシームレスな統合を実現していることを説明した。

Kumar氏のプレゼンテーションにおける重要なポイントは、SolidWorksがAIを活用したワークフローへの注力を深めていることだ。同氏は、SolidWorksがどのように設計から製造までのパイプラインのあらゆる側面にAIを組み込み、予測モデリング、ジェネレーティブ設計、エンジニアリングワークフローのリアルタイムの最適化を可能にしているかを説明した。「AIを搭載したバーチャルアシスタントが設計の改善点を積極的に提案し、構造の完全性を検証し、さらには持続可能性や費用対効果に基づいて材料を推奨する時代に私たちは向かっています」とKumar氏は語る。

Kumar氏は、AIによる自動化のパワーを説明するために、SolidWorksエコシステム内の新機能を紹介した。そのうちの一つが、機械学習を活用してユーザー定義の制約に基づき複数の設計反復を生成する生成設計ツールで、これにより、エンジニアは数秒のうちに何千もの可能性を探ることができ、手作業による修正に費やす時間を大幅に短縮できる。また、AIを活用したリアルタイムシミュレーションによって機械的性能を即座に評価し、大規模な試行錯誤を不要にする方法も披露した。

Kumar氏はまた、分散したチーム間でのリアルタイムの共同エンジニアリングをサポートするために設計された、新しいクラウドネイティブなSolidWorksコラボレーションツールも発表した。「今日の世界では、エンジニアリングを単独で行うことはもはやありません。チームはグローバル化し、サプライチェーンが絡み合い、市場投入までのスピードが非常に重要になっています。だからこそ、SolidWorksをこれまで以上にコラボレーティブなものにしているのです」と同氏は強調する。

最も野心的な発表の一つは、AIを活用したデジタルツインエコシステムに関するSolidWorksのビジョンである。Kumar氏は、デジタルツイン(物理的資産の仮想的な表現)によって、企業は製品をリアルタイムで監視し、メンテナンスの必要性を予測し、かつてない精度で製造工程を最適化できるようになると説明し、「工場現場がリアルタイムのデータに基づいて自己最適化したり、医療用インプラントが医師に直接フィードバックを送ったりできる世界を想像してみてください。それが、私たちがデジタルツインで築こうとしている未来です」と語った。

Kumar氏のプレゼンテーションでは、SolidWorksの新しいCPQ(Configure, Price, Quote)システムも紹介された。このシステムは、製造業者の製品構成と価格設定を自動化することで、受注から生産までのサイクルを合理化するように設計されている。同氏は、これは複雑でカスタマイズ可能な製品を扱う企業にとって画期的なもので、正確な見積もりを数日ではなく数分で作成できるようになると述べた。

ロボティクス、スタートアップ企業、拡大するSolidWorksエコシステム

基調講演では、Boston Dynamics社の四脚ロボット「Spot」も登場し、ロボット設計におけるSolidWorksの最先端のアプリケーションが紹介された。

「Spotは、産業的な検査から考古学的調査まで、あらゆる分野に導入されています」とBassi氏は述べ、プエルトリコのハリケーン「フィオナ」の被害調査やポンペイの古代遺跡の調査に使用されたことを紹介した。

Spotの生みの親であり、Boston Dynamics社の創設者でAI研究所のエグゼクティブ・ディレクターであるMark Raibert氏が登壇し、AIがロボット工学をどのように変化させているのかについて話した。同氏の講演では、工場作業用に設計されたヒューマノイドであるAtlasのようなロボットが、強化学習と生成AIによって人間の複雑な作業をどのように学習しているかが紹介された。

一方、SolidWorksを活用してコンシューマー向けおよび産業向けの新製品を市場に投入しているスタートアップ企業であるColdSnap、Bullwark Mobility、OneWheel社によるパネルディスカッションでは、SolidWorks for Startupsプログラムがどのように新しいビジネスを後押ししているかが紹介された。これらの企業は、SolidWorksのツールや機能によって製品開発や製造プロセスをどのように加速できたかをそれぞれ説明した。

ColdSnap社の創設者であるMatt Fonte氏は、同社のチームがSolidWorksの高度なシミュレーションツールを活用して、オンデマンドのフローズンデザートマシンをどのように改良したかを語った。この装置はアイスクリーム版のキューリグ(カプセル式コーヒーメーカー)に例えられ、長い冷凍時間やかさばる冷凍庫を必要とせずに、消費者が数分でフローズンデザートを作れるようにするもので、Fonte氏は、SolidWorksの数値流体力学モデリングによってマシンの冷凍プロセスが最適化され、高品質の出力を維持しながらエネルギー消費を削減できたと説明した。これについてFonte氏は、「SolidWorksの精度と柔軟性のおかげで、プロトタイプから生産まで想像をはるかに超えるスピードで進めることができました」と述べている。

Bullwark Mobility社のCEOであるDr. Shri Harshaは、電動トラクターを利用しやすく手頃な価格にすることで、インドの農業を変革する同社の使命について語った。同氏は、SolidWorksのクラウドベースのプラットフォームによって、チームがさまざまな場所でシームレスに共同作業を行えるようになったことを強調した。「SolidWorksの統合設計およびシミュレーション環境のおかげで、設計をリアルタイムで最適化でき、開発コストを削減し、市場投入までの時間を短縮できました」と、Harsha氏は述べている。

また、OneWheel社の創設者であるKyle Doerksen氏は、同社のセルフバランス電動スケートボードの設計と製造にSolidWorksがどのように役立ったかを説明した。Doerksen氏は、SolidWorksを使用してプロトタイプ作成を開発したスタンフォード大学時代のことを振り返り、SolidWorksはOneWheel社の製造プロセスを改良する上で中心的な役割を果たし続けていると述べた。「SolidWorksのおかげで、初期フレームの設計からボードの堅牢性と応答性の確保に至るまで、電動モビリティでできることの限界を押し広げることができました」とDoerksen氏は語る。

SolidWorksのエコシステムは、必要なツールを提供するだけでなく、互いに学び合い、各業界を前進させるイノベーターのコミュニティを育成するものであると、これらの創設者の全員が述べている。

今後の展望

将来を見据えて、SolidWorksは今夏に新しいCPQ(Configure, Price, Quote)ソリューションを導入する予定となっている。これは、技術設計と並行してビジネスオペレーションを合理化するという、より広範な戦略の一環である。

「我々は、もはやCADの話だけをしているのではありません。私たちは、AI主導の世界で企業が競争力を維持できるようにするエコシステム全体を実現することについて話しているのです」とDaloz氏は語る。

カンファレンスは今週いっぱい開催され、AI支援エンジニアリング、リアルタイムコラボレーション、デジタルツインの進化する役割に焦点を当てたセッションが予定されている。

30年を経て、SolidWorksは3Dモデリングツールとして始まった時代から長い道のりを歩んできた。ヒューストンからの明確なメッセージ。それは、次の10年は、人間の創意工夫とAIや自動化の力をシームレスに融合させることができる人たちのものになるだろうということだった。

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