壁量計算とは何か? 建築基準法と品確法との違いは?

住宅の構造計算の厳格化が始まります

2025年の建築基準法改正により、住宅の構造計算がより厳格化されることが決まりました。この改正に伴い、これまで多くの木造住宅で適用されてきた「4号特例」が縮小されることとなり、構造計算が必須となるケースが増えることが予想されます。

壁量計算とは

壁量計算は、木造住宅の構造計算の方法の一つで、木造住宅が地震や風などの外力に耐えられるよう、必要な耐力壁の量を計算する方法です。耐力壁とは、地震や風などの力がかかったときに、建物全体を支える役割を果たす壁のことです。

壁量計算では、次の式を満たすように耐力壁を配置します。

存在壁量≧必要壁量

つまり、実際に建物に設ける耐力壁の量(存在壁量)が、計算で求められる必要な耐力壁の量(必要壁量)以上であることを確認します。

必要壁量の求め方

必要壁量は、建物の大きさや形状、建物の周囲の環境(風の強さなど)などを考慮しながら、次のステップで算出します。

  1. 建物の床面積や外壁の見付面積を基に、地震力と風圧力に対する必要な壁量を求める。
  2. 地震力に対する壁量は、建物の階数や重さに応じた係数を床面積に乗じて計算する。
  3. 風圧力に対する壁量は、地域の風の強さに応じた係数を外壁の見付面積に乗じて計算する。
  4. 最終的に、地震力と風圧力のどちらか多い方の壁量を採用し、必要な耐力壁を配置する。

4分割法による耐力壁の配置

建物全体で必要な壁量が確保されていても、壁が偏って配置されていると、地震などが発生した際に建物が大きく変形したり、倒壊する危険性があります。

そこで、告示内の「木造建築物の軸組の設置の基準を定める件」の中に記されている「4分割法」を用いて、壁量充足率と壁率比を満足できるように存在壁をバランスよく配置します。建物を四つの部分に分割し、それぞれの部分に均等に耐力壁を配置することで、建物のバランスを保つ方法です。

その1.平面プランを4分割し、両端から1 / 4の部分(側端部分)に対する必要壁量を計算する

4分割法での必要壁量=階の床面積に乗ずる数値(m / m2)×側端部分の床面積(m2)

X方向(桁行方向)の計算:各側端部分の必要壁量=この範囲の床面積×乗じる数値

Y方向(梁間方向)の計算

その2.存在壁量を求める

以下の式より、方向ごとの側端部分の存在壁量を計算します。

存在壁量=(壁倍率×側端部分の軸組の長さ)の和

壁倍率は耐力壁の種類によって異なります。

1.片筋かい:断面の形状によって倍率が異なる

  • 壁倍率1.0

  • 壁倍率1.5

  • 壁倍率2.0

  • 壁倍率3.0

2.たすき掛け:断面の形状によって倍率が異なる

  • 壁倍率2.0

  • 壁倍率3.0

  • 壁倍率4.0

3.面材

壁倍率2.5

その3.壁倍率は、筋かいの断面2次モーメントで決まっている?

断面2次モーメントで考えると、サイズ変更しているのは、モーメントに効果のある「h(せい)」ではなく「b(幅)」の辺の長さなので、「b(幅)」の長さが増えると、せいのように3乗で大きくなることはありませんが、壁倍率も増える(ただし、整数倍ではない)。

建築基準法と品確法の壁量計算の違い

建築基準法で定められている壁量計算と品確法で定められている壁量計算は、計算方法は同じです。

しかし、検討対象となる部材や地震力の大きさ、そして耐震等級が異なります。建築基準法の耐震等級を1とすると、品確法の耐震等級は2または3となり、数字が増えるほど強い地震に耐えられる、というものになります。そのため、品確法で設計された建築物は、構造的に強い建物とされています。

建築基準法の壁量計算(耐震等級1)

品確法の壁量計算(耐震等級2):準耐力壁も加算

存在壁量≧必要壁量ならば、建築基準法の1.25倍強い地震力に耐えられる、ともいえる。

品確法の壁量計算(耐震等級3):準耐力壁も加算

存在壁量≧必要壁量ならば、建築基準法の1.5倍強い地震力に耐えられる、ともいえる。

HOUSE-ST1なら、いずれの壁量計算にも対応しています

HOUSE-ST1は、住宅の設計をサポートするソフトウェアです。建築基準法の壁量計算のみならず、住宅の品質確保の促進などに関する法律(品確法)にも準拠した構造計算に対応しています。HOUSE-ST1が両方の法律に対応しているということは、設計者が建築基準法で定められた最低限の基準を満たすだけでなく、より高品質な住宅を設計したい場合に、品確法に基づいた厳格な構造計算を行えることを意味します。

また、品確法に基づいた構造計算は、単に建物の強度を測るだけでなく、長期優良住宅という特別な住宅の認定を受けるための重要な要素となっています。国がその建設を積極的に支援しており、住宅の税制優遇措置を受けられます。クライアント様に住宅の安全性や耐久性をご説明することで、安心感を与えることもできます。