流体計算のメッシュはどれくらい細かくすればよいの?

本格計算に入る前にトライしたい、メッシュの感度解析

流体計算の結果はどれくらい信頼できるのか?これまで実測で済ませてきた現場に流体ソフトを導入するとき、必ず議論となるテーマではないでしょうか。解析解との比較や実測値と比較して流体ソフトを検証することは確認(verification)と検証(validation)と呼ばれ、ソフトの品質保証の観点から重視されるようになってきています。

メッシュのサイズは解の品質を左右する重要な要因となっています。問いに対する一つの回答は「メッシュをそれ以上細かくしても得られる解が変化しなくなるサイズ」です。計算量はメッシュ数に比例します。3次元定常計算の場合、メッシュサイズを半分にすると計算量は2の3乗に比例して増加することになります。

メッシュを細かくするにつれ計算時間が急激に増大するため、現実的な時間で結果を得るためにはどこかで妥協する必要があります。場合によっては現実的な時間で予測計算を終了することができないと判断せざるを得ない場合もあるかもしれません。右の図はこの関係を模式的にあらわしたものです。

メッシュの感度解析イメージ

感度解析の例(バックスステップ流れ)

粘性流れの検証問題として採用されることの多いバックステップ流れを例にメッシュの感度解析を行ってみます。メッシュ数によって再付着点(図の矢印の位置)の予測がメッシュサイズによってどのように変化するかを調べます。

ステップの高さをHとしたときダクトの高さは2H、計算領域の長さは11Hとします。Re=200とします。Hの分割数を4,8,16,32と変えて計算してみます。再付着点の位置は壁面から第1メッシュのセル中心で長手方向の流速成分の符号がマイナスからプラスに変化する位置の座標として算出します。

感度解析の例(バックスステップ流れ)

感度解析の例(バックスステップ流れ)

このとき再付着点の計算値とメッシュ数(Hの分割数)の関係をまとめると下のグラフのようになりました。この結果から16分割以上にメッシュ数を増やしても計算精度は向上しないことがわかります。メッシュ数の増加につれ、計算時間は急激に増加しますので16分割以上の計算を実施してもコストに見あう精度向上は望めません。

このような検討をおこなうためにはメッシュ数を変えた計算を最低3ケース実施することが必要です。使用している流体計算法の空間精度(1次、2次など)がわかっている場合は、メッシュ数によって結果が変動している場合でも、収束値を外挿して予測する手法もあります。

いざ計算をはじめたものの、いつになったら計算が終了するのか途方にくれたことはないでしょうか。いつでもこのような感度解析が可能かどうかはわかりませんが、本番の計算に入る前に試みることをおすすめします。

再付着点の計算値とメッシュ数(Hの分割数)の関係

再付着点の計算値とメッシュ数(Hの分割数)の関係

流体計算の基礎知識を含め、流体計算をおこなうための注意点やヒントのご紹介は下記よりご参照ください。