公差の自動計算で調整を最小化! 品質・コストの改善方法

CADで賢く公差設定

製品製造に欠かせない「公差」、正しく設定できていますか? 過去の値をそのまま適用したり、ワーストケースの積み上げ計算だけで評価したりなど、適切な公差設計ができていないと品質やコストに悪影響を及ぼす可能性があります。

そこで今回は、公差の重要性とCADを活用したチェックツールについてご紹介します。

この記事を詳しく解説した資料があります

なぜ「公差」が必要なのか?

そもそも、設計において「公差」はなぜ必要なのか? それは製造工程や測定で生じる誤差を許容するためです。

例えば設計で「100mm」の寸法が指定されている部品であっても、実際に作成される部品は100.1mm、99.05mmといった具合に製造時に生じる誤差によりばらつきが発生します。加工方法によって誤差の大きさは異なりますが、もし「ぴったり100mm以外の寸法は許容しない」となると、加工の難易度は非常に高く、部品の不良率も多くなります。

そこで、設計者が意図した寸法や形状からどの範囲までばらつきを許容するかを定めた「公差」が必要になります。設計段階で許容するばらつきの範囲を公差により設定しておくことで、要求される精度の範囲で作られたものを合格とみなし、製品の不良率をコントロールできます。

製造時に生じる誤差を想定し、一定のバラツキを許容する「公差」を設定して不合格とする割合を調整

適正な「公差」とは?

製品製造において公差は製品の品質、コスト、納期に影響を与えます。適正な公差設定ができていないと、不良品発生、コスト増加、納期遅延などの問題を引き起こす可能性があります。

設計図面で指示された寸法・形状で製造できるよう公差を厳しくすると、図面どおりに作られた部品のみが合格となりますが、許容範囲から外れた不良の数が増加します。また、高い精度で製造するために加工コストも増加します。

反対に公差を緩くすると、部品の不良率は低下しますが、合格部品のばらつきが大きくなります。それにより製品内で各部品のバラツキが積み重なることで組み付け位置からずれてしまい、組み立て時に部品の干渉やガタつき、ひずみが発生するといった製品不良を招き、現場での調整や作り直しといった対応が必要になります。

適正な公差が設定されていないと不良によるコストが増加

公差設定は製品の品質や不良率など、一つの問題に着目しただけでは不十分です。製品の品質を保持しながら部品の製造、製品の組み立て、いずれの問題に対しても配慮したバランスの取れた公差設定を行うことで品質を向上しながら製造や組み立て現場のコストを削減できます。

製造コスト、不良率など、さまざまな視点で考慮した公差設定により品質を向上、コストを低減

公差チェックでQCD改善

製品品質の向上と不良品の削減

公差を設けチェックすることで、品質とコストのバランスの取れた設計が可能になります。例えば、製品組み立て時の関連部品の中で累積公差をチェックすることで、製品内で重要となる寸法が保持されているか予測し、組み立て時に失敗の少ない公差を検討できます。

また、購入品や加工が難しい部品など変更できない公差を考慮しながら製品全体で公差許容範囲を設定することで、製品の不良率も低減できます。

製品内の関連部品に定義されている公差をチェックすることで製品全体でバランスの取れた公差を検討できる

コスト削減

適正な公差設計は不良品の抑制だけでなく、部品の加工コスト削減につながります。必要以上に厳しい公差設定は、部品の加工精度を高めるために高価な加工機や工具が必要になり、加工コストを増加させてしまいます。公差チェックにより必要な精度に合った適正な公差を設定できるため、コスト削減ができます。

海外で通用する図面

近年、製品の製造を海外へ委託するケースが増えています。しかし、国内で問題なく製造できていた製品が、海外で製造すると不良になるケースがあります。これは、国内の工場では公差設計が不適正であっても、熟練工や高い調整技術によってカバーされていましたが、海外では図面どおりにしか作られなかったためです。

設計段階で公差をチェックし、作り込みを行うことで適正な寸法・公差が指示され、海外でも通用する図面を作成できます。

現場で行われる公差設定

品質やコストに影響を及ぼす公差設定ですが、こうした問題に対した考慮せずに公差を決定している現場も少なくありません。

近年は特に製品構造の複雑化に伴い計算内容も複雑化していることに加え、公差に関する知識やノウハウを持つ熟練の技術者が減少していることもあり、過去製品の公差をそのまま採用したり、勘を頼りに公差を決めてしまったりというケースがあります。

公差をCAD上で計算

日々の業務に追われ、複雑な計算に時間を取れない設計者が公差設計に取り組むには、CAD上で利用できる公差チェックツールが有効です。手計算では困難な複雑な公差計算やチェック作業を自動で行えるようになり、効率的かつ正確に公差を設定できます。

CAD搭載の公差チェックツール:TolAnalyst

「TolAnalyst」は、SOLIDWORKS Proffesional・Premiumライセンスに含まれている公差チェックツールです。各部品に3Dアノテートで付加された公差を基にアセンブリでのバラツキの累積と影響の強さ(寄与率)を計算し、3Dソリッドモデルに対して手計算では困難な幾何公差も考慮した公差計算に対応できます。

対象寸法をモデル上で指定して公差を自動計算

SOLIDWORKS搭載のTolAnalystで公差解析を極める!

アドイン製品の公差チェックツール:TOLERANCE JAPAN(TOL J)

CADにアドインして使用できる公差チェックツール「TOLERANCE JAPAN(TOL J)」は、3Dモデル上の寸法、公差を取り込み、公差計算シート上で素早く計算結果を確認できます。結果に目標値を設定することで、寄与率および係数を考慮しながら目標値を満たす改良公差を関連する寸法に自動で割り振り、モデル上の3Dアノテーションへ反映させることができます。

公差に苦手意識のある設計者でも簡単な設定で公差計算が行えるため、公差計算の実施率を大幅に向上させ、コストアップや手戻り、品質問題を削減する公差設計をサポートします。

エクセルシートで計算、結果を表示

簡単操作で公差を計算、結果を把握

TOL Jはバラツキの累積だけでなく、幾何公差を考慮し、ガタおよびレバー比(テコ比)を含む複雑な製品の公差設計にも対応しています。簡単なオペレーションで複雑な計算を実施できるため、設計者に負担を掛けず、ストレスなく公差設計が行えます。

寸法選択などの簡単操作で計算を実行

公差のシミュレーション結果から得られる優れたレポート機能により、公差値、公差計算結果、寄与率結果、統計グラフなど、結果を改良前・後で比較して表示し、公差改善の「見える化」を行います。 設計者が公差の適正を判断しやすくなり、適正な公差設計へ導く大きな手掛かりになります。

  • 公差値

  • 寄与率グラフ

モデルに反映するだけでなく、結果を表やグラフで確認

TolAnalystのほか、ハイエンドな公差計算ツールでも基本的な計算方法やワーストケース(Σ計算)、RSS(二乗根和)のみになりますが、TOL Jはカスタマイズした計算方法で公差を評価できます。計算式のほか、特殊な係数を適用するなど自社のノウハウを生かした計算方法で公差を評価できます。

標準的な計算方法の他、自社の持つノウハウから導き出した計算方法でも公差を評価できる

まとめ 動画で分かる公差

本動画は音声オンで再生されます。音量は、動画プレーヤー画面の下部にあるスピーカーアイコンで調整可能です。

さらに詳しく知りたい方へ無料資料請求

本トピックスでご紹介しきれなかった内容を資料にまとめています。もちろん無料!ぜひお役立てください。

自動で公差を割り振れる公差チェックツール

主な内容

  • 公差解析とは?
  • 公差解析の必要性
  • 公差チェックツール