SOLIDWORKSとの連携が強化された「NVIDIA Quadro RTX」

将来のVR導入にも対応可能なパフォーマンスを実現

2019年2月に米国テキサス州ダラスでSOLIDWORKSユーザーの年次イベント「SOLIDWORKS World 2019」が開催されました。イベントでは新しいものづくりのプラットフォームである「3DEXPERIENCE.WORKS」などが発表されました。

イベントでのトピックスとSOLIDWORKSとの連携が強化されたNVIDIAの最新グラフィックス「NVIDIA Quadro RTX」が秘めるものづくりの可能性をご紹介します。

日本の一歩先を行く3Dのものづくり

「XR(Extended Reality)を駆使して、イメージやコンセプトを具体化したモデルを作り、3Dプリンターでモックアップを出力する。精密さや完成度よりも、迅速さとイメージの共有を重視しているのが米国のユーザーの特徴です」と、SOLIDWORKS World 2019の印象を話すのは、SOLIDWORKSユーザーエクスペリエンス シニアマネージャーの大澤美保氏です。

ダラスで開催されたSOLIDWORKS World 2019

XR(Extended Reality)はAR(Augmented Reality)やVR(Virtual Reality)などの関連技術の総称として用いられ始めた言葉です。デジタル空間に作られた3Dデータをシームレスに利用するようになり、ARやVRの相違点はデバイスやユーザーインターフェイスの違いに過ぎなくなってきました。

ものづくりではこれに3Dプリンターなどのマニファクチュアリング技術が加わります。

「3Dプリンターの造形材料も多様化しています。従来までは樹脂系素材がほとんどでしたが、今回は金属材料で造形できる3Dプリンターが出展され、注目を集めていました。3Dデータを金属部品として出力できるので、ものづくりのプロセスを大きく変える可能性を感じました」(大澤氏)。

金属3Dプリンターに注目が集まる背景と最新装置「Metal X」

新プラットフォーム「3DEXPERIENCE.WORKS」が日本の製造業を変える

今回のイベントでは、「3DEXPERIENCE」というコンセプトが打ち出されました。

これは、3D CADやCAE、シミュレーションソフト、PLMなどを統合的に利用してより効率的なものづくり実現しようとするものです。そのための3DEXPERIENCEプラットフォームが「3DEXPERIENCE.WORKS」です。

3DEXPERIENCE.WORKSではダッソー・システムズのソリューションが提供され、実際の製品と全く同じものをバーチャル空間に構築できる「デジタルツイン」の実現も可能になります。さらに、3Dデータの活用の幅を広げるツールも提供されています。

「2018年に再リリースした『SOLIDWORKS xDesign』はブラウザー上で利用できるCADです。PCに加えてタブレット端末などでも利用できるので、製造と設計の融合を進めものづくりのスピードアップと品質向上に貢献できると期待しています」(大澤氏)。

これに加えて、SOLIDWORKS Visualizeで3Dデータのレンダリングを行い、ビジュアル化することで、マーケティング部門などとの連携も強化できます。

「SOLIDWORKS Visualizeでもバージョンアップのたびにパフォーマンスの向上を行っています。しかし、ユーザーが体感するパフォーマンスにはハードウェアの影響、特にグラフィックカードの性能が重要です。Quadro RTXであればVisualize のパフォーマンスを100%引き出してくれると期待しています。SOLIDWORKS Worldの会場ではQuadro RTX 4000を使ったデモが行われており、快適な操作性を見せていました」(大澤氏)。

Quadro RTX 4000によるSOLIDWORKS Visualizeパフォーマンスデモ

Quadro RTXがXRをより身近なツールにする

3Dデータを活用することで、設計・製造からマーケティングまでが連携したものづくりが可能になります。

しかし、VR用のデータ生成が面倒だと感じるユーザーは少なくありません。

その点についてNVIDIAエンタープライズマーケティング シニアマネージャーの田中秀明氏は、「現在アーリーアクセス版を提供しているVRプラットフォームNVIDIA HolodeckではSOLIDWORKS VisualizeからのデータをHolodeck用VRデータに変換するコンバーターをご提供しています。これを使うことで、設計で作成した3DデータをVRデータに手間をかけることなく変換することが可能です」と、よりVRが身近な存在になり、活用されるものと期待を示します。

中間ファイルを経由してHolodeckにデータ変換が可能

設計工程で手軽にVRが利用できるメリットは大きなものがあります。例えば、デザインレビューをVR空間でできるので、複数拠点があるメーカーなら、関係者の移動コストと時間を大幅に削減することができるようになります。

また、設計者がVRでアイデアを試すことによる品質向上も大きく期待できます。海外に拠点があったり、海外メーカーとコラボレーションしたりする場合でも、VRであればよりスムーズなコミュニケーションが可能になります。

  • SOLIDWORKS WorldでのHolodeckデモ

  • SOLIDWORKS VisualizeからHolodeckにデータを取り込んだ例

VR空間のデジタル・モックアップが距離と職能の差を埋める

モデリング、シミュレーション、マニファクチュアリングをシームレスに行うことができるXRの導入は、日本のものづくりが生き残るためには避けることはできません。

「SOLIDWORKS Worldは今年が最後になり、来年からは3DEXPERIENCE Worldとして新しくスタートします。

SOLIDWORKSは、世界のものづくりのニーズに合わせたソリューションをこれからも提供していきます。3DEXPERIENCE.WORKSは、設計と製造の統合した新しいものづくりのプロセスをサポートしていきます。

さらにQuadro RTXにより、スムーズなビジュアル化を行うことで、バーチャルミーティングやプロモーションなどさらに進んだトータルなものづくりが可能になると期待しています」(大澤氏)。

新しいものづくりのプロセスに必要なビジュアル化を実現するグラフィックカードの存在感は、今後ますます高まっていくと予想されます。バーチャルミーティングなどの導入も見据えたパフォーマンスの有無が今後の機種選定のポイントになりそうです。