金属3Dプリンターに注目が集まる背景と最新装置「Metal X」
3Dプリンターブームに続く、製造現場で新たに注目される金属3Dプリンター
2009年、ストラタシス社が保有していたFDM方式(熱溶解積層法)の特許満了を皮切りに、有名企業が続々と3Dプリンター市場に参入。2013年ごろから、3Dプリンターブームが巻き起こった。次々に廉価版が開発され、ついには家電量販店で個人が購入できるまでに至った。あれから5年以上がたち、一時はメディアに大きく取り上げられていた3Dプリンターブームは、ひとまず収束を迎えたといえる。
ところが今、製造業界では金属を造形する「金属3Dプリンター」に注目が集まっている。造形技術の発達や幅広い材料に対応可能となったことで、プラスチックによるものづくりのハードルが下がったように、金属でも同様の現象が起きると予想されている。
2千万円台の金属3Dプリンターが登場
一般的に、金属3Dプリンターは8千万円以上かかるといわれている。金属造形で一般的な「レーザー焼結方式」を採用している装置は、万一の粉じん爆発に備えて防爆設備が必要となり、その設備をそろえることで導入コストが上がってしまうからだ。
しかし、2018年12月より日本国内への出荷が開始されたマークフォージド社の「Metal X」では、従来の高額な設備コストが2千万円台までに下がった(注1)。この価格を実現できた理由には、「FDM方式」の採用がある。FDM方式では金属粉末を使用しないため、防爆などの付帯設備を必要としない。また安全な金属造形を可能にしただけでなく、既存のプリンターよりもはるかに小さな筐体サイズを実現した。
Metal Xは575×467×1,120mm、75kgと従来よりもコンパクトサイズ
- (注1)実際には別途脱脂用ウォッシャーと焼結用の炉が必要。
FDM方式による金属造形の工程
FDM方式は、従来プラスチック造形を目的としている。そのためノズル温度が高くても300℃までしか上がらず、ステンレスの融点には到底届かない。そこでMetal Xは次のような工程を経て金属パーツを作成する。
- 8割ステンレス、2割ポリマーやワックスから成るフィラメントで形状を作成する
- ワックスを取り除くために有機溶剤に1日つけて脱脂後、乾燥させる
- 焼結処理を行い、強固な金属パーツに仕上げる
- 自然な温度に下がった後、約97%の密度のステンレスパーツが完成となる
焼結後のパーツサイズは焼結前より約20%縮小する
左:フィラメントでできたパーツ。右:焼結後の金属パーツ。焼結後のパーツは約20%縮小する。完成後に通常の金属加工を施すことも可能だ
Metal Xの精度・使用用途は?
約97%の密度のステンレスパーツが完成することから「Metal Xはステンレスパーツを造形できる」といっても差し支えないだろう。
ラティス構造を施すこともできるため、軽量化を行いたいユーザーに向いている。そのほかの使用用途として、治具・金型の生産や小ロット部品・試作品の内製が挙げられる。
仕様
プリント方式 | ADAM |
---|---|
最大造形範囲 | X 300×Y 220×Z 180mm(注1) |
装置サイズ | 575×467×1,120mm |
装置重量 | 75kg |
プリントチャンバー | 加熱式 |
プリントベッド | 加熱、プリントシートは真空シールド、自動レベリング |
電源装置 | 100-240VAC、2400W(20A peak)、IEC60320 Type C20 |
最大パーツサイズ | 250×183×150mm(注2) |
最大パーツ重量 | 10kg |
サポート材 | パーツ材と同じメタル材+セラミックスの剥離層 |
積層ピッチ | 50~200μm |
供給形態 | フィラメント(パウダーバインド) |
材料 | 17-4ステンレス鋼 工具鋼(H13、A2、D2)(注3)、チタン Ti6Al4V、インコネル(IV)625、銅、アルミニウム(6061、7075)など |
ソフトウェア | クラウドベース:データをクラウド保存 |
内部構造・作成機能 | 密封セル 三角 インフィル |
- (注1)焼結後はこのサイズから20%縮小する。
- (注2)成果物のサイズ。
- (注3)今後リリース予定。
- * 造形には本体以外に、脱脂用のウォッシャーと焼結用の炉が必要。焼結用の炉はお客様の要望に合わせて大小お選びいただけます。
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