SoundPLAN劇場 ~音の話~ 第3回 近隣騒音

おとくんが通っている中学校では、運動場のスピーカーの音に対して、近隣の人から苦情がありました。この近隣騒音について、お父さんと会話をする中で、「施設や建物を設計する際には騒音源として想定される音のレベルを推定し、周囲に生活環境があれば、そこへの影響を環境基準やほかの騒音の目安になる数値を下回るように、設計されなければいけいない」ということが分かりました。

おとくんが通っている中学校では、運動場のスピーカーの音に苦情が・・・

最近、学校の運動場のスピーカーの音に対して、近隣の人から苦情があったらしいんだ。

お父さんも前の運動会のとき、スピーカーからの音は気になっていたんだ。特に音楽が適切なボリュームで再生されてないことがあって、これでは近隣の住宅に迷惑がかかるんじゃないかなあって。

でも、いつも運動会やっているわけではないし、小学校や中学校の運動会は地域のイベントでもあるんだから・・・。

こういう音の問題は、両方が満足する解決案というのはなかなかないのが通常なんだ。

では、どうすれば問題が収まるの?

まず、迷惑をかけている側が技術的な手段で解決できれば一番いいよね。今回の場合は適切なボリュームを決めて、それ以上音が大きくならないようにすることが最初にすべきことじゃないかな。それに、これは学校の建設時や音響設備が新設されるときに十分考慮されることだけど、スピーカーの配置と向きを最適にする。また、そういう設備がしっかりメンテナンスされていることも大事だね。設備が老朽化して、スピーカーの音が割れていないかとか。スピーカーの向きが変わっていないかとかね。

そういえば、運動会の全体体操のときの音楽が少し"バリバリ"鳴ってたような気がする。

設備の問題もあるかもしれないけど、使う音源そのものの音質が悪かったりする場合もあるよね。また、音源の音のレベルがまちまちだと、ボリューム設定も難しいし、その辺は事前に十分に確認しておくことが必要だね。

技術的な問題をちゃんと手当てしても、苦情がなくならない場合はどうすればいいの?

ここからが、難しいところなんだ。まず、技術的に対処したことで、改善されたことを住民の人に理解してもらわなければいけないね。そういう対策を施したという事実で、苦情を言う側の心理はかなり緩和されると思うよ。もし、苦情があったときにおとが言うように、「地域のイベントだから・・・」というふうに現状を受け入れてもらおうとすると、問題がこじれていく可能性が大きいんだ。まず、迷惑をかけている側が現状を把握して、第1段階として打てる手を打つことが肝心だね。

そうか。騒音を出している方から、まず対策のアクションを起こさないといけないということだね。

それでも苦情が収まらない場合は、妥協点を見出さないといけない。両方がその妥協点に歩み寄るということだね。スピーカーの音を抑えても、拡声として機能する最低限のレベルを見極めて、それを騒音として受ける側にも理解してもらうことだろうね。学校の騒音とは違うけど、3年ほど前に、噴水で遊ぶ子供の声がうるさいと近所の住人が訴えて、裁判所は子供の遊び声が環境基準を超えているとのことで、噴水の使用差し止めの決定をしたんだ。

へえー、そんなことがあったんだね?

この裁判で話題になったのは、「子供の遊び声が果たして騒音か」ということだった。当たり前のことなんだけど、音の特徴としていったん音が発生すると、ある範囲の空間に音は伝搬していく。そこに、さまざまな人が生活している場合、人の感覚には幅があるから、気になる人はとても気になるし、一方で全然気にならない人もいる。音のレベルだけでなくて、その音の時間的な特性(突発的なのか緩やかに変動するか)でも受け手側の印象は違うし、そのような物理的に数値として捉えられる音以前に、むしろその音の心理的な影響の方が問題なんだ。音源(子供の声、楽器を練習する音、航空機騒音・・・)によって、その音を受け取る側の心理や経験、価値観までもが影響してくるから、数値だけで計れないのが難しいところなんだ。

その裁判の場合は、数値以外の心理的な面は考慮されたの?

騒音の場合は、問題となった騒音を再現させて正確な測定を行うことが難しいことや今言ったような数値だけでは問題が解決しないこともあって、「受忍限度」という影響を受ける側が社会生活上、受忍すべき程度のことかどうかで判断されるんだ。このケースも受忍限度を超えると判断されたんだろうね。

でも、公園で子供が大声で遊ぶことはよくあることなのにね。

そうだね。裁判の判決の経緯については、お父さんも詳しく知らないけど、確かこの裁判の後、公園の作り方に問題が発展していったんじゃないかな。

公園の計画自体に騒音の問題が起こる可能性があったの?

さっき言ったように、音は音源の周囲に伝搬していくから、何か新しい施設や建物を作るときは、必ず騒音源として想定されるものの音のレベルを推定して、周囲に生活環境があれば、そこへの影響を環境基準やほかの騒音の目安になる数値を下回るように、設計されなければいけいない。このケースがどうだったか分からないけど、音環境設計という視点と共に、施設や建物の設計思想や意図についても、事業者から住民へ丁寧で明解な説明がなされなければならないんだ。でも、今欠けているのは音のレベルだけでなく、音源の意味的要素が心理面にどう影響を与えるかといった視点だと思うんだ。数値化されないために設計という行為に反映されにくいし、まだまだ研究をしないといけない分野だと思うけどね。

新しい施設ができるときは、それを建設するときの騒音は問題になるけど、使われ始めたときどうなるかという考えがおよばないんじゃないかな。

確かにそうなんだ。設計図面にも表せないからね。今は人々の騒音に対する意識も高いし、事業者・施工者側も1999年に施行された環境影響評価法に従って、ある程度の規模の公共工事に対しては、事前のアセスメントが義務付けられているから、このような問題は少なくなってきてはいると思うけどね。

前に総合学習でやったイヤークリーニングとか、お父さんが教えてくれたサウンドウォークとか、小さい頃からもう少し音に対して意識する経験があればいいと思うな。

そうだね。音響のことを研究している大学の先生が主導して、音響教育という領域が最近盛んになっているんだ。急には難しいけど、そういう地道な努力を継続して、一般の人にも広く音に対する知識と意識が広まるといいね。

資料提供:株式会社 小野測器

株式会社 小野測器 身近な計測-近隣騒音

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日常は音に満ちあふれています。そして、出す人・聞く人各々の立場により異なる感情を巻き起こします。特に社会(経済)活動を通じて発生する音は直接的にその恩恵を被る人たち以外から「騒音」というレッテルを貼られ、時に争いが生じることさえあります。このような事態を防ぐためには、あらかじめ騒音推計を行い、適切な判断・手段により対策を講じる必要があります。

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