既存概念にとらわれないトポロジー最適化とは?

ある自動車メーカーの新型モデルでは、先代モデルと比べて10%(パーセント)を超える軽量化目標を達成するために、シミュレーション技術を活用しました。

その活用したシミュレーション技術の一つが「トポロジー最適化」。このトポロジー最適化の考え方と軽量化の成功要因について探ってみましょう。

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シミュレーションを繰り返しながら最適案を見出すトポロジー最適化

製品の形状を決める段階で利用される構造最適化。この構造最適化を実現するには、次の三つの方法があります。

その中の一つ、トポロジー最適化の基本的な考え方は「製品の利用シーンで想定される構造的な制約、荷重・拘束条件の下で、設定した設計空間(材料分布可能な領域)において、最も効率のよい材料の分布を見つけること」です。

簡単に言うと、ある条件の下で不要な材料を削って最適な設計案を見出していく方法です。トポロジー最適化の実行過程の中では、シミュレーションの繰り返しと効率的な解探索が行われます。

今後、3DプリンターやAM(Additive Manufacturing)をはじめとする生産・加工技術のさらなる進歩に伴い、トポロジー最適化利用の可能性はますます拡大するものと考えられています。

構造最適化を実現するシミュレーション技術の三つのアプローチ

  • 寸法最適化(パラメーター変更など)

  • 形状最適化(境界の変更)

  • トポロジー最適化(最適な形状)

最適化説明
寸法最適化構造物の寸法を設計変数として最適化する方法。設計変数の数と性能向上に限界がある。
形状最適化構造物の外形形状を設計変数として最適化する方法。詳細設計案が決まった段階で特に有効だが、穴の数の増減などは基本的に難しい。
トポロジー最適化
(位相最適化)
構造物の位相を設計変数として最適化する方法。最も自由度の高い構造最適化手法で、既存概念にとらわれない設計案の導出が可能。

トポロジー最適化にはまず、既存概念からの脱却が必要

トポロジー最適化を使ううえで重要なことは、いまある設計や既存概念にとらわれずに、可能な限り設計空間を広げることです。一般的に機械製品・部品は、ある特定の目的を達成、実現するために概ね決まった形状をしていますが、この形はあくまで、設計者のこれまでの経験をもとに「最適と思われる」形状をしているだけかもしれません。

次に重要な点は利用シーンを十分に想定しながら、体積や重量、強度、剛性、振動、疲労などの目的や制約の組み合わせを適切に設定することです。この組み合わせや設定に応じて、得られる答えは多種多様なものとなってきます。あらためて、必要かつ十分な要件を見直して整理し、既存概念にとらわれない新しい形状、設計案を創造、導出してみてはいかがでしょうか?

トポロジー最適化には発想を変えることが必要

トポロジー最適化成功の秘訣 ~フロントローディング×最適化~

トポロジー最適化を利用して、軽量化に成功した自動車メーカー。その成功には、次の二つの要因が考えられます。

  1. 設計が固まっていない、より製品開発の早い段階にこそ軽量化の余地が多く残されていた。
  2. 自由度が高い状況の中で、効率的に解探索や試行錯誤を行えた。

次のグラフをご覧ください。製品開発において、設計の自由度とコストの関係性をグラフに表しました。反比例の関係になっていることが分かります。構想設計の段階では、さまざまな案を検討できるため、設計の自由度は高いと言えます。その反面設計のコストは低く(安く)て済みます。

つまり、構想設計の段階でトポロジー最適化を取り込むことで、幅広い可能性の中で、シミュレーションを繰り返しながら軽量化に最適な案を見出せたことが成功要因だと言えます。

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