重量と性能のトレードオフ問題を解決する環境づくり

前回はトポロジー最適化についてご紹介しました。トポロジー最適化は企画、構想設計など上流工程での形状検討において、大きな効果を発揮する手法です。実際の製品開発工程では、トポロジー最適化で得られたアイデアを基に、より現実的な製品形状へ落とし込みを行います。

今回は、製品形状への落とし込みの際に発生するトレードオフ問題を克服し、大幅な軽量化に成功した事例からエッセンスを抽出してご紹介します。

既存概念にとらわれないトポロジー最適化とは?

トレードオフ問題を解決するパラメーター最適化

トポロジー最適化で得られたアイデアを基に、より現実的な製品形状へ落とし込んでいく段階で用いられるのが「パラメーター最適化(寸法最適化)」です。パラメーター最適化では、次のような境界条件、目的、制約条件を設定します。その後、厚み、長さ、穴径などの寸法を設計変数とするかを定義します。

  • 境界条件:荷重・拘束など
  • 目的(要求性能):質量を最小化するなど
  • 制約条件:たわみ量は2mm(ミリメートル)以内
  • 設計変数:形状を定義する寸法(パラメーター)

トレードオフ問題は多数の要素が絡むため、複雑…

このように、パラメーター最適化は実製品に近い形状で設計変数の範囲も指定できるため、そのまま採用しやすい製品形状を見つけるのに有効な手段といえるでしょう。しかし、要求性能は機能、強度以外にもさまざまあり、各要素が複雑なトレードオフ関係であるケースが多くあります。また、それぞれの制約条件が目的に与える影響度(寄与度)も異なるためとても複雑です。

それぞれの目的達成度が、その他の目的の達成度に影響を与える

ある自動車メーカーは、どのようにしてトレードオフ問題を解決したのか?

前回までの10%(パーセント)の軽量化に成功した自動車メーカーの話に戻りましょう。限られた時間の中で、ボディの軽量化を進めていくには、実際に次のような多様な要求性能を同時に満たす必要がありました。

要求性能

  • 衝突性能
  • 強度・剛性性能
  • NVH性能
  • 歩行者保護性能
  • 操縦安定性

CADデータを作る前にシミュレーション可能な製品モデルを作成

軽量化と要求性能という相反するトレードオフ問題を解決するために、このメーカーでは、従来の先行開発・試作・量産開発というプロセスを根本的に見直しました。具体的には、先行開発や試作プロセスを圧縮して、量産開発の初期段階(設計・CADデータが作られる前)にシミュレーション可能な製品のモデルを作ることにしました。このモデルは、パラメトリックに形状や属性値を変更可能なシミュレーション専用のモデルです。また、このモデルの計算実行、結果処理作業のテンプレート化・自動化を行い、より数多くの(何万回もの)シミュレーションを繰り返し実行可能な環境をあわせて整備しました。

結果として、昨今の計算機やソルバー性能の向上を追い風に、大量・大域的な計算結果データベースを作成し、それを基に重量と性能のトレードオフ問題を解決する環境を実現しました。この環境を活用することで、軽量化目標の達成と同時に迅速な意思決定が可能となり、開発期間を半年以上短縮することにも成功しました。

トレードオフ問題解決のための意思決定支援

事例からエッセンスを抽出し、手順としてまとめます。このメーカーは次の手順でトレードオフ問題に対処しました。

製品開発の初期段階では、情報の精度が低く、重要な意思決定をすばやく行うことが難しいといわれています。また、熟練した設計者が持つノウハウを「見える化」し未熟な設計者へ引き継ぐことは多くの企業で課題となっています。ご紹介したエッセンスを参考にしていただき、ぜひ、製品の軽量化とトレードオフ問題の解決にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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