多関節ロボットをはじめとする生産設備のA0図面を高速・高精度で出力。大量印刷に耐え、ランニングコストの削減も

株式会社大富士電機製作所

自動車組み立て用のロボット溶接システムや、コンクリートブロックの3D(3次元)形状測定装置など、数多くの生産設備、計測装置を開発・製造する株式会社大富士電機製作所。受注する製品の99%は、個別受注のオーダーメイド品。量産品と違い、手戻りが発生すれば、損失コストの影響も大きい。そのため、設計段階において機械の動作や設置スペースなどをきちんとシミュレーションする作業が不可欠だ。製品によっては1台当たり数百枚にも及ぶA0・A1サイズの大判図面を高速・高精度で出力するため、大塚商会を通じて広幅複合機を導入。ランニングコストの削減にも成功した。

ロボットアームから、搬送装置、制御システムまでをインテグレートしたオリジナル生産ラインを提供する

導入事例の概要

導入の狙い

  • 既存機の老朽化によるリプレース
  • 大判図面の出力頻度の増加に伴う高速出力へのニーズ
  • 64bit OSや各種ソフトウェアへの対応

導入システム

  • 広幅複合機『Oce PlotWave 300 MF2R』
  • 3次元CAD『Autodesk Inventor』
  • 解析ツール『SolidWorks Simulation』

導入効果

  • A0サイズ図面の出力時間の大幅短縮
  • 詳細な図面を再現する印刷品質の向上
  • 用紙代、トナー代、メンテナンス保守費用など、ランニングコストの削減

顧客ニーズに合わせた個別受注の生産設備を開発・製造

東京都板橋区の株式会社大富士電機製作所(以下、大富士電機製作所)は、各種製造業者向けに生産設備、計測装置などを設計・製造する独立系メーカーだ。1965年設立と40年以上の歴史を誇る。

従業員18名と小規模ではあるが、その取引先には松下冷機、安川電機、三菱重工業、三菱自動車工業など日本を代表する大手メーカーが名を連ねる。

生産設備部門では、自動車組み立て用のロボット溶接システムや冷蔵庫の自動組立システムなどを手掛け、計測装置においてはコンクリートの3D(3次元)形状測定装置、自動車部品の3D形状測定装置など、取り扱い製品は多岐にわたる。

その他、各種コンベアなどの搬送装置、コンピューターとFA(ファクトリーオートメーション) LANによる生産管理システムなども取り扱う。メカニカル(機械系)、エレクトリカル(電気系)のそれぞれにおける広範で高度な技術をインテグレート(融合)して、複雑な工程を高速かつ正確に処理する生産設備を世に送り出している。

「当社製品の99%は、世界に一つしかない特注品です」と語るのは、代表取締役社長の小谷野 司氏。顧客のニーズに沿った製品をゼロから作り上げるには、斬新な発想と、それを形に仕上げる技術力が要求される。40年以上にわたって積み重ねた経験とノウハウが、大富士電機製作所の看板を支えている。

「特に溶接用を中心とする多関節ロボットの開発・製造には自信を持っています」と小谷野氏は胸を張る。六つ以上の関節が動くロボットアームを備えた生産設備は、量産型の生産設備では不可能な、複雑な工程にも柔軟に対応する。大富士電機製作所の強みは、ロボットアーム単体だけでなく、それを動かす頭脳(ソフトウェア)、アームの先で繊細な加工を可能とする手(ロボットハンド)、加工された製品を搬送するコンベアまで、ロボット生産設備に必要な全てをインテグレートできる点にある。

設計担当者は機械系7名、電気系2名と少数精鋭。その優秀なエンジニアが描いた設計図面を元に、1台当たり1,000~2,000点にも及ぶ部品を製作し、組み立て、顧客先工場への据え付けから最終調整、アフターケアまで担う。こうしたトータルサポートへの安心感も大富士電機製作所が多くの取引先から選ばれる理由だ。

2008年9月のリーマンショック以来、日本の製造業が生産拠点を人件費の安い新興国など海外に移転させる動きが進み、国内製造業の空洞化が加速した。大富士電機製作所の主力製品の一つである自動車組み立て用ロボットシステムも、国内からの受注はじりじりと減少している。

しかし、「これまでFA化が進んでいなかった大型発電所施設や食品製造工場、医療機器製造など、未開拓の領域がまだまだ残されています。新たな市場を切り開きながら、今後も成長を図っていきます」と小谷野氏は抱負を語る。

代表取締役社長 小谷野 司氏

「『Oce PlotWave 300 MF2R』は、操作方法が画面に指示されるので、使いやすい点も魅力ですね。出図速度が2倍近くも速くなったことは、非常に大きな効果です」

高速・高精度の出図を求めて、最新鋭の広幅複合機を導入

大富士電機製作所が製造するロボットシステムなどの生産設備や計測装置は、1,000~2,000点もの部品を組み合わせる複雑な構成のため、設計図面も1台当たり数百枚から数千枚と膨大な数に上る。

細部の図面についてはA2・A4サイズの用紙で出力するが、大規模なシステムが多いため、A0・A1サイズの大判図面の数も膨大だ。大判図面の出力だけでもシステム1式当たり100枚前後という。

しかも、「自社の生産工程用、管理用のほかに、クライアントへの提出用など、1台のシステムで平均5~6セットの図面を用意しなければなりません。A0・A1サイズの大判図面だけで、システム1台当たり500~600枚は出図する計算です」と小谷野氏。

設計が見直されれば、そのつど図面を改版する。改版が2度、3度と行われれば、出力すべき図面の数は2倍、3倍に膨れ上がる。

そうした大判図面の出力のため、大富士電機製作所では20年ほど前から、A0・A1サイズの出図が可能な広幅複合機を活用してきた。

20年の間に世代交代を重ね、5台以上の広幅複合機を試してきたが、CADの設計データを取り込んでから出図に要するまでの時間が長く、しかも印刷の精度にも満足いくものはなかった。

紙代やトナー代、メンテナンス・保守費用などのランニングコストが割高な点も不満だった。

「大量に出力するだけに、わずかな単価の引き下げでも、大きなコスト削減効果が期待できるはず」

そう考えた小谷野氏は、従来の広幅複合機が老朽化したのを機に、3次元CAD『Autodesk Inventor』や解析ツール『SolidWorks Simulation』の導入を通じて取引関係があった大塚商会に現状の課題を相談。大塚商会からの提案をもとに2010年6月、広幅複合機『Oce PlotWave 300 MF2R』を導入した。

出図スピードが約2倍に。ランニングコストも削減

『Oce PlotWave 300 MF2R』は、省スペース、省電力、優れた耐久性など、さまざまなメリットを備えた広幅複合機だ。プリンター、A0コピー、高品質カラースキャナーの三つの機能を備えており、ロール用紙交換の際にかがむ必要がない筐体デザインなど、使いやすさにも定評がある。

小谷野氏は『Oce PlotWave 300 MF2R』を選んだ決め手の一つとして、「64bitOSに対応していること」を挙げている。

膨大なデータ量となる3次元設計の世界においては、一般的に32bitOSではなく高速・大量処理が可能な64bitOSを使うのが一般的だ。しかし、A0サイズが出力できる広幅複合機の中で64bitOS対応のものは少ない。『Oce PlotWave 300 MF2R』は、数少ない対応機種の一つだった。

一品一様の製造工程を可能な限り効率化するため、20年以上前からCADを有効活用している

しかも『Oce PlotWave 300 MF2R』は、それまで大富士電機製作所が使用していた広幅複合機に比べ、約2倍の速さで出図できる。データ量の大きな設計図面はPCから複合機に転送されるまでの時間が長くなりやすいが、パワフルな処理能力で高速転送が実現したのだ。

「出図までの待ち時間が大幅に短縮され、必要な図面がすぐ出てくるようになったことには非常に満足しています」と小谷野氏はほほ笑む。

出力される図面の画像品質が向上したことも大きな成果だ。製品と共に図面をクライアントに納品する同社にとって、見やすく分かりやすい図面の提供は顧客サービスにも直結する。

「ランニングコストについても、以前より安くなりました。大塚商会さんと日本オセさんの努力には感謝しています」と小谷野氏は満足そうに語る。

3次元CADでシミュレーションを繰り返し、手戻りのリスクを回避

大富士電機製作所は、今後もITやシステムの活用を通じて、生産性やサービスの向上、コスト削減などに積極的に取り組んでいく考えだ。

目下、検討しているのは3次元CADによる設計データを立体出力できる3Dプリンターの導入である。

既に述べたとおり、大富士電機製作所が設計・製造する生産設備や計測装置は、99%が世界で唯一の特注品である。しかも、「通常なら1~2年かけて開発する機械を、早いものなら2~3カ月、遅くても半年以内に製品化しなければなりません。その分、開発を進めるうえでのリスクも大きいのです」と小谷野氏は説明する。

開発途中や製造後に問題が発覚すれば、作り直しをせざるを得ない。その分の追加コストは同社の負担だ。そうしたロスを減らすため、大塚商会から導入した『Autodesk Inventor』や『SolidWorks Simulation』で何度も動作をシミュレーションし、不具合や干渉を検証しながら製品を作り込み、効果を上げている。

データ転送スピードが5倍近く速くなり、出図待ちのストレスがなくなった

顧客と完成イメージを共有することも大切だ。でき上がった後で、取引先から「こんなはずではなかった」と言われてしまったら、作り直しのコストや時間以上に、同社の信頼にかかわる。

A0・A1サイズの大判図面を提供することには、「取引先に少しでも明確な完成イメージを伝えたい」という狙いも込められている。また3次元のモデルやアニメーションを、クライアントにプレゼンして、よりイメージを分かりやすくする工夫をしている。

「さらに3Dプリンターを使って完成品のイメージに近い立体モデルを提出できれば、手戻りによるロスを極力減らすことができます。現在、大塚商会さんに導入提案を依頼しています」と小谷野氏は語る。

また、製品のアフターメンテナンスまで請け負っている大富士電機製作所では、これまで納品してきた全ての製品の膨大な図面を保存している。

ほとんどの図面が電子化されているが、過去の図面データは最新システムでは開けないものも多い。そうした図面管理のために、現在も旧式のシステム環境をハードウェア・ソフトウェア共に保持している。

しかも同社は、そうした過去のデータも含めて、全ての図面データが管理できるデータベースシステムを独自に構築している。新旧のシステムとデータが混在している状況でも、業務に大きな支障はないという。

こうしたユニークな取り組みと、大塚商会の優れたソリューション能力とが融合することによって、大富士電機製作所の情報化や業務の効率化は、今後ますます進展するだろう。

小谷野氏は大塚商会について、「3次元CADやCAMなど、個別のソフトウェア、ハードウェアごとのご提案には満足していますが、システム全体のパフォーマンスはその組み合わせによって大きく異なるものです。これからは、単体のソフト、ハードだけでなく、トータルな組み合わせによるベストパフォーマンスのご提案を期待したいですね」と語る。

さまざまな技術やノウハウをインテグレートして、ベストパフォーマンスの製品づくりを実践している同社ならではの要望であるといえよう。

株式会社大富士電機製作所

業種機械製造業
事業内容生産設備・計測装置の設計・製造、ロボットの設計・製造・保守 ほか
従業員18名(2010年9月現在)
サイトhttp://www.ohfuji.co.jp/