HP製ワークステーションで見るTwinmotionの美麗リアルタイムレンダリング(動画あり)

Windows 10 Pro for Workstationsでパワー推進

Windows 10 Proはモダンワークプレースの基盤として設計された、より効率的に業務をこなすためのツールを搭載しています。

株式会社アルファコックス

建築分野において、需要が急速に増しているリアルタイム3D没入型建築ビジュアライゼーションソフトウェアTwinmotion。しかし一方で、「どれくらいの実用性があるのか」「どのようなスペックのマシンなら快適に動作するのか」といった疑問の声も少なくない。

そこで今回は、3Dモデリングソフトウェアとして人気の高いSketchUp Proの日本総代理店であり、2020年3月にはリアルタイム3D没入型建築ビジュアライゼーションソフトウェアTwinmotionの販売代理店となった株式会社アルファコックスに検証を依頼。HP製ワークステーションを用いて性能比較を行ってくれた。

Twinmotionを快適に使うにはハードウェア環境が重要

昨今、リアルタイムレンダリングの実用性を鑑みてTwinmotionの導入を検討している企業も多いのではないだろうか。しかし、ここで注意すべきなのが導入するマシン選びだ。

技術部 プロダクトマネージャーの南初子氏(以下、南氏)は、「ビジュアライゼーションソフトの中でも、Twinmotionは比較的低価格で導入することができます。しかし一方で、快適にお使いいただくためには、ハードウェア環境を整えていただく必要があり、その中でも特にGPUの性能が重要です」と語る。

その理由は、GPUの性能が低いと編集画面であるビューポートの描画品質が低品質に抑えられてしまうため。プロジェクトを編集中にリアルタイムレンダリングの効果が得られなくなり、実際にコンテンツをエクスポートするまで、その仕上がりの状態を確認することができなくなってしまう。また、クラッシュなどの原因にもつながりかねない。

モデルの大きさや、どのようなコンテンツを制作するかによって必要な動作環境が変わってくるが、南氏は「対応するGPUのベンチマークが公開されているので、まずはそちらを参考にしてください。現在開発が進められているパストレーシングの実装を考慮すると、最近のNVIDIAのGPUであれば、製品名に『RTX』がついたものを選定するのがいいでしょう」とアドバイスする。

技術部 プロダクトマネージャー 南初子氏

「快適にお使いいただくためには、ハードウェア環境を整えていただく必要があります。その中でも特にGPUの性能が重要です。最近のNVIDIAのGPUであれば、製品名に『RTX』がついたものを選定するのがいいでしょう」

GPUだけでなくCPUやメモリーなども含めたマシン選びを

TwinmotionはGPUレンダリングのみで、CPUレンダリングとの使い分けは行えない。しかしGPUだけでなく、CPUやメモリー、そしてストレージもマシン選びの重要なポイントだ。

南氏は「CPUはGPUと同様にベンチマークが公開されています。メモリーはエクスポート時に大きく負荷がかかりますので、モデルの大きさや使い方に合わせてお選びください。また、意外と盲点になりやすいのがストレージです。SSDではデータの読み込みや保存が速くなり、より快適にお使いいただけるのですが、Twinmotion自体が非常に大きなプログラム(Windows:約18GB、Mac:約24GB)なので、例えば256GBのSSDが1枚だけ搭載されたマシンでは、他のCADソフトをインストールすることも考えると、すぐにSSDの容量が逼迫してしまう可能性がでてきます」と語る。

つまりTwinmotionだけでなく、連携もしくは同時利用するソフトウェアによって、スペック面で余裕を持たせることも必要になってくるのである。

Twinmotionのリアルタイムレンダリングを検証

それではここから、HP製ワークステーションを用いたTwinmotionの動作検証について触れていきたい。今回の検証に使用したのは、HP製ワークステーションのウルトラハイエンドモデル「HP Z8 G4 Workstation(以下、HP Z8 G4)」および、エントリーモデル「HP Z4 G4 Workstation(以下、HP Z4 G4)」だ。まずは簡単にスペックを紹介しておこう。

検証用マシンスペック

検証に使用した「HP Z8 G4」(写真右)と「HP Z4 G4」(写真左)

HP Z8 G4

  • CPU:Intel Xeon 6246R プロセッサー(3.4GHz、32コア・64スレッド)
  • メモリー:96GB(8GB×12)
  • ストレージ:1TBのM.2 SSD
  • グラフィックス:NVIDIA Quadro RTX 5000

HP Z4 G4

  • CPU:Intel Xeon W-2225 プロセッサー(4.1GHz)
  • メモリー:32GB(8GB×4)
  • ストレージ:1TBのHDD
  • グラフィックス:NVIDIA Quadro RTX 4000

モデルのサンプルには、二つのプロジェクトを利用した。一方は設計者が自身でコンテンツ制作をすることを前提に、ビル1棟のRevitモデルとその周辺約300m四方に簡易モデルを配置したSketchUpモデルをTwinmotion上で統合したもの。もう一方は、少し範囲の広いものをTwinmotionでデザインすることを目的に、東京の増上寺を中心に約1km四方のSketchUpモデルをTwinmotionに取り込んだものだ。

テクニカルサポートの野上佳恵氏(以下、野上氏)は、「2製品ともGPUが優秀なので、極めてスムーズなリアルタイムレンダリングが体感できました。プロジェクトをデザイン中にリアルタイムレンダリングの効果を得るには、描画品質を『高』または『最高』に設定する必要がありますが、2製品のGPUは描画品質を自動設定すると『最高』になります。また、リアルタイムレンダリングも素晴らしかったのですが、もう一つ注目すべきは動作が安定しているという点です。大規模なモデルを一般的なマシンで使用する場合、エクスポート時にスペック不足が原因でフリーズすることがあります。しかし今回検証に用いた2製品は、それぞれ一度もフリーズが発生しませんでした。これだけ安定していれば、エクスポート中にフリーズしていないか何度もマシンを確認する手間が減り、作業効率の向上につながりますね」と語る。

テクニカルサポート 野上佳恵氏

「2製品ともリアルタイムレンダリングも素晴らしかったのですが、動作が安定しているという点にも注目すべきです。大規模なモデルをエクスポートしても一度もフリーズが発生しませんでした。」

モデルチェックやプレゼンテーションに活躍するHP Reverb G2 VR Headset

さらに今回は、VRヘッドセット「HP Reverb G2 VR Headset」を用いた検証も行った。VRヘッドセットを使うと、制作したモデルをより没入感のある3Dコンテンツとして体験できるようになる。しかもHP Reverb G2 VR Headsetは、1眼当たり2,160×2,160ドット表示の液晶パネルとフルRGBストライプによって、超シャープなビジュアル表現を可能としている製品だ。

HP Reverb G2 VR Headsetを着用した野上氏

制作中のモデルチェックやプレゼンテーションに活用

野上氏は「HP Reverb G2 VR Headsetは画質が実に素晴らしく、高画質でモデルを細部まで見られるので、担当者が制作中のモデルをチェックしたり、お客様に対するプレゼンテーションしたりする際にも効果を発揮します。もしプレゼンテーションを前提とした利用の場合は、デバイスを接続するポート類が筐体背面に集中したデスクトップ型ではなく、ケーブル接続や持ち運びが容易なモバイルワークステーションを選ぶのもいいですね」と語る。

建設分野ではQuadroの「VR Ready」搭載モデルがお薦め

リアルタイムレンダリングでは、レンダリング速度を測定することは極めて難しい。そこで今回は、コンテンツのエクスポート時間を測定してみた。計測に際しては、比較用にHP製のゲーミングノートPCも含めてある。

比較用マシンスペック

OMEN by HP 15-dh1002TX

  • CPU:Intel Core i7-10750H プロセッサー(2.6GHz、6コア・12スレッド)
  • メモリー:16GB
  • ストレージ:512GBのM.2 SSD + 1TBのHDD
  • グラフィックス:NVIDIA GeForce RTX 2060

検証の結果は以下の通り。意外にもエクスポート時間に大きな差は見られなかったが、これはTwinmotionがもともとGeForce寄りにデザインされているためだ。

ただし建設分野においてはArchicadをはじめとして、連携・同時利用するソフトウェアによってQuadroの方がトータルで有利になるケースが多い。最近ではQuadroでも「VR Ready」製品が増えていることから、マシン選定における最初の目安としてこのキーワードに注目してもらいたい。

Revitモデル

動画

検証マシン(GPU)動画1動画2動画3
OMEN by HP 15-dh1002TX
(GeForce RTX 2060)
1回目01:0102:5503:39
2回目01:0002:5903:35
3回目01:0002:5503:23
HP Z4 G4
(Quadro RTX 4000)
1回目01:2803:4404:24
2回目01:2703:4204:30
3回目01:2603:4304:20
HP Z8 G4
(Quadro RTX 5000)
1回目00:5503:1704:46
2回目00:5503:1704:50
3回目00:5503:1704:52

静止画

検証マシン(GPU)静止画1静止画2静止画3静止画4
OMEN by HP 15-dh1002TX
(GeForce RTX 2060)
1回目00:2200:2100:1100:10
2回目00:2200:2000:1100:10
3回目00:2300:2200:1100:11
HP Z4 G4
(Quadro RTX 4000)
1回目00:1700:1700:0900:09
2回目00:1700:1600:0900:10
3回目00:1700:1700:0900:10
HP Z8 G4
(Quadro RTX 5000)
1回目00:2300:1800:1100:09
2回目00:2300:1900:1100:09
3回目00:2300:1900:1100:09

増上寺周辺モデル

動画

検証マシン(GPU)動画1動画2
OMEN by HP 15-dh1002TX
(GeForce RTX 2060)
1回目06:5612:45
2回目07:0212:22
3回目07:0112:03
HP Z4 G4
(Quadro RTX 4000)
1回目05:2009:35
2回目05:2509:40
3回目05:2109:39
HP Z8 G4
(Quadro RTX 5000)
1回目06:1808:49
2回目06:1408:52
3回目06:1108:52

静止画

検証マシン(GPU)静止画1静止画2静止画3静止画4
OMEN by HP 15-dh1002TX
(GeForce RTX 2060)
1回目00:1800:1600:1100:21
2回目00:1500:1700:1200:21
3回目00:1400:1700:1100:22
HP Z4 G4
(Quadro RTX 4000)
1回目00:1100:1300:0900:16
2回目00:1000:1300:0900:16
3回目00:1100:1200:0900:16
HP Z8 G4
(Quadro RTX 5000)
1回目00:1100:1100:1100:13
2回目00:1200:1100:1000:14
3回目00:1200:1100:1000:14

将来的な展開を見据えたマシン選び

Twinmotionを導入するマシン選びにおいては、将来的な展開を見据えておくことも大切だ。Twinmotionには、RevitやSketchUpから直接モデルを同期する機能「ダイレクトリンク」が搭載されているが、この辺りの事情にも変化が見られるという。

営業部 部長の戸田紳一氏は「従来は1モデルしか同期できませんでしたが、今後の展開としてRevit / Archicad / SketchUp / Rhinocerosなど複数のモデルを同時に同期できるDatasmithダイレクトリンクへ移行していく予定で、既にRevitは先行して本機能を公開しています。これが実現すると、例えば建物部分がRevitやArchicad、周辺環境がSketchUpで作成されたモデルを、Twinmotion上で統合するといったことが可能になるわけです。しかし一方で、これらのソフトウェアを同時に起動、操作できるハードウェア環境が必要になるのも事実。今回の検証では、ビルの意匠モデルと構造モデルをRevitからそれぞれ同期し、その周辺環境をSketchUpから同期してみましたが、いずれのソフトウェアも問題なく操作することができたので、将来性も極めて有望といえるでしょう」と語る。

営業部 部長 戸田紳一氏

「今回の検証では、ビルの意匠モデルと構造モデルをRevitからそれぞれ同期し、その周辺環境をSketchUpから同期してみましたが、いずれのソフトウェアも問題なく操作することができたので、将来性も極めて有望といえるでしょう」

そのほか同社では、リアルタイムレンダリングとフォトリアルレンダリングの両方が搭載されたオールインワンのレンダリングソフトウェア「V-Ray 5 for SketchUp」および、SketchUp上に点群をインポートできる「Scan Essentials」をバンドルした製品「SketchUp Studio」の販売も2021年5月より開始している。今回検証したTwinmotionと同じく、SketchUpも建設分野において特に注目を浴びているソフトウェアなので、ぜひチェックしていただきたい。

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