Archicadのレンダリング時間とマシンスペックの関係性を徹底検証!

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グラフィソフトジャパン株式会社

建築物を3D空間で構築するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、建築分野において急速に普及しつつある。しかし一方で、「レンダリングにどれくらいの時間がかかるのか」「どのワークステーションを選べばよいか分からない」といった疑問の声も多い。

そこで今回は、効率的で直感的なBIMソフトウェア「Archicad」をはじめ、「BIMcloud」や「BIMx」などを提供するグラフィソフトジャパン株式会社に検証を依頼。カスタマーサクセス テクニカルサポートエンジニアの秋本遥氏がArchicadをベースとした各種HP製ワークステーションの性能比較を行ってくれた。

運用に必要なナレッジやノウハウも含めて提供するグラフィソフトジャパン

従来の3D CADは、2次元の図面をベースに3次元モデルを構築していたため、修正時には関連する2次元の図面を全て手直しする必要があった。しかし、現在建築分野において普及が進んでいるBIMは最初から3次元で設計し、そこから2次元の図面を切り出すことが可能。各種構成パーツのデータが連動しているので、個別に修正を行う必要がなく、生産効率の向上と図面管理にかかる手間の削減を実現できる。

108カ国27言語に対応しているBIMソフトウェアArchicadのWebサイト

また、各種パーツには寸法だけでなく、素材やメーカー、価格といった詳細情報も含められるため、設計はもちろん施工や維持管理に至るまで、実に幅広いシーンにおける情報の一元化と生産性向上も見込めるのだ。

日本でも有数のBIMソリューションプロバイダーとして知られているグラフィソフトジャパン株式会社は、BIMソフトウェアArchicadを提供するGRAPHISOFT SEの日本法人。このArchicadは108カ国27言語に対応しており、世界中の設計者や建設関係者から高い評価を得ている。2020年10月にリリースされた最新版のArchicad 24では、「素晴らしい建築を創造するチームに力を与える」というミッションの下、柔軟性の高いデザインツール、チームでの共同作業、図面作成の自動化、写真品質のレンダリングなど、現場で役立つ高度かつ多彩な機能が実装されている。

カスタマーサクセス テクニカルサポートエンジニア 秋本遥氏

「ワールドワイドでの実績を基に、BIMソフトウェア自体はもちろん実際の運用に必要なナレッジやノウハウも含めて提供できる、これが弊社の誇る最大の強みです」

ワンランク上のマシンで連携・同時使用ソフトウェアのマージンを確保

同社ではArchicadの推奨動作環境を戸建て住宅を中心とした「小規模」、一般的な集合住宅や事務所ビルなどの「中規模」、超高層ビルや総合病院といった大規模もしくは複雑なプロジェクトを要する「大規模」という三つに分けて掲載している。

GRAPHISOFT Archicad 動作環境

しかし実際には、この推奨動作環境よりもワンランク上のマシンを使用しているユーザー企業が多いそうだ。その理由について秋本氏は「BIMにおいては、設計のメインとなるArchicadだけでなく、連携したり同時使用するソフトウェアが多くなります。Archicadから直接出力して、リアルタイムレンダリングができる3DツールTwinmotionなどが代表例ですね。あとは国内建築構造の標準フォーマットとなるST-Bridge、BIMモデルの品質や整合性を確認できるSolibri Model Checker、Rhinoceros用のプラグインGrasshopperなどもよく用いられています。これらを使用するうえで、マシンスペックにも余裕が求められるわけです」と語る。

HP製ワークステーション4製品でレンダリング検証を実施

それでは実際にArchicadを使用するにあたり、どれくらいのマシンスペックが求められるのかを見ていきたい。検証に使用したのは、下記のHP製ワークステーション4製品だ。

HP Z2 SFF G5 Workstation(9FW02AV-AAHZ相当)
CPUIntel Xeon W-1250 プロセッサー
(3.3GHz、6コア・12スレッド)
メモリー32GB(16GB×2)メモリー
ストレージ512GB SSD(システムドライブ)+1TB HDD
グラフィックボードNVIDIA Quadro P620

HP Z4 G4 Workstation 1JP11AV-CNQT
CPUIntel Xeon W-2225 プロセッサー
(4.1GHz、4コア・8スレッド)
メモリー32GB(8GB×4)メモリー
ストレージ1TB HDD
グラフィックボードNVIDIA Quadro RTX4000

HP ZBook Studio G7 Mobile Workstation パフォーマンスモデル(1X9A6PA-AAAA相当)
CPUIntel Core i7 10850H プロセッサー
(2.7GHz、6コア・12スレッド)
メモリー32GBメモリー(オンボード)
ストレージ1TB SSD
グラフィックボードNVIDIA Quadro T2000

HP ZBook Firefly 14 G7 Mobile Workstation スタンダードモデル(469N3PA-AAAA相当)
CPUIntel Core i7-10510U プロセッサー
(1.8GHz、4コア・8スレッド)
メモリー16GB(16GB×1)メモリー
ストレージ512GB SSD
グラフィックボードNVIDIA Quadro P520

なお、Z4 G4シリーズではIntel Xeon W-2235 プロセッサー(3.8GHz、6コア・8スレッド)も選択できるが、今回の検証ではレンダリング時間がCPUとGPUのどちらに依存しているかを明確化するため、あえてIntel Xeon W-2225 プロセッサー(4.1GHz、4コア・8スレッド)搭載モデルを使用した。グラフィックボードはNVIDIA Quadro RTX4000と、検証機の中でも特に秀でている。

ベンチマークで用いたモデルは、グラフィソフトジャパン株式会社が配布している一般的な家屋のモデルに加えて、公開されている「ACサンプルプロジェクト_RC造_集合住宅_AC22.pln」「AC23_木造ガイド.pln」の3種類を軽量サンプルとして使用。重量サンプルについては、同社のユーザー企業から提供してもらったモデルおよび、カーテンウォールが含まれるポリゴン数の多いモデルを採用した。

そのほかの指標として、Twinmotionのシステム評価および、ベンチマークソフトウェアCinebenchのスコアも使用したので参考にしていただきたい。

ACサンプルプロジェクト_RC造_集合住宅_AC22.plnを用いたArchicad 24の3D画面

同サンプルによるポリゴンカウント

同サンプルのレンダリング設定

レンダリング完了時の様子

ArchicadのレンダリングはCPUのコア数・スレッド数が決め手

こちらがHP製ワークステーション4製品で実施したベンチマーク結果だ。

製品名Z2 SFF G5Z4 G4ZBook Studio G7ZBook Firefly 14 G7
軽量モデル1レンダリング時間11秒16秒11秒16秒
ポリゴン数366,569366,569366,569366,569
軽量モデル2レンダリング時間28秒44秒32秒42秒
ポリゴン数589,163589,163589,163589,163
軽量モデル3レンダリング時間39秒1分2秒54秒1分39秒
ポリゴン数51,65851,65851,65851,658
重量モデル1レンダリング時間15秒32秒19秒33秒
ポリゴン数672,871672,871672,871672,871
重量モデル2レンダリング時間25秒35秒24秒31秒
ポリゴン数1,258,1891,258,1891,258,1891,258,189
Twinmotion(システム評価)最高
Cinebench(スコア)8079509055343866

ベンチマークの結果について秋本氏は「ArchicadのレンダリングにはCPUを使用しており、特にコア数・スレッド数が重要になります。検証結果において、クロック周波数が高い4コア・8スレッドのCPUよりも、6コア・12スレッドCPUを搭載した製品のレンダリング時間が短いことでも明らかですね。ただし、GPU性能が不要かといえばそうでもありません。2D画面から3D画面に推移する際、OpenGLを使用して処理するため、GPUパワーもそれなりに求められます。モデルの規模が大きくなるほどレンダリング時間がかかりますので、今回の検証機では軽量・小規模モデルならZBook Firefly 14 G7スタンダードモデル、重量・大規模モデルならZ2 SFF G5もしくはZBook Studio G7がオススメといえるでしょう」と語る。

またHP Z4 G4に関しては、「NVIDIA Quadro RTX4000が十分なグラフィックス性能を発揮してくれますし、CPUにIntel Xeon W-2235 プロセッサー(3.8GHz、6コア・8スレッド)を選べば、間違いなく重量・大規模モデルのイチオシ製品といえます。Twinmotionのシステム評価で最高を記録したのは初めて見ましたね」と続けた。

Archicadのレンダリング時間とマシンスペックの関係性について語る秋本氏(取材はリモートで実施)

今回の検証でも分かる通り、Archicad用のマシンはモデルの規模に応じて、まずはコア数・スレッド数の高いCPU搭載製品を選ぶことがポイントとなる。そのうえで、3D表示の頻度などに合わせてGPUを決定。連携・同時使用ソフトウェアの負荷も鑑みて、スペックにマージンを持たせることも重要だ。

検証を終えた秋本氏は、最後に「Archicad 25の検証も進んでいますので、リリースを楽しみにしていてください」というメッセージで締めくくった。

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