Mastercam技術情報 バレル工具とは? ~バレル工具の可能性~
ヨーロッパを中心に急速に普及したバレル工具とは?
Mastercamが2015年より対応しているバレル(たる型)工具。その特殊な形状から用途が分かりづらく、使っているユーザーはほとんど見たことがありません。
しかし、バレル工具はヨーロッパを中心として急速に普及しつつあり、特に仕上げ加工において劇的な効果があるといわれています。
バレル工具とは?
以下はドイツの工具メーカーであるエムーゲ・フランケン社からの引用です。
『バレル工具の特長は切刃が大きな円弧形状をしており、これによって最大限の切削量を引き出します。ボールエンドミルで例えれば数百Φもの工具径に相当する大きな円弧での加工が可能になるのです。バレル工具を使用するためには、この特別な形状の工具の動きをコントロールする最新のCAM システムが必要不可欠となります。結果的に加工時間を劇的に削減できるだけでなく、加工面品質のさらなる向上も可能となります。』
バレル工具は切れ刃(外周刃)が大きなR形状をしており大型のボールエンドミルの先端で切削するのと同じような効果が得られます。図1を参照するとr2に該当する部分がR形状をしています。
バレル工具のメリット
バレル工具の大きな円弧形状の切刃を利用し図2のような切削を行います。
この方法だと、側面のR部で切削を進めるため通常のボールエンドミルと比較すると切削面積が大きくスキャロップハイトを低く抑えることができます。それにより1ピッチ当たりの移動量を大きく設定することができ、結果として加工時間が短縮されるわけです。
Mastercamでバレル工具を検証してみた
図3はMastercamで工具だけ変更して同じピッチで計算した平行5軸ツールパスです。工具の接触面積に大きな違いがあるのが分かります。
そしてVerifyで検証した結果が図4(バレル)と図5(ボールエンドミル)です。同じ加工条件でもこれだけ切削結果に差がでます。
バレル工具は価格が高く製造しているメーカーも少ないようです。また、NCプログラムの作成にはCAD / CAMシステムが必須となりますが、バレル工具を活用することで従来の加工と比較して時間・精度共に大きなメリットを得ることができます。
Mastercamの最新バージョン「Mastercam 2019」では、バレル工具をはじめとしたサークルセグメントエンドミルに完全対応し、これらの工具を使用した加工効率向上のご提案を進めていきます。ご期待ください。