ご存じですか? 高速加工のもたらす効果

そもそも高速加工とは?

一般的に切削加工における高速加工とは、機械を高速で動かすことで加工時間を短くし、生産効率を上げる工法を意味します。高速化技術が高まるにつれ、工具の消費にも目を向けなければなりません。ワークと刃先に摩擦熱が発生し、強度の低下や割れが起こる可能性があるからです。両者の「いいとこどり」を実現する工法についてご紹介します。

高速加工には違いがある

高速加工は、厳密にいうと幾つかの工法に分けられます。

 高能率加工高送り加工ダイナミック加工
工法工具全体の刃を利用し、最大量の切削を行う工法切削量を少なくして送り速度を早くする工法工具長を利用した片刃切削とダウンカットによるMastercam独自の切削方法
メリット加工プログラムが単純で作りやすい工具への負荷が少ない工具負荷が少ない、従来工法より平均70%加工時間が早い
デメリット工具消費が多く加工機械の剛性が必要加工プログラムの作成が難しい(CAM必須)トロコイド加工に対応したCAMが必須
  • 刃全体を利用する高能率加工

  • 切削速度を早くする高送り加工

  • Mastercam独自のダイナミック加工

3種類の高速加工にはそれぞれの特長がありますが、加工時間そして工具の耐久性を総合的に考慮するとダイナミック加工が圧倒的に優れています。

ダイナミック加工とは

ダイナミック加工とは、3D CAD / CAMソフトウェアの「Mastercam」に搭載された独自のアルゴリズムによる切削加工です。

最大の特徴は刃物をトロコイド状(渦巻)に動かすことで切削量を常に一定に保ち、コーナー部や溝形状部であっても徐々に材料に切り込んでいくような動きにすることで、工具負荷を大幅に削減します。その際に、工具側面の刃全体で切削することで1回転当たりの切削量を増やすことも可能です。

なお、刃長をフルに使用しなくても切削熱はほとんど変わりません。

径×d(径方向切り込みが0.2xdが最適値)
アルミ0.4以下
S45C0.3以下
SUS3040.2以下
64チタン0.15以下

ダイナミック加工

切子の排出形状

ダイナミック加工が優れているもう一つの特徴として「切子の排出形状」があります。通常のトロコイド加工の場合は渦巻状に切削するだけなので、加工の開始点・中点・終了点でそれぞれ切削量が変わります。

しかし、ダイナミック加工の場合は切子の厚みを一定に保つため進入時は浅く切り込み、徐々に切削量が増えるように工夫されています。この方法により、切子は常に一定の厚みを保ち結果として工具にかかる負荷が軽減されます。

トロコイド加工とダイナミック加工の切粉の比較

Mastercamの高効率加工「ダイナミックツールパス」の強みとは?

通常の加工とダイナミック加工の比較

従来工法の荒取りと比較して、ダイナミック加工は70%もの時間を削減します。通常の加工では2分31分かかっていた加工もダイナミック加工では40秒で完了します。

通常の加工とダイナミック加工の比較

ダイナミック加工の能力を最大限に引き出す方法

Mastercanのダイナミック加工の能力を最大限に引き出すためには、使用工具や切削条件など最適値を設定することが重要です。特に次の3点が重要です。

  1. 使用工具は4枚刃による不等リード、不等ピッチ工具を使用する。(注1)
  2. NCプログラムはG01を基本とする。
  3. 工作機の能力(切りくず排出性、高精度輪郭制御など)。
  • (注1)不等ピッチ・リード工具はビビリ抑制や切子の排出性に優れており、耐久性や加工効率を考えるとトータルコストは安く済みます。

不等ピッチ・リード工具

高速化を保つ工夫

工作機のプログラム追従性納によりダイナミック加工のような複雑な動きをする加工では動作スピードに影響が出る(動きが遅くなる)ことがあります。MastercamはNCプログラムを直線補間(G01)優先することで滑らかな動きを実現します。フィルタリング機能により不用な制御点の削減などの工夫がなされています。

  • トレランス0.025

  • トレランス0.3

通常の設備でも荒取り加工をダイナミック加工に変更するだけで、工具の消費量や加工時間の短縮につながりますので、ぜひ一度お試しください。