固有値解析による切削治具の剛性評価と対策

切削治具の振動影響に対する対策

構造物は振動の固有値(固有振動数)を持っており、固有振動数の外力で加振されると共振してしまいます。共振を避けるためには、固有振動数および固有モード(共振したときの振動モード)といった構造物の振動特性を把握することが重要です。

ここでは、SOLIDWORKS Simulationの固有値解析による切削治具の共振対策例をご紹介します。

問題

図1に示すワークが切削治具に固定されているモデルに対し固有値解析を実行し、固有振動数および固有モードを確認します。ここで、ワークと治具の接している面の接続条件はボンド結合(接着)とします。

図1:切削加工用治具

  • * 固有値解析では、部品間の接続条件に接触を定義はできません。

図2に固有モード(1次)を示します。1次の固有振動数は325[Hz]となっており、矢印で示した治具の変形が顕著なことが分かります。

図2:1次モード(カラーチャートの値は、1次モードで振動した際のジオメトリの相対変位を表す)

共振を防ぐための対策として「固有振動数を上げる(剛性を上げる)」ことが挙げられます。

ここでは、図2の矢印で示した治具の剛性を向上させるために、幅を増やす対策をしました。図3に対策後の1次モードを示します。その結果、固有振動数が325[Hz]から376[Hz]に上がったことが分かります。

図3:対策後の1次モード

まとめ

ここでは、切削治具の共振対策を例に固有値解析の活用方法をご紹介しました。

固有値解析を実行することにより、共振の有無だけでなく振動に弱い箇所を確認できます。固有値解析をご活用いただき、振動に強い製品の設計にお役立てください。

  • * 固有値解析はSOLIDWORKS Simulation Professionalのライセンスが必要です。振動時の変位、応力などを求めたい場合はSOLIDWORKS Simulation Premiumの動解析が必要です。

スクールで学ぼう

大塚商会のスクールでは、解析について実機での操作や理論を学べます。解析ソフトウェアの操作と理論を学ぶコースとソフトウェアに依存しない概念や基礎知識を学ぶ座学コースがあり、用途・目的に合わせて受講いただけます。

解析(製造業向け)コース