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SOLIDWORKS Simulation 新機能「接触ペナルティー剛性スケール係数」を使ってみよう
SOLIDWORKS Simulation 2023に搭載された新機能
SOLIDWORKS Simulationで複数モデルの線形静解析を行う際に接触を考慮するケースがあると思います。解析時間を少しでも短くしたいと考える方も多いのではないでしょうか?
SOLIDWORKS Simulation 2023から「接触ペナルティー剛性スケール係数」という機能が新たに追加され、シミュレーションの計算時間を削減できるようになりました。
接触ペナルティー剛性スケール係数とは
接触ペナルティー剛性スケール係数を変更すると、接触ペナルティーの剛性を調整できます。係数を緩和することで、近似解をより迅速に得られるようになります。
ただし、接触精度と解析時間はトレードオフの関係にあることに注意が必要です。具体的なモデルを例にご紹介します。
問題
図1は、ハンドルとブラケットの2部品から構成されたアセンブリモデルです。
図1:アセンブリモデル
図1に次の条件を与えます。
荷重条件(図2内の赤矢印) | ブラケット上面円周に2[N] |
---|---|
拘束条件(図2内の緑矢印) | ブラケット左側面と手前面に面直方向に拘束。ハンドル円筒面を完全固定 |
接触条件 | ブラケット青表示面とハンドル紫表示面に接触を定義 |
図2:解析条件
図3:接触条件
接触ペナルティー剛性スケール係数の設定方法
係数は、スタディーのプロパティから設定します。デフォルトは「1.0」になっており、バーから係数を選択します。0.01に近づけるほど計算時間が短くなるように接触を計算します。
図4:接触ペナルティー剛性スケール係数設定画面
解析結果
表1および図5に接触ペナルティー剛性スケール係数を「1.0」と「0.01」の2パターンで計算した結果を示します。結果に関しては、図内3カ所より変位と応力を取得しています。
接触ペナルティー 剛性スケール係数 | 解析時間 | (1)ブラケット先端Y方向変位 (mm) | (2)接触箇所Y方向変位 (mm) | (3)ブラケット付け根応力 (MPa) |
---|---|---|---|---|
1.0 | 4分18秒 | 0.01 | -0.00042 | 23.41 |
0.01 | 3分1秒 | 0.0097 | -0.00084 | 23.55 |
図5:結果数値取得箇所
図6:接触ペナルティー剛性スケール係数1.0
図7:接触ペナルティー剛性スケール係数0.01
接触ペナルティー剛性スケール係数を0.01に設定すると、1.0に比べて計算時間を今回の例題では1分17秒(約30%)速く計算できました。接触を多く含む複雑なモデルにおいて、幾つかのパターンで繰り返し計算を行いたい場合、接触ペナルティー剛性スケール係数を0.01に近づけることで、計算時間を短くしながらモデルの傾向を把握できます。
まとめ
本記事では、SOLIDWORKS Simulation 2023から機能追加された「接触ペナルティー剛性スケール係数」についてご紹介しました。接触ペナルティー剛性スケール係数を変更することで、接触の精度と解析時間をトレードオフに扱えるようになります。モデルの傾向をつかむために接触の計算を速く完了したい方は、「接触ペナルティー剛性スケール係数」を試してみてください。