勘や経験に頼らない設計へ ―流体解析で「見える化」する製品開発
「見えない流れ」を見える化! 流体解析で設計精度と開発効率を飛躍的に向上

設計現場では、試作の繰り返しや性能不良、コスト増、属人化などの課題が発生しがちです。これらの多くは、設計段階で流体の挙動を可視化・定量化できていないことが原因です。流体の挙動を「見える化」して問題を事前に把握することにより、設計の精度向上と開発効率の改善が期待できます。
設計者が直面する四つの技術的課題とは?
製品設計の現場では、次のような技術的課題に直面していませんか?
- 試作を何度も繰り返して、納期がギリギリになる。
- 流体の流れが原因で性能が出ないのに、どこを改善すればよいか分からない。
- 設計変更のたびにコストが膨らむ。
- 経験豊富なベテラン頼みで、若手が設計判断に自信を持てない。
これらの課題の多くは、設計段階で目に見えない「流体の挙動」を可視化・定量化できていないことに起因しています。空気や流体の流れは、製品の性能や品質に大きく影響する重要な要素です。
しかし、これらを「勘」や「経験」に頼って設計を進めてしまうと、試作回数が増えたり手戻りが発生したりして、開発コストや納期に悪影響を及ぼすリスクがあります。
そのため、流体解析ツールを活用し、設計段階で流れを「見える化」することが、効率的な製品開発と品質向上の鍵となります。
解決の鍵は「流体解析」
流体解析とは、水・空気などの流体の動きを数値的にシミュレーションする技術です。設計段階で次のような現象を評価できるようになります。
- 圧力損失や流速分布
- 流体の滞留や渦の発生
- 吸排気の位置や大きさによる効率の比較

空気の流れ(ファン内の風の動き)

空気の流れ(筐体内の風の動き)

液体の流れ(ポンプ水の流れ)
流体解析のメリット・効果
1.定量的な設計判断の実現
従来の「勘」や「経験」に頼った設計から脱却し、流速・圧力・温度分布などの数値データに基づいた設計判断が可能になります。これにより、設計の根拠が明確になり、社内レビューや顧客説明時の説得力も向上します。
2.試作前の問題抽出
流体の滞留、渦の発生、圧力損失といった目視や実機試験では把握しづらい問題を設計段階で事前に検出できるため、試作後の手戻りや設計変更を最小限に抑えられます。
3.設計の最適化
複数の設計案を流体解析ソフト上で比較検討することで、性能・コスト・品質のバランスを考慮した最適な設計案の選定が可能になります。
4.開発期間の短縮とコスト削減
試作回数の削減により、開発スケジュールの短縮とコストの最小化が実現します。さらに、設計初期段階での問題発見により、後工程での修正工数や部品再製作のリスクを大幅に軽減できます。
活用事例と導入のしやすさ
流体解析は、エアコンや換気扇といった空調機器や自動車部品、家電製品、ポンプや配管といった産業機械など幅広い業界で活用されています。
また最近では、設計者でも扱いやすい熱流体解析ソフト(例:SOLIDWORKS Flow Simulation)が登場しており、CADと連携しながら直感的な操作が可能です。

門型洗車機のトップ企業が3D設計への移行で生産性を大幅向上。余剰時間をより創造的な取り組みに充てる
エムケー精工株式会社
エムケー精工株式会社は、ガソリンスタンドで目にする門型洗車機でトップシェアを誇るものづくり企業だ。設計業務の3D化は、設計段階から試作品製造までの効率アップや生産性、品質向上に大きな役割を果たしている。

3次元CADの導入により、農機部品の複雑な形状が可視化。設計精度の向上や試作期間の短縮を実現
株式会社ニットー冷熱製作所
ニットー冷熱製作所ではクリーンエアシステムと精密空調の設計・製造において、SolidWorksとSolidWorks Flow Simulationを導入。製品開発のスピードアップと品質向上に成功した。
まとめ
流体解析は、設計段階で「見えない流れ」を可視化し、勘や経験に頼らない合理的な設計判断を可能にします。製品性能の向上、開発効率の改善に向けて、流体解析の導入をご検討ください。
ご不明点や導入相談は、お気軽にお問い合わせください。
同じテーマの記事を読む
