鹿島建設のニーズに応えるPCメーカーの条件
DX推進で高性能PCが不可欠に
建築の設計・デザイン業務には高性能なPCが不可欠だ。マウスコンピューターの、コストパフォーマンス・豊富なカスタマイズ・納期の対応のほか、技術支援・営業部門の対応が決め手となり、鹿島建設が導入を決めた。
建設業界では建物の設計やデザインにBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ツールの利用が主流になっている。BIMはコンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程の情報を組み合わせて活用するソリューションだ。
大手ゼネコンの鹿島建設では、建築設計におけるBIMの利用を進めている。建築設計本部の意匠設計構造設計設備設計およびスタッフ系管理部門では、社員約700人、CADオペレーター業務などを行う社外スタッフ約100人を含めると合計800人程が在籍しており、BIM対応のソフトウェアをPC上で利用し、建築の設計を行っている。
BIMソフト利用に高性能PCを導入
建築設計本部で、PCの選定・導入などを担当する企画管理統括グループ企画グループリーダーの玉井洋氏は「建築設計本部はゼネコンの設計施工業務の中で、設計部門の役割を果たしています。建築のデザイン、構造や設備エンジニアリングの設計を主に行います。昨今、当社において約60%は設計施工一貫(デザインビルド)方式で受注しており、建築分野における、我々建築設計の関与が高まっています」と話す。
建築のCGパースなどを制作する3次元モデルとは異なり、BIMでは建築デザインだけでなく構造設計や設備設計の情報、コストや仕上げ、監理など付随する情報を一元的に管理する。
実際に建築物を施工する前に、コンピューター上で3次元モデルを生成し、デザインや構造、設備などさまざまな仕様やコストを管理し、環境性能やエンジニアリングのシミュレーションを行ったり、コスト効率の良い施工計画を立てたりすることが可能になる。
BIMソフトを利用して快適に業務を行うには、PCにも高性能が求められる。鹿島建設では、2021年にマウスコンピューターのデスクトップPC「G-Tune HM-B-3060Ti」を中心に、ノートPC「DAIV 4N」「DAIV 4P」を合計160台導入した。
デスクトップPCのG-Tuneは、CPUに第11世代の Core i7、グラフィックスにNVIDIA のGeForce RTX 3060 Tiを搭載する(注1)。その他、メモリーやストレージ、電源のアップグレード、高負荷の処理に対応するため静音性CPUファンのカスタマイズなどを行っている。グラフィックス性能が高いデスクトップPCを選定したのは、エンジニアリング・施工のためのBIMソフトウェア「Revit」(オートデスク)を利用するためだ。
- (注1)2022年7月現在の現行モデルでは、CPUが更新されている。
納期、性能、価格を比較してマウスコンピューターを選定
近年続く半導体不足の影響によりPCの調達が難しい状況が続いている。鹿島建設ではリースの更新のタイミングで毎年PCの入れ替えを行っているが、2021年度の入れ替えの計画を進める中で、同社が求める台数の納品が間に合わないことが分かった。
「半導体不足の影響により、納品が間に合わないことが判明しました。2021年は、通常よりも入れ替え対象の台数が少なかったので、機種選定の範囲を広げてみようと考えました」と玉井氏は振り返る。
マウスコンピューターも含めた3社から8機種を選定し、そのうち6機種を貸し出してもらい、それぞれの仕様比較やグラフィック性能のベンチマークテストなどを実施して、納期、性能、価格の順で評価を行った。
性能に関してはほぼ横並びで大きな差は出なかったが、評価機貸し出しなどマウスコンピューターの柔軟な対応力、検証における技術部門のサポート、ソフトとの互換性など設定に関する技術的支援により、安心感が高まった。さらには短納期とコストパフォーマンスの高さも大きな決め手となった。
マウスコンピューターでは、鹿島建設からの導入計画を受け購買部門、生産部門と連携して大量導入に応じたという。
玉井氏は「建設業界では建築資材など原材料費が高騰し、物価も高騰しています。毎年、大量のPCを導入する当社にとっては、価格性能比に優れるマシンがありがたいです。さらに、マウスコンピューターの営業部門や開発部門と直接やりとりする中で、対応力の高さに信頼感が高まりました。このこともマウスコンピューターを採用する決め手となりました」と話す。同社では、2022年度は300台程度のPCを入れ替える予定だ。
コロナ禍で変わる建築デザイン部門の働き方
鹿島建設では、建築設計部門に在籍する若手から中堅社員などの高負荷作業を行うスタッフには、外付けグラフィックス搭載のノートPC「DAIV 4N(GTX 1650 Ti)」を採用し、管理職など設計内容の確認が中心となるスタッフには、モビリティを重視して「DAIV4P(Iris Xe)」を採用した。
これは建築設計の業務の進め方が変わってきたためだ。従来は1人1台のPC利用を前提に、高負荷作業を行うスタッフにはデスクトップPC、管理職はノートPCを主に利用してきたが、最近はスマートフォンやタブレットなども利用するようになり、マルチデバイス環境で業務を進めるようになってきた。
社外からノートPCやスマートフォン、タブレットを使い、VPN回線を通じて社内のデスクトップPCに接続し、リモートデスクトップ環境で作業を行うというような業務の進め方も増えている。「業務内容に合わせてマシンを選定できる、マウスコンピューターの豊富なラインアップも心強いですね」と玉井氏は言う。
コロナ禍でテレワークによる在宅勤務が不可欠になり、建築設計本部でも働き方を変える必要が出てきている。
プログラミング処理により構造的・機能的に問題や矛盾のない設計を行うコンピュテーショナルデザインを担当する企画管理統括グループ(情報担当)デジタルデザイン統括グループの萩原大地氏は「リモート環境ではPC本体の性能だけでなく通信速度が大きく影響する部分があるものの、作成した3次元データの確認という点で業務に支障が出るような遅延は起きていません」と話す。
プログラミング作業などを行う社外スタッフのオペレーターは高性能デスクトップPCが必要なため、自宅にPCを送って在宅勤務をしてもらい、リモートデスクトップで社内とつないで、効率的に仕事ができるような環境を整えている。
建築設計本部では、現在は約800人のスタッフが1人1席を使うオフィス・レイアウトだが、今後1年かけてオフィスのどこでも仕事ができるようにフリーアドレス化を進めていく方針だ。デスクトップPCの置き場所やディスプレイの設置方法の検討も進め、社内と社外をつないで効率的に仕事ができるようにしていく。
本体の仕様からでは見えないサポートも好評価
業務でPCを使ううえでは、高いメンテナンス性が求められる。更新されたドライバーソフトのインストールやOSのアップデートも必要となる。そのためメーカーのサポートもPC選定の重要な要素だ。
鹿島建設ではマウスコンピューターのPCを導入する際、開発など技術部門の担当者に相談して疑問点を解消できたことも高く評価している。
ほかにも、PCをより使いやすくするため、マウスコンピューター独自に提供している機能などがある。「マウスコンピューターはコントロールセンターという管理機能のユーティリティソフトを提供しています。例えば、ユーザーが冷却ファンの動作を設定して回転速度を調整することができます。ノートPCのDAIVで高いCPU性能が必要なときは冷却ファンを動作させ、静かな会議中にはファンを止めてCPUの動作速度を落とすなど、細かい調整をユーザー自身ができるのは便利だと感じます」と萩原氏。
社内の業務はデジタル化が進んでいる一方で、社外とのやりとりや契約など、まだまだ紙の図面が求められる分野も残る。設計やデザインなどはBIMソフトを使って行っているが、建築確認は図面の審査が行われ、契約の資料として設計図書を添付する必要がある。
今後3次元処理されたデザインや設計も進むとみられるが、長い年月を経て洗練されてきた建築設計では2次元の設計図の方が分かりやすいなど優れた点も多い。「建築設計の進化に合わせてPCの使い方や働き方も変わっていくのではないかと思います。建築業界の業務を改善していくような、より良い製品の提供をマウスコンピューターには期待しています」と玉井氏は話す。
- * 日経xTECH 2022年7月25日公開記事をもとに作成
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