ラティス・テクノロジー株式会社 鳥谷浩志社長直筆コラム
製造業のグローバル化に3Dアニメーションは武器だ
今回は3Dの効果的な利用を促進する最先端の技術を紹介しましょう。まず今さらですが、なぜ製造業では3D設計が普及したのでしょうか?
私は次の三つの理由があると考えています。
- 3Dは完全に実機を表現できる:3Dモデルで干渉をチェックし、構造解析により強度を確認したり、3Dプリンタで造形できる。
- 3Dは分かりやすい:製品形状にものづくりに必要な情報を付加することで、設計製造関係者で的確な情報共有ができる。
- 3Dは活用範囲が広い:設計や製造、サービスで利用するBOM(部品表)と連携することで、企業全体で3D設計の恩恵を受けることができる。
今回は、この中でも2の情報伝達力を詳しく見てみましょう。
3Dアニメーションを体験してみてください

図1:アニメーションを3Dで再現(デジタル総研株式会社提供)
動画をどうやって3Dにするのか?
しかし、よく考えてみるとビデオの映像は2Dです。これを3Dアニメーションとして再現するのがXVL Playerです。3Dアニメーションとして再現する場合、次のようなメリットが挙げられます。
- 内部の動きや下からの動きなど、実機では見られない視点で動きを再現できる。
- 動きを止める、さまざまな視点から見る、3Dモデルの名称や属性を確認するといった対話的に情報を再現できる。
- 実機完成前に、リアルに3Dで再現できる。しかも、軽量なXVLでは3Dアニメーションにネットワークを介して共有できる。
ビデオが一方的な情報伝達であるのに対し、3Dアニメーションは見たい人が見たい視点で情報を再現できることが最大の利点でしょう。
実際に3D体験
興味をお持ちの方は、次のサイトより実際に体験いただけます。
XVL Player デモ
Process View | 機械全体の動きを外から閲覧 |
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Inner Parts View | 機械内部の動きを閲覧 |
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Pause | 機械の動きを止めて3Dで回転/拡大 |
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Resume | アニメーションを再開 |
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- * ブラウザはInternet ExplorerもしくはFirefoxを利用。無償のXVL Playerを次よりダウンロードしておくことが必要です。
XVL Player ダウンロード
3Dアニメーションの作成は大変そう…
さて、このような3Dアニメーションを作成するのは結構大変そうではないかと思う方もいらっしゃるでしょう。販売促進用とか海外に技術伝承するとか必然的な理由がないと作成できないでしょうし、デジタル総研のような専門の会社に依頼しないと技術的なハードルが高いのも事実です。短納期でできる限り低コストで作成には到底できるはずがないという声が聞こえてきそうです。
3Dアニメーションの自動生成技術が一気に普及
ところが最近になり、組立アニメーションに関しては3Dを一気に普及させるかもしれない技術が開発されました。それが、3Dアニメーションの自動生成という技術です。
もう一度、3Dデータを利用した工程設計と作業指示書の作成手法を復習してみましょう。図2に一連の流れをまとめてあります。

図2:作業指示書のアニメーション作成手順
3DCADから軽量XVLを生成すれば、3Dで部品形状を参照しながら、どの工程でどの部品を組み立てていくかを指示できます。これが工程設計の見える化でした(図2の1、2)。問題は3の部品の組み付け軌跡の設定と4の見せたい方向から見せるための視点の設定です。組み付ける部品が1000個あれば、これを1000回繰り返さないといけません。多忙な現場にこれをやらせることはとても困難です。
XVL Studio Standardで一部の工程を自動化
そこで、最新のXVL編集ソフトウェアXVL Studio Standardでは、3軌跡設定と4の視点設定を自動化しています。部品の組み付け工程をXVL Studio Standardで定義すれば、後は自動でアニメーションを定義できるようになったのです。複雑な手順で組み付けする場合には、意図通りアニメーションが定義されない場合もあるため、5でアニメーションを再現しそこだけは修正する必要があります。
実際の製品で試したところ、80%以上の工数が削減できることが確認できました。自動アニメーションの手順と実際に設定したアニメーションを準備したので、次よりご覧ください。
XVL Studio Ver.12.1紹介ビデオ YouTube再生
グローバル化に3Dアニメーションはかかせない
経済産業省の調査によれば、海外の日系メーカーで働く労働者の数は約500万人といいます。この1/3ほどが中国での従業員です。昨今の政治情勢や急速な賃金上昇もあって多くの製造業でチャイナプラスワン、つまり中国に加えて別の国でも製造拠点を持ち、さまざまなリスクに対応しようとしています。
最近ではタイプラスワンというように複数の製造拠点を持つ動きが普通になってきました。これは、設計と製造現場のコミュニケーションをますます難しくするでしょう。まさに今こそ、3Dの分かりやすさが生きてくるのです。
グローバルに広がる製造業で高品質製品を製造しようとすれば、正確な情報共有が必須です。3Dアニメーションは言語と文化の壁を越えた情報共有を支援します。アニメーションの自動生成技術の出現によって、世界の製造現場に向けた3Dによる情報発信が低コストで行えるようになりました。製造業は今、新たな武器を手に入れITで武装する時代を迎えたのです。
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