3Dプリンターで製造治具を内製し、生産能力の向上、大幅コスト削減を実現

株式会社 ナリス化粧品

業種
総合化粧品メーカー
事業内容
訪問販売事業、海外事業、OEM事業、店頭販売事業、通信販売事業など
従業員数
746名(2020年3月末・連結)
サイト
https://www.naris.co.jp/

導入事例の概要

製造現場で活躍する3Dプリンターを導入。想定を上回る効果を実感。

導入の狙い

  • 製造ラインの工程不具合改善、効率化とライン部品の内製化を行いたい。
  • ライン部品が金属のため、製造工程動作が遅く、また製品保持力などから不具合も発生。
  • 多品種製品が多く、ライン部品や治具の作成(外注)に納期とコストがかかる。

導入したメリット

  • 3Dプリンターを活用した工場内のライン部品や治工具の内製化に成功。
  • 外注加工依頼に比べ、大幅なコストと削減と納期短縮を実現。

導入システム

美容理論を製品に落とし込み確立した総合化粧品メーカー

株式会社ナリス化粧品(以下、ナリス化粧品)は、1932年4月創業。1936年に自社ブランド「ナリス」の化粧品製造販売を開始。人間が本来持つ環境適応能力や人間の皮膚に備わる免疫力・元気になる力を活用し、「余分なものを取り除き、必要なものを与える」という美容理論を「WCCCF(Wash:洗う、Cleanser:除く、Conditioner:整える、Creme lotion & Creme:与える、Foundation:守る)」に落とし込み、確立した総合化粧品メーカーだ。

ビューティーアドバイザーが技術を提供する訪問販売事業を柱に、ナリス化粧品の品質・技術を広く海外へ展開する海外事業、幅広くヘルス&ビューティーケアを提供する「店頭販売事業」、化粧品の製造技術と販売のノウハウを活用する「OEM事業」、インターネットなどの広告媒体を通じて商品を拡販する「通信販売事業」、「ナリスビューティサロン」を運営する「サロン事業」など、多角的に展開。商品企画から研究・開発・デザイン・生産・販促・営業まで、一貫したビジネスモデルで事業を拡大しているが、製造現場におけるさらなる省人化・工数削減・生産能力向上に対して課題を抱えていた。

ナリス化粧品は、かねてより「紫外線硬化のインクJET3Dプリンター」を導入し、化粧品の容器および外装パッケージの設計・開発、デザイン提案に活用してきたが、製造現場の治具やライン部品としての活用はされていなかった。その理由について制作部 制作課リーダー 戸田裕之氏は次のように説明する。

制作部 制作課リーダー 戸田裕之氏

「3Dプリンターは、パッケージ設計検討用の試作やデザイン提案を目的とした検証において、もはや欠かすことのできないツールになっています。しかし、製造現場である工場では治具としての活用が主体となるため、現在使用している紫外線硬化のインクJET3Dプリンターでは、強度不足・精度不足・材料費などの機能条件が合わず、製造現場での活用を推奨できなかったのです」

製造現場で使用できる3Dプリンター「Mark Two」を導入

製造現場の効率化・コスト改善など課題解決のために「製造現場で使用できる3Dプリンター」の情報収集をしていた中、エンジニアリングプラスチックのフィラメント材料を熱溶解積層していく「FDMタイプの3Dプリンター」による性能向上の情報を得て、あらためて製造現場で使用できる3Dプリンターの導入検討を開始した。

「実際に製造現場で使用できるのか?」という課題に対し、さまざまなFDMタイプの3Dプリンターでベンチマーク部品を作成し、精度や強度などを検証。実生産のキャッピングマシン用グリッパに用いた造形物の性能検証などを実施し、各種評価をクリアしたMark Twoの導入を決定した。

Mark Two選定ポイント

  • 0.1mm単位の精度が問われる治具作成にも十分耐えられる。
  • Onyx材料の強度は、ほとんどの治具を作成できる。
  • Onyxでも強度不足の場合は、カーボンファイバーを組み合わせられる。

Mark Two

実生産キャッピングマシン用グリッパ検証結果

  • 3万7,500個生産に使用しても、耐久性に問題がない。
  • シュリンクの糊がはがれ、約50%改善。
  • 治具開発費用が80%以上改善。
  • 開発納期1.5WEEKの大幅短縮。
  • 従来品よりも転用性や部品のサイズなど設計変更が容易。
  • 治具主材が樹脂製となり大幅に軽量化。動作スピードが向上。

本動画は音声オンで再生されます。音量は、動画プレーヤー画面の下部にあるスピーカーアイコンで調整可能です。

想定を大幅に上回る効果

導入前に想定した3Dプリンター活用内容よりもコストカット、投資回収、稼働率において大幅に上回る効果を得ることができた。導入直後から工場の現場で造形希望が相次ぎ、フル稼働の状態だ。

導入前の想定
  • 外注部品コスト約50%カット
  • 投資回収約3年
  • 3Dプリンター稼働率50%
導入実績
  • 1,000万円以上のコスト効果
  • 約2カ月で投資回収完了
  • 3Dプリンター稼働率90%以上

カートニングマシン(梱包用の箱折りを行う機械)用ショートスペイサーの開発

  • 従来品より設計変更が容易。部品交換効率がアップ。
  • 外部注文加工に比べ、約1,000万円のコストを削減。
  • 年間の生産工数削減効果も約30万円見込めることから、全体で約1,030万円のコスト削減を実現。

ホルダーの開発

商品によってチューブの太さが異なるため、充填装置にはさまざまなサイズのホルダーが必要になる。今までホルダー1個の作成費用は約3万円かかり、全てのホルダーをそろえると合計で約36万円のコストがかかっていた。Onyx材料で造形した場合のコストは、1個あたり約2,450円で、合計約2万9,400円になるため、92%ものコスト削減につながった。

リング状の樹脂製治具の開発コストが10分の1に

ビーカーは複数種類がありサイズも異なるため、柔軟に対応できるデザインを採用。治具の製作を外注に依頼すると数週間ほどかかるが、Mark Twoで造形すれば1~2日で製作でき、コストもおよそ10分の1になった。

社内コミュニケーションの活性化

セクション間の交流も増加。考えたものを作り、生み出せる楽しみにつながっている。

今後の活用

戸田氏は今後のMark Twoやその他3Dプリンター全般の活用に関し、次のように考えている。

「今後、Mark Twoに関しては、協働ロボット向けのアーム開発やチャック(把持ハンドの指の土台)治具の開発、ロボット工程を補助する治具の製作など、導入した工場でさらなる活用が進むようなバックアップをしていきたいと思っています。3Dプリンター全般としては、実際の化粧品パッケージ部品に使用する日も遠くはないと感じており、さらなる活用の一つとして検討を深めたいと考えています」と可能性に期待を込めている。