書類の保管場所を「楽々CDM」に統一。保管ルールの設定で検索性が向上し案件進行中・施工後の書類整理も不要

馬淵建設株式会社

業種
建設業
事業内容
総合建設業、一級建築士事務所、宅地建物取引業、発電事業
従業員数
321名(2023年5月末時点)
サイト
https://www.mzec.co.jp/

導入事例の概要

馬淵建設株式会社は、工事ごとに作成する工事関係書類が担当者個人のPCや現場のNASなどにバラバラに保管され、必要な書類を探し出しにくいという課題があった。そこで、大塚商会より「楽々CDM」を導入。全ての書類の一元管理を実現し、保管ルールを設けて標準化したことで誰でも書類を探せるようになった。

導入の狙い

  • 必要な書類を見つけやすくしたい。
  • 情報共有をスムーズにしたい。
  • 工事完了後の書類整理をなくしたい。

導入したメリット

  • 書類の検索性が格段に向上し全社横断的な情報共有が実現。
  • 工事完了後の書類整理が不要に。

導入システム

人と自然に優しい工法・施工で安全で快適な「動空間」を創造する

横浜市の馬淵建設株式会社(以下、馬淵建設)は、幅広い事業を展開する建設会社である。建築工事では共同住宅、教育・福祉施設、商業施設などを手掛け、リニューアル工事では耐震補強や大規模修繕、リノベーションなどを行い、土木工事では公共工事を主体に、道路、橋、鉄道などのインフラ整備に貢献している。1909年に横須賀市で「馬淵組」として創業して以来、その歴史は115年に及ぶ。

同社が手がけた代表的建築物は数多くあるが、中でも1925年に受注した、関東大震災で倒壊した横須賀鎮守府(現、在日米海軍司令部庁舎)の新庁舎建築工事は、戦後、在日米海軍司令部として使用され、その建物は「大正建築の傑作」と評された。2016年には「日本遺産」として認定され、現存している。こうした功績をあげながらも、常に「世のため、人のため」という創業者のモットーを守りながら、快適で住みよい社会づくりに貢献している。

1926年11月、「海軍横須賀鎮守府庁舎」の竣工を記念して撮影された一枚。工事に関わった職方らが並ぶ。「突貫の馬淵」との異名を立証し、わずか8カ月の工期を守り竣工した

一方、馬淵建設は優良中堅建設業者の組織である「一般社団法人日本建設業経営協会」に加入しており、同協会の中央技術研究所が主催するプロジェクトや、それ以外の組織・機関が行うプロジェクトに積極的に参加。建築・土木に関する最新知識や技術を積極的に採り入れてきた。

2000年には、会社の通称名として「Mzec(エムゼック)」を採用。これは「私たち馬淵建設(Mabuchi)は、熱意(Zeal)を持って、自然との調和(Ecology)、人とのふれあいを大切にする社会環境を創造・提供するクリエーター(Creator)として、社会との係わりを深めていく」というコーポレートメッセージをシンボライズしたものである。

この思いの下、馬淵建設(Mzec)は人と自然に優しい工法・施工の開発に取り組み、安全で快適な「動空間」(安心して暮らせる生活空間)の創造と提供に努めている。

ICT推進室を設置し戦略的な活用に向けて動き出す

卓越した建築・土木技術を追求する馬淵建設は、経営や業務の領域でも、最新技術を積極的に採り入れ続けている。

2018年には、中期経営計画に掲げた取り組みの一つとしてICT推進室を設置。同室を司令塔とし、生産性や品質の向上に資するソフトウェア製品の導入、セキュリティ強化や情報管理体制の強化、PCの利用状況の管理・監視など、ICTの戦略的な活用に向けて動き出した。ICT推進室は、2017年に発足したICT推進委員会(以下、ICT推進委)を発展させる形で設置された。

土木本部 土木生産管理部 専任部長 技術エキスパート 兼 土木技術課専任部長 兼 土木CSサポート室 専任部長 曽川充氏

「ICT推進委は、今後いかにICT活用を進めるのかを考える勉強会のようなものでした。そこで整理された課題を基に、具体的に取り組む組織としてICT推進室が立ち上がったのです」

データ管理ツールの導入を決定

ICT推進室の前身であるICT推進委は、社内における業務上の課題を洗い出し、それを解決するにはどのようなソリューションの導入が有効なのかを検討した。中でも大きな課題として浮かび上がったのが、工事関係書類の管理運用と情報共有がうまく行われていないことであった。

執行役員 建設事業本部 建築本部 副本部長 建築工事部 部長 建築CSサポート室 室長 高橋 孝匡氏

「工事関係書類は、案件(プロジェクト)ごとに積算書、設計図、工程表、品質関連、安全関連など、さまざまな種類を作成します。ところが担当者がそれぞれ作成するので、各自個人PCに保存していたり、現場所長が現場内のNASにまとめて保存したりすることが多く、他のスタッフが必要なときにそれらを探し出し、すぐに入手するのが非常に時間がかかっていました」

誰が、どこに書類を保管しているのかを聞いて、それを探し出すだけでひと苦労し、見つかったとしても保管場所によっては自分で取り出すことができず、保管した担当者にメールやファイルサーバーなどを経由して送ってもらうしか方法がなかったという。

「一つの案件に関わる書類は、全て一つの保管場所に取りまとめ、アクセス権限を持つスタッフが必要な書類を自由に取り出せるようにするのが理想です。これを実現するためにデータ管理ツールの導入を決定しました。そしてこれが、ICT推進委による最初のソフトウェア導入プロジェクトとなりました」と高橋氏は説明する。

現場スタッフが受け入れやすい楽々CDMを選定

ICT推進委員会は、書類の管理運用と情報共有が実現できるツールを3種類ほど検討。その中から、大塚商会が提案したプロジェクトデータ管理ツール「楽々CDM」を選定し、2017年に導入した。

楽々CDMは、建設業で発生するさまざまなデータをプロジェクトごとに簡単に共有・整理・保管できるツールだ。新規プロジェクトの開始時に、工事名、施主名、現場の所在地といった基礎情報を登録すると、そのプロジェクト専用の文書フォルダー(プロジェクトフォルダー)が作成され、各プロジェクトメンバーは、関連する書類をまとめて保存することができる。

しかも、一つのプロジェクトフォルダー内に、営業、設計、施工、維持管理などのサブフォルダーを自由に設定できるので、あらかじめサブフォルダーの設定ルールを決めておけば、プロジェクトに直接関与していないスタッフでも、どのフォルダーに、何の書類が入っているのかを類推しやすい状態で活用できるのも大きなメリットだ。また、検索機能も備えており、キーワードを入力すれば、膨大な書類の中から必要なものを簡単に呼び出すことができる。

自動転記機能にも利便性を感じる

高橋氏は、数ある候補の中から楽々CDMを選んだ理由について、「スタッフたちが使い慣れているWindowsのエクスプローラーとほとんど同じ感覚で、ファイルを見つけられる点が魅力的だと感じました。新しいツールを導入すると、現場からそれなりの抵抗があるものですが、これならすんなり受け入れられるはずだと評価しました」と語る。

建築本部 リニューアル工事部 部長 村井浩二氏

「あらかじめ基礎情報を入力しておくと、そのデータがExcelで作成する書類に自動転記される機能が付いているのも便利だと思いました。書類を作成するたびに同じ項目を何度も入力する手間がなくなり、業務の省力化につながっています

工事完了後の書類を保管するためデータ圧縮ソフトを導入

高橋氏は楽々CDMの導入効果について、「必要な書類が簡単に入手できるようになっただけでなく、過去のプロジェクトの書類も同じ保管ルールにのっとって整理されたことで、情報資産としての価値が高まりました。工事ごとの経験に関する情報が自由に呼び出せるようになり、次の工事における工程の改善や品質、安全性の向上に役立てられるのではないかと期待しています」と語る。

ちなみに馬淵建設では、工事が完了したプロジェクトの書類については楽々CDM上に設けた「アーカイブ」のフォルダーに保管している。かつては、自社内に設置したファイルサーバーに保管していたが、すぐに容量がいっぱいになることが悩みの種であった。その点、クラウドストレージと連携する楽々CDMを採用してからは、容量オーバーの心配はほとんどない。しかも馬淵建設は、楽々CDMと同時にデータ圧縮ソフトの「NXPowerLite」を導入したことにより、データ容量の半分以下で圧縮しアーカイブ保管できるようになっている。

楽々CDMのプロジェクト基本画面。プロジェクト情報(上部太枠)、フォルダー(左下太枠)、ファイル(右下太枠)が一画面で確認でき、フォルダーアクセス権設定もできる

曽川氏は、「従来は、工事完了時点で各保管場所に散らばった書類をまとめて整理する作業が通例でしたが、今では全ての書類がルールにのっとって楽々CDMに保管されるので、手間のかかるそれらの作業は不要となりました」と語る。

さらに、高橋氏はBCPの観点から、「楽々CDMを活用したこのようなデータ管理ができていたこともあり、コロナ禍でも大きな混乱はありませんでした。現状、どこにいてもデータを引っ張れるので、ある程度仕事が進められますが、以前はそれができなかった。それを考えると、有事に際し、思わぬ効果を実感できました」と評価する。データ管理の課題を解決した馬淵建設は、さらなるDXの進展や環境配慮型のプロジェクトなども視野に入れながら、ICT推進を推し進めていく。