緩衝材に梱包されたハードディスクの落下解析

負荷のかかった状態から落下を予測

緩衝材に梱包(こんぽう)されたハードディスクを地面に衝突させる試験において、緩衝材の穴とハードディスクが同寸法の場合と、緩衝材の穴がハードディスクの寸法に対し少し小さい設定にした2パターンについて解析しました。この落下解析を例に、多段階解析についてご説明します。

適切な緩衝材の選定と梱包設計は、輸送中や落下時の製品破損を防ぐために非常に重要です。この解析事例を通してその重要性の一端をご理解いただければ幸いです。

解析モデルおよび条件

図1に示すように、高密度ポリエチレン製の緩衝材に梱包されたハードディスクが地面(剛体)に衝突する状況を想定します。

緩衝材の材質高密度ポリエチレン
ハードディスクの材質緩衝材と比較し十分に高い剛性
地面の材質剛体
地面との衝突速度3(m / s)
摩擦の定義ハードディスクと緩衝材、および緩衝材と地面の境界面

図1:CADデータ

解析パターン

緩衝材の寸法設定は、図2に示すパターンとします。

図2:解析パターン

パターン状態abcd
(1)ハードディスクと緩衝材が抵抗なく接しており、緩衝材の穴径とハードディスクの寸法が同一である状態30mm150mm30mm150mm
(2)緩衝材の穴径がハードディスクの寸法に対しわずかに小さく設定されており、押し込むことでハードディスクが固定される状態29.8mm149.8mm30mm150mm

パターン(2)は、緩衝材をハードディスクに取り付けた際の初期応力(プリストレス)状態を考慮する必要があるため、次の二つの段階に分けて解析を実行しました。

  1. 段階1:プリストレス解析

    ハードディスクと緩衝材を組み付けた状態(初期干渉状態)から静解析を実行し、緩衝材に生じる変形と応力状態を評価する。この解析により、後続の落下解析における初期条件(プリロードFEM)を取得する。

  2. 段階2:落下衝撃解析

    段階1の解析結果を初期状態として、緩衝材に梱包されたハードディスクの地面への落下衝撃解析を実行する。

パターン(2)の解析の流れ

図3にパターン(2)における解析の流れを示します。

図3:パターン(2)の解析の流れ

  1. 地面を含む全ての部品が含まれたアセンブリデータを開く。
  2. ハードディスクおよび緩衝材から構成されるサブアセンブリデータに対し、1段階の解析を実行。
  3. 1段階の解析結果からプリロードFEMを作成。
  4. 新規にアセンブリデータを作成し、ハードディスク、緩衝材のサブアセンブリデータ(プリロードFEM含む)、および地面のデータを挿入。
  5. 落下解析の条件を定義し解析実行。
  6. 解析結果を表示

ここで、プリロードFEMは1段階の解析結果から取得したFEM状態です。2段階の開始点として使用できます。

動画1・2にそれぞれパターン(1)、パターン(2)の落下解析結果(VonMises応力コンター図のアニメーション)を示します。

  • * YZ平面でカットして表示しています。

動画1:落下解析結果(パターン1)

パターン(1)では、地面との衝突後、緩衝材がハードディスク表面を滑りながら移動する様子が確認されました。

この動画には音声は含まれません。

動画2:落下解析結果(パターン2)

パターン(2)では、地面との衝突後も初期の締め付け力による摩擦効果により、緩衝材がハードディスクに対して比較的安定した状態を維持していることが確認されました。

この動画には音声は含まれません。

まとめ

緩衝材に梱包されたハードディスクの落下衝撃解析を事例に、多段階解析の有効性を示しました。多段階の解析により、ボルト、スナップフィット、板バネなどで固定されている製品に対し、あらかじめ負荷がかかった状態における落下解析が可能となります。

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