BIM未来図 施工図作成会社のいま(中)作業フローに沿ったツールづくり

専門工事会社の機能充実

施工図作成会社のM&Ftecnica(東京都江東区)が、施工BIM支援のRevitアドオンツール『MFTools』を販売して1年が経過した。同社の守屋正規代表取締役は「数量の把握は現場管理で絶対的な武器となる。歩掛かりを把握するということは工程管理であり、これがきちんとできていれば品質管理にもつながる」と、現場の作業ワークフローに沿った支援ツールづくりを進めている。

機能は、既に10数項目にまで達した。生コン打設計画支援の機能は生コン車搬入のタイミングを計算しながら1日に打設できる量を把握し、垂直打ち継ぎ(工区分け)ラインを自動作成する。外部足場計画の機能は、設定した建地ラインに基づき足場の平面割付図や立面図寸法を自動生成し、数量も把握できる。

「MFTools」機能は十数項目

MFToolsは、BIMの中にあるデータを最大限に使うことをコンセプトに設定し、通り芯や寸法の自動配置など直感的な操作性にもこだわっている。同社は自らの施工図作成業務でもMFToolsを積極的に活用しており、担当者がRevitを使う中で発見したアイデアをもとに、新機能が生まれることも少なくない。出力図面への自動寸法表示や、色分けのモデルカラーマネジメントツールなどは、施工図作成業務の中から生まれた代表的な機能だ。

「Revit」で施工図作成

ゼネコンの現場を下支えする専門工事会社の視点に立った機能も充実させている。壁分割ツールがその一つだ。BIMデータの中には壁情報が下地の素材まで細かく入力されているため、それを分割して表記できるようにした。見える化によって現場の作業員も状況を把握しやすい。現場調整が多い作業だけに、搬入前のプレカットが可能になり、材料のロス率も最小限に抑えられる。守屋代表は「このようにBIMデータの活用はSDGs(持続可能な開発目標)にもつながっていく」と付け加える。

近年、ゼネコンの施工現場では、デジタルツールの活用が活発化している。ゼネコン各社はBIMデータをMR(複合現実)、VR(仮想現実)、AI(人工知能)と連携し、現場の生産性向上や品質確保に生かそうとしている。そのデータベースとしてBIMは存在感を増している。同社はBIM対応にあわせ、進展する現場のデジタル化についても幅広く支援しようと動き出した。

守屋代表自身が統括するICT事業部門が、その中心的な役割となり、MFToolsのシステム開発を担当する。ゼネコンの要望を整理し、何が有効な機能であるかを日々検証している。現在は、現場を支えている熟練技能者の技や経験をデータ化し、鉄骨建て方や配筋作業の自動化についても検証中。守屋代表は「経験が浅い技能者でもきちんとした仕事ができる支援ツールを目指していく」と先を見据えている。

MFToolsの販売代理を務める大塚商会は、進展する施工BIMへの販売強化の一環として、「MFToolsがBIMモデルをつくることではなく、使うことを前提にしている」点を高く評価し、有効な施工BIMの支援ツールに位置付けている。販売開始から1年が経過し、大手・準大手ゼネコンでも徐々に活用が進んできた。

M&Ftecnicaは、MFToolsを出発点に、施工図作成業務で培ったノウハウや経験を発展させる業容拡大のビジネス戦略を打ち出そうとしている。守屋代表は「未来にとって建築デジタルがどのように寄与するのか研究し、挑戦していく」と、力強い一歩を踏み出した。

  • * 本ページは、株式会社日刊建設通信新聞社様が2023年2月8日に掲載された記事をご提供いただき、掲載しています。

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