BIM未来図 施工図作成会社のいま(下)こだわるライセンス料の低価格

今秋にも最新版リリース

施工図作成会社のM&Ftecnica(東京都江東区)は、Revitアドオンツール『MFTools』の年間ライセンス使用料を7万円に抑えている。同社の守屋正規代表取締役は「多くの現場で手軽に使ってほしい」と、あくまでも低価格にこだわる。販売開始から1年が経過し、現在の契約数は60ライセンスに達した。「ゼネコンの施工BIMがさらに進展すれば、一気に需要が高まる」と期待を込める。

「MFTools」の年間ライセンスは7万円

既にユーザーからは、MFToolsの機能について数多くの要望が寄せられている。「現場からの声は多岐にわたる。その全てを機能として実装するのは難しいが、着実に機能を増やし、使い勝手の良い施工BIM支援システムとして進化させる。現場にBIMデータの価値を最大限にもたらしたい」。今秋に向けて最新版のリリースも準備している。販売目標として、400ライセンスを当面の目安にする。施工BIMへの対応を強化している大手クラスの中で、全現場にBIMモデルを提供している企業があるように、いずれゼネコンの現場は生産性向上の手段として主体的にBIMデータを活用する流れが鮮明になる。守屋代表は「それまでに最前線の現場向けBIM支援ツールとして浸透させたい」と力を込める。

だからこそ、現場が無理なく使えるように年間7万円という価格設定にこだわる。ユーザーにはファミリーデータも無償で提供しており、同社は低価格で現場が手軽にBIMデータを使える環境づくりに力を注ぐ。「まずBIMに触れてもらい、データを作業の効率化にどう使っていくか、具体的なイメージを持ってもらうところから始めてほしい。そこから現場のデジタル化が進んでいく」

同社は、本業の施工図作成でBIM対応を推し進めながら、MFToolsを足がかりにBIMデータの活用促進を図る一環として、外部との連携構築にも乗り出している。2019年にはプレキャスト(PCa)工法特化のRevitプラグイン「AGA CAD」を提供するリトアニアのAGA CAD社や、Revit配筋支援ツールを提供するドイツのSOFiSTiK社との連携を開始した。22年7月には野原ホールディングスと業務提携を結び、BIM設計・生産・施工支援プラットフォーム「BuildApp」の共同開発に乗り出すことも決めた。

多様なプレイヤーとコラボする

守屋代表は「多様なBIMのプレイヤーを、データとテクノロジーでつなげ、コラボレーションする流れを確立したい」と説明する。そのための組織拡充にも着手した。同社は生産設計やICT事業、教育事業、企画推進営業の4部門で構成し、本業の生産設計部門は宮崎支店が中心的な存在となっている。現在はグループ会社を含めて総勢70人の体制だが、「近い将来には200人規模まで拡大したい」と考えている。具体的には、ベトナムにBIMモデリングの拠点を置くとともに、国内にもBIMセンターを配置する計画だ。

「ゼネコンの施工BIMの流れは広がりを見せ、おそらく2、3年後には主流となるだろう。われわれは建築デジタル化のメリットをさらに深め、より高いニーズに応えていける企業を目指していく」。施工図作成会社の同社はMFToolsを基軸に、新たなステージに進むために動き出した。『建築デジタル、マジで、やる』という経営方針が今、独自のビジネスモデルとして”カタチ”づくられようとしている。

  • * 本ページは、株式会社日刊建設通信新聞社様が2023年2月9日に掲載された記事をご提供いただき、掲載しています。

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