射出成形用金型の構造解析
樹脂充填時の金型の強度を解析する
射出成形用金型は多くの部品から構成されており、成形過程における負荷に耐えられる構造が要求されます。ここでは、樹脂充填時のキャビティ内圧力による金型の強度評価をSOLIDWORKS Simulationにより解析した例をご紹介します。
問題
図1に例として取り上げる金型の3Dモデルを示します。3Dモデルは、金型の剛性への影響が大きい部品から構成されたシンプルなアセンブリモデルとしています。各部品の材料はS50C(降伏応力365(MPa))とします。
ここでは、樹脂の充填時に発生するキャビティ内圧力による金型への影響について解析します。
キャビティ内圧力の見積り
キャビティ内圧力は、金型の型締め力にキャビティのパーティング面に対する投影面積をかけた値となります。金型の型締め力はSOLIDWORKS Plasticsにより求めることができます。SOLIDWORKS PlasticsはSOLIDWORKS統合型の樹脂流動解析ソフトウェアで、成型品の外観不良(ひけ、ショート、そり、ウェルドなど)を予測することができます。
SOLIDWORKS Plasticsにより樹脂充填過程の解析を実行すると、図2に示すような型締め力の経時変化グラフを出力することができます。
図2より必要な型締め力は最大で約70(ton)となるため、キャビティ内圧力は次のように見積ることができます。
70(ton)×9.8(m / s2)/0.11(m2)=6.2(MPa)
- * 0.11(m2)はキャビティの投影面積
金型の構造解析
次にSOLIDWORKS Simulationにより静解析を実行します。図3に解析条件を示します。
拘束条件は、固定取付板の成型機への取付面を固定します。荷重条件は、キャビティおよびコアの内面に6.2(MPa)の圧力、可動側取付板に70(ton)の型締め力を定義します。各部品間の接続条件は、接触(各部品が離れたり滑ったりできる状態)を定義します。また、取付板とプレート間のボルトによる締結は、仮想したボルトの軸力により2部品を締結できるボルト結合を定義します。
取付板、プレート、スペーサブロックの安全性確認
金型全体の変位分布(動画)をご覧ください。変位分布を確認することにより、金型全体の変形傾向が分かります。
図4に応力分布を示します。局所的な応力集中箇所や金型全体の応力分布を把握できます。応力の最大値は131(MPa)となっており、そのほかの応力発生箇所もS50Cの降伏応力365(MPa)に対し低いため安全と評価できます。
コア、キャビティ、ガイドピンの安全性確認
図5にコア、キャビティおよびガイドピンの応力分布を示します。金型の内部にある部品についても図5に示すように、個別に応力分布を表示することができます。コア、キャビティ、ガイドピンとも応力値はS50Cの降伏応力と比較し十分に小さい値となっていることが分かります。
ボルトの安全性確認
ボルト結合を定義した場合は、図6に示すようにボルトに発生するせん断力、軸力、および曲げモーメントを確認することができます。また、ボルトの強度データ(材料、有効断面積、安全率)を入力しておくことにより、解析後に注意が必要なボルトを抽出することが可能です。
型開き量の確認
XZ断面におけるZ方向変位分布および変形の様子を動画でご確認ください。キャビティ内圧を受け型が開いていることが分かります。
型開き量を図7に示します。キャビティおよびコアのそれぞれのパーティングラインにおけるZ方向変位を問い合わせ機能により、Excelへの出力で確認できます。図8より型開き量の最大値は、0.023mm程度と一般的な許容値に対し低い値になることが分かります。
まとめ
ここでは、SOLIDWORKS Simulationにより複数の部品から構成される金型の構造解析例をご紹介しました。事前に金型の変位、応力などを予測できれば強度不足による設計変更を回避したり、過剰品質を避け軽量化することができます。金型の強度検討にお悩みでしたらSOLIDWORKS Simulationをご活用ください。