熱的影響によりはんだに生じる熱応力の検討と対策

はんだの熱応力を検討する

SOLIDWORKS Simulationは、熱解析により求められた温度分布を静解析にエクスポートし、強制的な熱膨張または熱収縮による熱応力を確認することができます。ここでは、電子基板とバスバーのはんだ付け箇所の熱応力について、検討と対策を例に熱応力解析の流れをご紹介します。

問題

解析対象は、図1に示す基板、バスバー、コネクター、はんだから成る単純なモデルとします。基盤は四隅の取り付け穴でネジ止めされており、バスバーがはんだ付けされています。通電時間は5秒間でバスバーが発熱するものとし、5秒後のはんだの熱応力を検討します。

図1:解析モデル

それでは解析の手順を見ていきましょう。

熱解析の実行

まず、熱解析を実行し5秒後の温度分布を求めます。解析条件は、図2に示すようにバスバーに生じる発熱量(ここでは時間依存の発熱量を定義)、初期温度(ここでは20℃)、および表面より外部への熱伝達:熱伝達係数5W / (m2・K)、雰囲気温度20℃を設定します。

図2:熱解析の条件

SOLIDWORKS Simulationの熱解析の熱伝達は、各面に熱伝達係数を手入力します。今回の解析では、モデル全体の面において一定、等分布の割合で放熱、吸熱すると仮定しています。

仮にファンなどで冷却している場合は、SOLIDWORKS Flow Simulationにより、熱伝達係数の分布を考慮した熱流体解析をすることをお勧めします。

SOLIDWORKS Flow Simulation 製品情報

図3に5秒後の温度分布を示します。最大温度はバスバーに生じており、はんだの温度は70℃~80℃まで上昇していることが分かります。

図3:熱解析の結果

熱応力解析の実行

次に静解析を実行し、はんだの熱応力を求めます。熱応力解析は、静解析スタディーを作成し、荷重条件として熱解析より求められた温度分布を定義します。なお、図4に示すように温度荷重を定義する方法は次の三つがあります。

  1. 温度荷重を入力:一定温度を入力。
  2. 熱伝導解析の温度結果を読み込む:熱解析により求められた温度分布を入力。
  3. SOLIDWORKS Fow Simualtionの温度:熱流体解析より求められた温度分布を入力。

図4:熱荷重の定義画面

図5に変位、応力分布を示します。はんだの最大応力は61MPaとなりました。

  • 図5:熱応力解析の結果 変位分布(変形倍率40倍)

  • 図5:熱応力解析の結果 応力分布

熱応力の低減検討

熱解析で求められたはんだの応力は合金の降伏応力と比較し低い値ですが、繰り返しの負荷により疲労破壊する可能性があります。そのため、はんだへの負荷を減らす対策として、バスバーの形状を変更し温度を下げる検討をしました。

図6に変更後の形状、温度分布、変位分布、および応力分布を示します。温度分布はバスバーの放熱面積が増えたため変更前と比較し10℃程度下がっており、はんだの最大応力は61MPaから43MPaと約30%低減しました。

  • 図6:バスバー形状変更後の解析結果(変更後の形状)

  • 図6:バスバー形状変更後の解析結果(温度分布)

  • 図6:バスバー形状変更後の解析結果(変位分布、変位倍率40倍)

  • 図6:バスバー形状変更後の解析結果(応力分布)

まとめ

ここでは、SOLIDWORKS Simulationによる熱応力解析の例をご紹介しました。発熱する部品がある場合、熱による影響が予期せぬ故障の原因となります。熱応力解析により事前検証し、熱の影響に対し問題ない設計をしましょう。

  • * 熱解析を実行するためにはSOLIDWORKS Simulation Professionalのライセンスが必要です。