株式会社長谷川建築企画(設計事務所事例)
建物の設計からメンテナンスまでを手がけるグループ企業がRevitを導入。
BIMでつなぐ新事業展開を目指す
株式会社長谷川建築企画(以下、長谷川建築企画)は、共同住宅の意匠設計で高く評価される設計事務所だ。2021年に「Revit」を採用して、BIM導入を開始した同社は、建築設計から施工、メンテナンスまでワンストップで対応するグループ企業と共に、既存建築の維持管理や再開発事業などもBIMデータでつなぐ取り組みを開始している。
設計からメンテナンスまでワンストップでサービスを提供
長谷川建築企画は、意匠設計に軸足を置き、大手デベロッパーを主体としたプロジェクトに参画する設計事務所だ。1990年の創業以来、特に都心部の賃貸・分譲共同住宅などの設計・監理を数多く手がけている。そんな同社の転機になったのは、M&Aによる2021年の光洋商事HDグループへの参入だった。
グループは現在傘下12法人が建物に関わる主力6事業を展開。設計からメンテナンスまでワンストップで対応し、大手に負けないサービスを提供することを目指している。
グループの支援により全スタッフへBIMツール導入
長谷川建築企画がグループインを通して実現したいと考えたのは、生産性向上を通した事業の発展だった。課題が山積みする建築業界において、今後単独で成長を実現するのは難しいと判断したことがその理由である。
「ストック型ビジネスであるビルメンテナンス事業は利益が読みやすい一方、技術力向上のための投資が多くは必要とされません。それに対してフロー型ビジネスである設計事務所は常にリソースが求められ、中長期的な視野に立った判断は難しいという問題があります。実は、ストック型とフロー型のビジネスを組み合わせたいと考えていたことも、長谷川建築企画のような設計事務所をグループに招きたいと考えた理由の一つでした。そういう意味では、今回のBIMの取り組みはまさに渡りに船でした」
設計業務に携わる全スタッフへRevitライセンスを平等に提供。さらにBIM推進を目的とした専門部署が立ち上げられることになった。
BIM設計推進室を立ち上げマンツーマンの研修を実践
社内推進、作図、研究を担当する専門部署として設立されたBIM設計推進室(BIM Lab)の特色の一つは、社外でBIM推進経験がある人材を採用した点である。白羽の矢を立てたのは、前職の建具メーカーで長くファミリ整備を担当していた執行役員 BIM設計推進室(BIM Lab)ディレクターだ。
「2年前に設計部門全員を対象とした集団研修を週1回のペースで実施することからスタートし、半年ほど経過した後、参加者の習熟度に差が現れ始めました。スタッフが最も興味を持つのは、やはり手元の実案件にBIMがどう展開できるかです。全体研修でそうしたニーズに応えることが難しいと判断してからは、個別研修に切り替えました」
「設計者にはまずBIMのI(information=情報)とは何か、その情報をどうプロジェクトで運用できるのか、情報の重要性・有用性を理解してもらうことを最も大切にしています」
改修 / PM / FM / BMでBIMを活用し収益を上げる仕組みづくりへ
今後の展望として同社が挙げるのは、既存建物のメンテナンスや再開発事業へBIMを活用することだ。「新築物件の件数が減少し、ストック件数が積み増しされる中、新築物件だけを前提にBIMを運用しては、マーケットシュリンクは目に見えています。そこで注目したのが、建築時の図面がない古い建物の維持管理にBIMを活用する取り組みです。直近では、とある製パン工場を弊社がBIM化した案件があったのですが、お客様からは大変好評でした。当社としても、既存建物のBIM化を新たなビジネスとして立ち上げることを本格的に計画しています」
この事例でご紹介した製品
BIMを詳しく知りたい方は…
2014年6月に「Revit かんたんレシピ BIM・Revitが分かるガイドブック」の第1版を発行して、8年が経過しました。その間、当初意匠設計で主に使われていたRevitは、構造、設備、製造業といった分野から施工段階でも使われるようになり、ユーザーも年々、増えつつあります。BIMを取り巻く環境も第1版発行当時とは大きく変わってきたため、8年ぶりにガイドブックの構成を見直し、第2版を発行する運びとなりました。
今回は「建設業界で話題のBIM」「BIMとRevitの関係」「Revitはここがすごい!」「実際にRevitのBIMモデルを見てみよう」などという構成で、BIMとRevitの関係や生産性向上に有効なRevitの3Dモデリングを交えて、Revitは既存のCADとともに使用する新しい設計ツールとしてご紹介しています。