3Dをつくり、ためて、つかうことで実現する製造業のDX

製造業DXを3Dで実現するためのヒント

『製造業のDXを3Dで実現する』の著者で、3Dを「つかう」ソリューションと知見を豊富に持たれているラティス・テクノロジー鳥谷氏をお迎えし、製造業のDXを3Dでどのように実現するかお話を伺いました。

武藤:これまで私たちは、3D CAD、CAEやCAM、3Dプリンター、そしてPLMなど3Dに関わるビジネスを長年行ってきており、3Dを「つくり」、それを「ためる」ということに関しては、お客様と一緒に取り組んできたと自負しています。これから3Dを「つかう」ということも一層強化し、3D設計から3Dデータ活用に至るまでのソリューションを一貫して提供し、お客様の変革をご支援できればと考えています。

今日は3Dを「つかう」ソリューションと、その知見を豊富に持たれているラティスの鳥谷さんとお話しできることを、私も楽しみにしていました。大塚商会のプロモーション、サポートを含めCAD部門一丸となって取り組みたいという意図でプロモーションの鎌田・三本、サポートの内海にも参加してもらいました。

鳥谷:ご調整ありがとうございます。大塚商会さんは、長年3D CADの世界No1ディーラーで、また、ラティスのXVLソリューションも扱っていただいてきました。その営業部門を率いてきた武藤さんと、製造業のDXをどのように促進していくのかという議論をできる今日の場を非常に楽しみにしていました。昨今、ほとんどの製造業が3D CADを導入し、3D設計が当たり前になっている中で、まだ本当の意味で3Dを活用したDXは立ち上がっていないと私は見ています。そのあたりはどのようにお感じでしょうか。

武藤:何をもって3Dの立ち上げとするかという定義ははっきりさせる必要があるでしょう。3D CADは広く普及していますが、3D設計はまだ2割程度。そして3Dを全社で使うという観点では、できている企業は、まだまだ少ないというのが実情でしょう。

鳥谷:3Dを導入されながら、全社で活用されていないのは、どこに原因があるのでしょうか。

武藤:それは3D導入に際して、機能に関してはいろいろ議論するが、導入した後にどのように使い、どこを目指すかという議論やコンセンサスが不十分なのではないかと思っています。かつて当社のセミナーでご登壇いただいたお客様が、3D CADはパスポートだと表現されていたことがあり、私は非常に強い印象を受けました。

鳥谷:確かにパスポートは分かりやすい表現ですね。パスポートを取得することは、海外に出て他国へ入国するために必要不可欠です。しかし、どこの国に何をしに行くのか目的がなければ、取得すること自体には意味はないですものね。

武藤:われわれも3Dの導入をお客様と進める中で、目指すべきゴールや、その次のステップをご提案するまではあまり踏み込めていなかったと反省しています。

鎌田:私はプロモーションの観点で情報を集めており、ものづくり白書に目を通す中で、2022年版において、従来働き方改革や社内コミュニケーションの文脈で行われてきたデジタル投資が、ビジネスモデルの変革という大きな文脈の中で行われるようになっていると記載されていました。

内海:営業サポートをしている、私たちの現場感覚とも合致しており、経営者の意識が変わってきていることを感じています。

鳥谷:私は分かりやすくするために、社内プロセスを変えるのがDX(Digital Transformation)、ビジネスモデルを変えるのがBX(Business Transformation)と区別して話をしています。そう考えるとアメリカのITベンチャーではBXが多い。もう老舗になりましたがアマゾンなどは、BXの典型的な例となります。

武藤:われわれが日ごろ取引している製造業では、ものを作っているのでBXは簡単にはいかないですよね。

鳥谷:まさしくそのとおりで、製造業の場合はBXに一足飛びにいくのではなく、まずDXを進めるのが先だと考えています。日本の製造業の良さでもある、現地現物や図面といった既存文化を生かしつつ、そこのDXを進めていく、その先にBXが来るのではないでしょうか。武藤さんはどう感じていますか。

武藤:最近では多くの企業がDXに取り組まれていますが、企業によりかなり濃淡ははっきりしています。そんな中、DXに真剣に取り組まねば、企業の存亡に関わるという危機感をもって真剣に取り組む企業が少しずつですが、出てきたと感じています。

鳥谷:しっかりとDXに取り組んでいる企業に特徴はあるのでしょうか。

武藤:トップダウンでDXに取り組もうとしている企業は、しっかりと活動されている企業が多いと感じています。逆に鳥谷さんにお聞きしたいのですが、鳥谷さんは『製造業のDXを3Dで実現する』という著書も出されており、いろいろな方とDXについて議論されていますよね。鳥谷さんの考えるDXとはどのようなものですか。

鳥谷:3DでDXを実現するという観点でお話をしますと、PLMだけでは、3Dデータの活用はCAEやCAMといった設計周辺にとどまり、設計のDXにしかならない。そう考えるとPLMの後に来るダウンストリームのDXが必要です。設計DXとダウンストリームDXの両方があって、3Dを活用した製造業のDXが実現できると考えています。ラティスでは、ダウンストリームに実機や紙図面を置き換える軽量3DデータXVLを流通させることを提案しています。このデータ流通の仕組みをXVLパイプラインと称し、それを実現するシステムも提供しています。ダウンストリームDXは、さらに生技DX、サービスDX、工場DXへとブレークダウンされ、それぞれのDXに対しソリューションを展開しています。

武藤:冒頭にお話しした、まさしく3Dを「つかう」という領域のお話ですね。せっかく作った3Dデータを営業や、保守、製造部門などで、擦り切れるまで活用しないともったいないというわれわれの問題意識とも合致します。

鳥谷:先日IT企業の役員の方とDXについて議論したのですが、DXの本質はデータを共有して活用することではないかという結論にたどり着きました。

武藤:DXの本質がデータを共有し、そこを推進するということであれば、3DおよびXVLが必要だということがよく分かります。先ほどお話された生技DX、サービスDX、工場DXというのは具体的にどのようなものなのでしょうか。

鳥谷:生技DXの成功事例は、どんどんと蓄積されてきています。先日は、建機を作っている竹内製作所様にラティスのイベントで事例を発表いただいたのですが、上流では3次元設計をしっかりやって、PLMにデータを蓄積し、BOMと3Dは統合されていました。その状況のもと、XVLを用いて工程設計をデジタルで行うことで、現場で起こっていた問題を3D上で早い段階でつぶしこんでいます。また3Dの作業指示書をWebでグローバルに展開し、それをタブレットで見られるようにしたことで、海外生産拠点を含め生産性を大幅に向上されました。

武藤:まさしくデジタルツインを作って、実機の代わりにデジタルで検証するというお話ですね。

鳥谷:私たちは実機を置き換え可能な3Dモデルを「3Dデジタルツイン」と呼んでいるのですが、それが現実の世界になりました。昨年講演いただいたガソリン計量機器のタツノ様の取り組みはサービスDXの好例です。これからのEVの時代に備えて、柔軟に対応できるシステムをということで3Dデータ活用の取り組みを始められました。図研プリサイトさんのVisual BOMという仕組みを使い、PLMデータに対してサービスBOMを含むBOM構造をしっかりと定義され、ラティスの提供するXVL Web3Dの技術を使ってサービスコンテンツの配信システムを作られました。それができますと、サービスパーツの受発注システムやWebショップができるわけで、まさしくDXからBX。すなわちビジネスの変革へと取り組まれている事例となっています。

武藤:XVLを使って生技DXでは、製造BOM、サービスDXでは、サービスBOMを作るというのが肝ということですね。両社の事例とも、全社最適にかなった素晴らしい3Dの活用法で非常に参考になります。

鳥谷:工場DXに関しては、最近、3D CADでも普及し始めたセマンティックなPMIの情報をXVLに変換して持ってこられるように取り組んでいます。これまで紙図面上に記載されていた、幾何公差も3D図面上で確認できるようになります。設計は2D図面作成から解放され、情報流通の速度は格段に上がり、サプライヤは必要な情報を3D図面で的確に把握できるようになります。軽量3DのXVLを活用した3D正の取り組みが先進的なお客様で始まっています。

3D 図面が参照可能な無償ビューワ「XVL Player」をリリース ~3D 図面の流通促進で製造業 DX を支援~

鎌田:自動車業界でも、3D正の世界はまだ緒についたばかりと聞いており、普及には時間がかかると思っています。一方、そういった3Dを活用する文化が製造業で根付いてから、企業の中で3D設計を進めましょう、3D文化を醸成しましょうでは手遅れになります。つくる、ためるという私たちが以前から得意としている領域に関しては、しっかり促進して、3Dを使うという場面に向かって、足場を固めていきたいです。

鳥谷:3D図面に関しては、サプライヤのうれしさは何なのかを先進メーカーと突き詰めている最中です。これが明らかになって今後普及していくということを想定しますと、3D正の世界は確かに10年単位の時間が必要になるかもしれませんね。

武藤:私たちは、3D正や全体最適を目指す動きは一足飛びにはいきませんので、全体最適を意識しながらも、部分最適を図っていくカジュアルな全体最適を目指せればと思っています。

鳥谷:言われたとおりで、全体最適は短期間で達成できるものではなく竹内製作所様、タツノ様ともに数年がかりで取り組まれており、現在もさらにその先に向かってチャレンジされています。大事なことは、早く取り組みを始め、成功を積み重ねながら、他社より少し先を行くことが競争戦略上は優位でしょう。そのためにも、大塚商会さんには、「つかう」の土台作りとして、3D CADの普及、すなわち「つくる」、「ためる」というところに、ご尽力いただきたいと思っています。

内海:鳥谷さんが言われたように「つかう」ためには、その前段階として、真の3D設計への取り組みが重要だと考えています。そこを推進していくためには、われわれサポートメンバーの役割は非常に重要だと考えております。ここ数年3Dの活用ステージまで進んだお客様も増えてきています。中には、XVLのWeb3D技術を使って、タブレットで自社製品を見るという先進的な取り組みに挑んでいるお客様も出てきており、私たちの中でも事例と知見が蓄えられてきています。

武藤:今日鳥谷さんとお話しする中で、3Dを活用してDXを進めていくうえで多くのヒントをいただくことができましたので、こちらをぜひ社内でも共有していきたいと思います。3Dを活用することの目的や、ゴールをお客様と共有したうえで、より一層3Dを「つくる」、「ためる」、そして「つかう」の三拍子をお客様と進め、日本の製造業のDXに貢献できればと思っています。

鳥谷:3Dを「つくり」、「ためて」、「つかう」というのは、まさに製造業のDXを3Dで実現することそのものです。世界で一番3D CADのお客様を持つ大塚商会さんと3Dを使ったDXを推進することは日本の製造業に大きなインパクトを与えられると確信しています。今後が本当に楽しみです。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

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3Dを活用した、製造業 DX 実現のためのソリューション

主な内容

  • 3Dデータ活用によるDX推進
  • 3Dを活用した、製造業DX実現のためのソリューション

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