Revitベンチマークで検証 BIMによる設計プロセスの変革にThinkPad P1 Gen4がもたらすインパクト

国内BIM普及のけん引役がレノボの新鋭
モバイルワークステーションの実力と可能性を点検

日本の建設業界で普及の裾野を広げつつあるBIM(Building Information Modeling)。このBIMによる設計のプロセス変革に、レノボのモバイルワークステーションThinkPad P1 Gen4はどのようなプラスの効果をもたらしうるのでしょうか。

今回、その検証を建築設計事務所アーキ・キューブの代表取締役であり、BIMの国内普及にも取り組む業界の著名人、大石佳知氏に依頼しました。その検証結果について大石氏に伺います。

インテル Core i7 プロセッサー搭載

このプロセッサー・ファミリーはハイエンドのPCに搭載され、業界をリードするCPUパフォーマンスによりディスクリート・レベルのグラフィックスとAIアクセラレーションを実現します。

Revitベンチマークと体感でBIM用途での実用性を確認

ThinkPad P1 Gen4は、CPUとして「第11世代 インテル Core i7 / i9 Hプロセッサー」などを採用し、グラフィックスカード(GPU)として、ハイエンドの「NVIDIA RTX A5000 Laptop(以下、A5000)」をサポートしたモバイルワークステーションです。ThinkPad P1シリーズに共通するコンパクト設計をそのままに、アスペクト比16:10の16.0インチ大型ディスプレイを採用。WQUXGAディスプレイモデルでは、パネル発色の経年変化に対し、いつでも出荷時の発色に補正できる「X-Rite Pantone ファクトリー・カラー・キャリブレーション機能」も標準で搭載しています。

建築設計事務所アーキ・キューブ 代表取締役
大石佳知氏

「こうしたカタログスペックからも、ThinkPad P1 Gen4がBIMでの実用に十分耐えうるモバイルワークステーションであることは理解できます。ただし、その実機に触れた際の体感性能とベンチマークテストを行った結果は、私の想像を超えるものでした」と、アーキ・キューブ代表取締役の大石佳知氏は語ります。

アーキ・キューブは岐阜県岐阜市に本拠を構える2000年創業の建築設計事務所です。創業のころより3次元(3D)CADや3Dプリンターを使った設計プロセスの変革に取り組み、2012年にはオートデスクのBIMソフトウェア「Revit」を導入。鉄骨造建物の基本設計での運用を始動させました。現在では同社の社員全員がRevitを運用しています。

同社が日常的に使用しているどのワークステーションよりもThinkPad P1 Gen4の性能は高く「そのことはRevitを動作させてみてすぐに体感できたほどです」と大石氏は言います。

そうした体感スピードの数値的な裏づけを取るべく、大石氏はRevitを使ったベンチマークテストをThinkPad P1 Gen4と、他社(仮にA社と呼ぶ)の主力モバイルワークステーションに対して実施しました。ベンチマークソフトには、Revitを稼働させるハードウェアの性能計測に標準的に使われている「RFO Benchmark(v3.3、build 09.05.2022)」を使用。その結果として図1に示すような結果が得られています。また、表1は、テストに使ったThinkPad P1 Gen4とA社製モバイルワークステーションのスペックです。

図1:Revitベンチマークの結果

図2:Revitベンチマークに使用したハードウェアのスペック

レンダリングと作図の並行処理が軽快に

図1に示したとおり、モデル生成性能とグラフィックス性能の両面においてThinkPad P1 Gen4の方が、A社製モバイルワークステーションよりも高く、かつ、それぞれのほぼ全ての項目においてThinkPad P1 Gen4の方が高い性能値を示しています。

また、大石氏は今回、自社内で使用しているデスクトップワークステーションや、モバイルワークステーションに対しても同じベンチマークテストを実施しましたが、ThinkPad P1 Gen4との性能差は歴然であったといいます。

これらのベンチマーク結果は、ThinkPad P1 Gen4の実力を改めて裏づけるものです。もっとも、BIMソフトウェアのユーザーにとってより重要なのは、こうした細かな性能値ではなく、その性能を持ったハードウェアによって実際の設計作業がどれだけ効率化されるかであると大石氏は指摘し、次のような説明を加えます。

「例えば、Revitでは、リアリスティックモード(オブジェクトのマテリアルを3Dビューに表示させる表示モード)で作図が可能です。この機能は非常に便利ですが、そのワークロードは極めて重く、相当性能の良いワークステーションでなければ快適なパフォーマンスは発揮させられません。その機能がThinkPad P1 Gen4では軽快に動作します。これはRevitユーザーの作業効率を高めるうえで大きな意味を持つはずです。また、業界の主要なアプリケーションのISV認証も取得し、動作環境テストを行っているため、サポート面でも安心して業務で使用することができます」

図3:Revitによる3Dビューの生成イメージ(RFO Benchmarkでの表示例)

絶妙なキータッチ、画面の美しさもBIMにフィット

データの処理スピードだけではなく、ThinkPad P1 Gen4のキーボードの使いやすさもBIMでの作業効率を高めるうえで有効であると大石氏は評価します。

「ThinkPad P1 Gen4のキータッチは絶妙で、他社のモバイルワークステーションにはないキーボードの使いやすさ、操作の快適さがあります。モバイルワークステーションでは、薄さを追求するあまり、キータッチの感触が悪くなり、それが設計者のストレスにつながることが多くあります。そのストレスを感じなくて済む点はThinkPad P1 Gen4のアドバンテージです」

また、ThinkPad P1 Gen4の画面の高精細さ、美しさもBIMでの設計に有効であると大石氏は続けます。

「画面が高精細であるということは、Revitなどで描いた建物の外観・内観を設計者イメージのまま美しく再現できるということです。これは、施主などに完成イメージを伝えるうえでとても重要なポイントです。当社では完成イメージを使った施主とのコミュニケーションに3DデータをWebブラウザーで表示させる『Autodesk Viewer』などを用いていますが、ThinkPad P1 Gen4のような画面の高精細さがあれば、施主に見せる画像品質も設計者が正しく点検・確認できるはずです」(大石氏)。

さらに大石氏によれば、これまではRevitなどのBIMソフトウェアをパフォーマンス良く動作させられるモバイルワークステーションがほとんどなく、3Dビューを用いて施主や施工関係者(大工など)との打ち合わせや施主へのプレゼンテーションを行う際には、プレゼンテーション用の3Dデータだけをモバイルワーク専用のワークステーション、ラップトップPCに入れて持ち運んだり、印刷出力して提出したりするのが通常だったといいます。それに対して、ThinkPad P1 Gen4を使うことで、BIMソフトウェアを使った設計作業と3Dビューを用いた出先での打ち合わせ、プレゼンテーションを1台でこなせるようになり、その際に施主、施工関係者から受けた要望を即時的に元図に反映させることも可能になります。

「加えて言えば、ThinkPad P1 Gen4のディスプレイは180度の角度まで開けます。ゆえに画面内容を複数人と共有するのも簡単で、これも3Dビューを使った関係者とのコミュニケーションを効率化するのに役立つ機能といえます」。

リノベーションのプロセス革新にもThinkPad P1 Gen4は効く

ThinkPad P1 Gen4では「Thunderbolt 4」対応のUSBポートや「PCIe NVMe OPAL」対応のSSDをサポートするなど、I / O周りの性能も高められています。ゆえに、大量データをBIMソフトウェアに取り組むスピードが速くなり、その点もBIMによる設計プロセスの変革に有効であると大石氏は指摘します。

例えば、アーキ・キューブでは現在、Revitとオートデスクの3Dスキャンソフトウェア「ReCap Pro」などを使いながら、リノベーションのプロセス革新にも取り組んでいます。その革新プロセスとは、3Dスキャナーなどの計測装置で建物をクイックに測定したうえで、それによって取得した点群データをRevitに取り込み、3Dの現状モデルと改修モデルを作成してリモート施工(改修工事)にスムーズにつなげるというものです。

図4:アーキ・キューブが推進しているBIMによるリノベーションの新しいプロセス

アーキ・キューブは既にこのプロセスを実案件に適用しています。一例としては、京都女子大学 北尾靖雅研究室・シュルード設計(代表:安達基朗)との共同研究「産業遺産保存活用設計手法の研究」プロジェクトに参加した事例です。このプロジェクトにおいて、3Dスキャンした明治時代のれんが造りの水道施設における点群データをRevitに取り込み、模型製作用(3Dプリンター出力用)のデータやVR(仮想現実)コンテンツを作成するという試みを成功させています。

「この試みでは、他社製ワークステーションを使って膨大な点群データをRevitに読み込みましたが、それと同じ処理をThinkPad P1 Gen4を使って行ったところ、データを読み込む時間が3分の2に短縮されました。このことから、ThinkPad P1 Gen4はBIMによるリノベーションプロセスの変革においても有効に機能するとの手応えを感じました。日本の各地域では住宅の新築のプロジェクトは減少傾向にあり、リフォーム需要への対応が建設業のビジネスの柱になりつつあります。しかも、各地では空き家が増え、その再生・再利用も推し進めなければなりません。ThinkPad P1 Gen4は、そうしたリノベーションのプロセス改革に大きく貢献しうるということです」

BIMの普及へのレノボのさらなる貢献に期待

アーキ・キューブではベトナムに拠点を展開しています。その事業展開を通じて、ベトナムをはじめとするアジア諸国に比べて日本でのBIMの普及が遅れていることを知り、衝撃を受けたと大石氏は言います。そうした日本の現状を打開すべく、同氏はBIMの啓発活動にも意欲的に取り組んでいます。

「RevitなどのBIMソフトウェアを活用することで、例えば、一人の設計者が建物だけではなく、建物内の設備についても干渉をチェックしながらモデリングすることが可能になり、当社のような少人数の設計事務所でも、比較的大規模な建築プロジェクトをリードしていくことが可能になります。加えて言えば、BIMソフトウェアを使った作図作業は効率的であるうえに、3Dモデルを使った施主や施工関係者との意思疎通も円滑になり、設計のプロセスを通じて顧客満足度が高められ、かつ、関係者との合意を形成しながら設計が進められるので手戻りも少なくなります。そうしたBIMのメリットをより多くの設計者の方、あるいは設計事務所の方々に享受していただきたいというのが私の願いです」と、大石氏は明かします。

  • Revitによる3D構造ビューの例(アーキ・キューブが設計を手がけた岐阜市内某保育所)

  • 3D外観ビューの例

  • 3D内観ビューの例

また、BIMによる設計プロセスは、設計者が自らの創造性やセンスを惜しみなく生かせるために面白みもあり、次代の担い手である若手の設計者から支持されていると大石氏は言います。

「当社の場合、社員の大多数が若い世代の設計者です。そうした社員の全員がRevitの運用による作図効率の良さに驚き『もう2D CADだけの環境には戻りたくない』と言い始めました。要するに、BIMに対する積極的な取り組みは、若い世代の関心を集めやすく、建築業界の人材を確保することにつながるというわけです」(大石氏)。

大石氏によれば、Revitを運用したアーキ・キューブの社員からは「Revitの活用により、住宅の基本図面(平面図・立面図、断面図)の作成に要する時間が2D CADを使っていたときの2分の1以下になった」「2D CADの作図に比べると6割程度の効率化が図れている」「他の設計者や施主・大工・家具職人など、関係者とのイメージ共有が容易になり、施工ミスを回避できるようになった」といった評価の声が聞かれているようです。

「こうしたBIMソフトウェアの効果・生産性をさらに高めてくれるのが、ThinkPad P1 Gen4のような高性能モバイルワークステーションにほかなりません。当社では新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに社員全員が在宅勤務の体制に移行しましたが、その際には、オフィスと変わらぬ生産性を自宅でも確保するために社内で使用していたデスクトップワークステーションと2台のモニターを自宅に持ち帰った社員もいます。仮に、ThinkPad P1 Gen4があれば、そのようなことはしなくても済んだはずです」と、大石氏は明かします。

ちなみに、在宅勤務用にThinkPad P1 Gen4ほどのハイスペックなワークステーションが必要ではない場合には、より軽量・コンパクトで廉価なThinkPad P14s Gen2(第11世代インテル Coreプロセッサー/NVIDIA Quadro T500に対応)を使うという選択肢もレノボから提供されています。

「Revitの廉価版『Revit LT』なら、ThinkPad P14s Gen2でも問題なく稼働させられます。Revit LTはRevitに比べて機能的な制約があり、レンダリングもローカルのハードウェアではなくオートデスクのクラウド上で行う必要がありますが、リモートワーク専用のBIM環境としてとらえれば、RevitとThinkPad P14s Gen2とのコンビネーションは導入する意義の大きなソリューションといえます」と大石氏は指摘し、次のように話を締めくくります。

「今回、ThinkPad P1 Gen4を試用し、性能検証を行ったことで、このモバイルワークステーションがBIMソフトウェアを使った設計業務に極めて適した製品であることが確認できました。今後、ThinkPad P1 Gen4やThinkPad P14s Gen2のような製品が増え、普及していけば日本におけるBIMの浸透の大きな助けになるはずです。その意味でも、レノボにはこれからも優れたハードウェアを提供し、BIMによる設計プロセスの革新に貢献していただきたいと思っています」

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