進化するハンドヘルド3Dスキャナー ~3Dスキャナーの光源~

リバースエンジニアリング最前線

スキャンモード(光投影法/レーザー切断方式)を切り替えられたり、据え置き・ハンディ両方で使用できたりと、3Dスキャナーの性能が向上しています。3Dスキャナーにとって重要な「光源」も高機能化していることをご存じでしょうか? 3Dスキャンが難しかった局面でも高精度にスキャンできるモデルが登場しました。

光をとらえて測定する

現在、市場で販売されている3Dスキャナーにはさまざまな方式がありますが、基本的には測定対象物に光(レーザー、可視光、X線など)を当て、跳ね返ってきた情報を光学センサーで捕まえ、測定対象物の距離や形状を測定する方法です。

3Dスキャン方式の分類

測定対象物に影響を与える要因

測定対象物の解像度や精度を決定する要因に次の2点が挙げられます。

  • 測定対象に投射するパターンの鮮明さ
  • 光学センサーの画素数

投射したパターンが画像センサーに跳ね返ってこなければ、測定できず3Dスキャンの像が結像しません。具体的には、メッキやステンレスなどの光沢反射物、黒い物体やぬいぐるみのように光を吸収してしまうもの、そして透明な物体です。

電子やX線などを利用すればスキャンできますが、設備自体が高額でもあり、導入には高いハードルがあります。実際の3Dスキャンではそういった対象物に塗装あるいは洗浄可能なスプレーを用いてスキャンします。しかし、塗装スキルによって塗膜の厚みやムラなどで100μmオーダーの測定では誤差が発生してしまうこともあります。

対象物にスプレーをした状態

期待しないでください「3Dスキャナーは万能の入力装置ではありません」

3Dスキャナーの光源

通常の3Dスキャナーは、高出力の電球による可視光を用いて細かいパターンを投射し、高解像度の画像センサーで対象物を測定します。

種別メリットデメリット
フィラメント電球光源としては非常に安価高出力光源の場合非常に高温になる
(エネルギーの半分以上が熱損失)
赤外線黒い物体からの反射を利用可能センサー側に赤外フィルターが必要
白色LED熱損失も少なく明るい光源が得られる疑似白色のため黒や光沢反射は苦手
青色LEDスペクトル分布が単一で波長が短く、高精度が期待青色LEDが開発され民政化されたのはごく最近のため、若干高価

LEDによりスキャンの可能性が広がる

ここ数年では、高輝度のLEDによるパターン投射により、画像センサーの「撮れ高」が増え、多少の明暗のある対象物もスキャンできるようになりました。

しかし、白色LEDは、RGBの3原色の混合あるいは黄色LEDを蛍光体にぶつけて生成する白色光で、複数の波長が混合するため結像にわずかに誤差が生じる場合があります。そのため、3Dスキャナーメーカー各社は光源に対して研究を続けています。

白色LEDの原理

ブルーレーザーや赤外線

単一波長による光源は、対象物から反射する情報も整列された情報となり、撮れ高も向上します。

青色光は従来使用されてきた赤色や白色可視色より波長が短いので、対象物の中に入り込まずに表面に光輝点を形成することで画像センサーに対して安定した情報を提供します。従って半透明の対象物やメッキなど光沢表面といった測定に力を発揮します。

過去数年で青色光を使用した光学3Dスキャナーは各社で採用され、青色LEDや青色レーザーといったモジュールを内蔵しはじめました。また、赤外LEDを用いて黒色表面を赤外画像センサーで反射情報をキャッチし、人体や頭髪をスキャンできるようになった3Dスキャナーも登場しはじめました。

青色光

赤外光

双子の3Dスキャナー「EinScan HX / H」

Shining 3D社のEinScanシリーズから、ハンドヘルドスキャンに特化した「EinScan HX / H」が登場しました。

「EinScan HX」はブルー光とブルーレーザーを、「EinScan H」は通常光と赤外線プロジェクターをそれぞれ内蔵したことで、今まで3Dスキャンが難しかった局面を劇的に改善。さらに、両機種ともカラーカメラを標準で内蔵しているので、詳細な形状とリアルな色情報を同時に取得でき、VRやCG、デジタルアーカイブ用途にも最適な3Dスキャナーとなりました。

固定スキャン機能を省きハンドヘルドに特化したことで、一度にスキャンできる面積が大幅に拡大。その結果、従来機種をしのぐ圧倒的なスキャンスピードを実現しました。

EinScan HX / H

いずれも100万円台で購入できる機種としては非常にユーザーフレンドリーで、スキャナーオペレーターおよび対象物への負荷が劇的に軽減します。

これら2種のスキャナーはハンドヘルド方式で0.5~4mほどの測定範囲ですが、誤差を詰める必要がなければ特徴形状による位置合わせ方法を、精度を高める必要があればマーカーシールを用いた位置合わせを、それぞれ使い分けることができます。マーカーシールによる位置合わせは、形状にもよりますが1mあたりの誤差±50μm以下での走査も可能。固定式やアーム式を用いずともハンドヘルド方式で寸法評価もできる時代がやってきたのです。

HXではこれら自動車のボディが、マーカーシールを貼る時間を含め1時間かからずともスキャン可能

EinScan HX 製品情報