【3DEXPERIENCE World 2026レポート 2日目】AIがものづくりの常識を更新する

2026年に開催された「3DEXPERIENCE World」では、AIが設計・製造の未来を大きく変革していくことが鮮明に示されました。

2日目の基調講演では、ダッソー・システムズとNVIDIAのトップが登壇し、25年以上にわたる協業を背景に、AIとバーチャルツインがこれからの産業基盤になる姿を紹介しました。物理現象をリアルタイムに再現するシミュレーション技術や、設計者を支援するバーチャルコンパニオンの進化など、エンジニアリングの常識を塗り替える発表が相次ぎました。

AIの進化と普及が進む未来

2日目の基調講演はダッソーシステムズCEO:パスカル・ダロズ氏と共にNVIDIA創設者兼CEO:ジェンスン・フアン氏が登壇してスタート。両社のコラボレーション開始から四半世紀以上が経過し、コンピューター業界では生じた革命としてコンピューターのパーソナル化、Windowsベースのワークステーションの登場、CgFXテクノロジーの開発、CUDAの開発などを挙げた。

フアン氏は「今私たちが迎えている生成経済(Generative Economy)の時代では、物理的な世界を仮想世界で表現するために、より多くの情報を処理できるAIコンピューターが必要になる。これまで水道、電気、インターネットがインフラとして普及していったように、AIはあらゆる産業の基盤となっていくだろう」と主張した。

NVIDIA社技術との統合を発表

ダッソーシステムズは同社の各種ソフトウェアにおいて、「NVIDIA Cuda-Xアクセラレーションライブラリ」、「NVIDIA AI」、デジタルツインテクノロジーである「NVIDIA Omniverse」などのNVIDIA社技術との統合を発表した。

フアン氏は「PhysicsNeMoと呼ばれる物理を考慮したAIモデルシミュレーションシステムでは、これまでよりも10,000倍速く、原理法則に基づいた現象を予想できるようになり、大規模なモデルを用いたシミュレーションをリアルタイムに実行できるようになる。AIとバーチャルツインの融合が進むことで、物質がどのように崩壊するか、衝突すると何が起こるかといった物理法則を仮想世界で正確に予測できる未来は、手に届くところにある」と語った。

両社の提携により、バーチャルツインを支える産業用AIプラットフォームの構築が進められていくと語られた

工場設計におけるAI活用

何百万ものオブジェクトで構成される工場を完全にバーチャルツインで再現、シミュレーションすることで、製造ラインの適正を正確に評価できるようになると説明する中、関連する事例として日本の顧客:オムロン株式会社の事例が紹介された。

オムロン株式会社執行役員常務 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長:山西基裕氏はコメント内で「製造業は完全に自立的でデジタル検証された生産システムへの移行が必要がある。NVIDIAの物理AIワークフレーム、ダッソーシステムズのバーチャルツインファクトリー、オムロンのオートメーション技術を組み合わせることで、設計から導入まで、確実かつ迅速に進めることができる」と説明した。

  • 工場設計のシミュレーション事例として日本企業:オムロン株式会社のコメントが壇上で紹介された

ワークフローを変えるバーチャルコンパニオン

話のテーマは1日目にも登場したバーチャルコンパニオンへと移る。スケッチやモデル作成、シミュレーションなど、さまざまなタスクを簡単な指示だけで実行できるバーチャルコンパニオンは、設計者のワークフローを変える革命だと強調した。

フアン氏は「SOLIDWORKSの設計者は将来、自身のタスクを支援する仲間(コンパニオン)のチームを持つことになる。ユーザーは仲間へ指示を出したり、調整を行うだけで設計におけるあらゆる選択肢を手に入れられようになる」とし、AIによるワークフローの変化を語った。

ダロズ氏は航空業界の国立研究所であるNIAR社の事例を挙げ、「満たすべき要件が10,000以上に上る設計であっても、バーチャルコンパニオンにより適合性を確認できる。自らが何百万ページもの仕様書を読む必要はなくなる」とAI活用の優位性を強調した。

SOLIDWORKSに搭載される機能

SOLIDWORKS CEO マニッシュ・クマー氏はバーチャルコンパニオン「AURA(オーラ)」、「LEO(レオ)」、「MARIE(マリー)」を改めて紹介。それぞれ必要な時に相談できるが専門家として存在するパートナーであり、より良い仕事を迅速に実現できるように支援すると説明。

既存の知識、ノウハウを探索して活用できる「AURA」で設計に関するアイデアを出し、設計上の課題を実現するための具体的な計画を「LEO」に相談するなど、各コンパニオン機能の使い分けを紹介した。

デモ動画では「LEO」によりアセンブリ構成の作成をはじめ、イメージ画像から3Dメッシュモデルを生成、インポートモデルをパラメトリックモデルで再現、フィーチャーエラーの解決方法提示など、さまざまなタスクをAIで処理する様子が紹介された。

  • デモ映像によりアセンブリ構成の作成、メッシュモデルの生成、インポートモデルをパラメトリックモデルで再現など、さまざまな作業がテキストでの指示だけで実行される様子が紹介された

デモ後半では、過去にモデルマニアの課題となったモデルを「LEO」への指示だけで作成する様子が映し出された。個別のモデリングコマンドを実行することなく、CAD上でテキストまたは音声指示だけでモデルを作成できる点を強調した。

また、容量500,000リットルの貯水槽を支持するフレームモデルの仕様を「LEO」に与えるだけで、SOLIDWORKS Designを用いて約5分でモデルの作成から解析まで自動で実行できると説明した。

実際にご覧いただいたいくつかの機能は近日リリースされる予定であることも語った。

  • バーチャルコンパニオン「LEO」を使用することで仕様を与えるだけで簡単に条件を満たすモデルが作成される様子が紹介された

SOLIDWORKS最新機能の紹介

「Don't Miss This Demo」のコーナーではSOLIDWORKS最新機能が技術マーケティングチームの寸劇と共に紹介された。下記、紹介された機能を抜粋。

SOLIDWORKS 2026 FD01の新機能

部品表と図面ビューのコンフィギュレーションのリンク

部品表とアセンブリ図面ビューのコンフィギュレーションをリンクし、参照コンフィギュレーションが変更された際、自動で部品表を更新。

図面ビューにグラフィックボディ表示

図面のドキュメントプロパティにて、図面ビューでグラフィックボディを表示するオプションが追加。

参照モデルの最新リビジョンを取得

3DEXPERIENCEからモデルを開く際、参照構成部品の最新リビジョンを取得するオプションが追加。

  • 「グラフィックボディを表示」オプションにより図面ビュー内でグラフィックボディを表示

  • オプションにより最新リビジョンを取得して開ける

パターンアシスタント機能

パターン穴へ部品を合致する際、「パターンアシスタント機能」によりパターン駆動構成部品パターンを自動作成。

スケッチエンティティの関係グループ

複数エンティティを選択して「同一線上」、「等しい値」、「平行」、「同一半径」拘束を定義した際、それらエンティティが自動的にグループ化され、後から一括で拘束の削除が可能。

部品表に3DEXPERIENCE属性を追加

部品表の列にPLM属性として3DEXPERIENCEでマッピングしたプロパティ情報を追加。

穴ねじ山の詳細情報を表示

MBDモデルと図面で穴ねじ山の詳細を表示できるよう、ドキュメントプロパティで設定が可能。

  • 「パターンアシスタント」により構成部品パターンを自動生成

  • 同一の拘束を定義したスケッチエンティティをグループとして扱える

将来搭載予定の機能

  • モデルアイテムでDimXpert寸法をインポート
  • 図面の注記にてWordのようにテキストを指定カラーで強調表示

スロット寸法の改善

スロット寸法を円弧の最大長から円弧中心間の距離へと切り替えるオプション追加。

シンボルライブラリのお気に入り登録

寸法、注記内に追加するシンボルライブラリの「お気に入り登録」に対応。

フリーズ&保存

部品、アセンブリ、サブアセンブリの再構築や更新を停止し、意図しない変更を防止、パフォーマンスを向上。

  • 注記内のテキストに対して色を指定して強調表示を適用

  • 部品やアセンブリをフリーズさせることツリー上にフリーズアイコンが表示

スケッチ平面を見失ったエラーの自動修復機能

ボタン1つで見失ったスケッチ平面の代替面を探し出してエラーを修復。

質量特性で断面係数表示

質量特性コマンドで選択中の面の断面係数を表示。

パターンフィーチャーのパフォーマンス向上

多数のジオメトリを含むパターンフィーチャーの再構築時間が短縮。

パフォーマンスアシスタント

ステータスバーからパフォーマンスアシスタント機能へアクセスし、パフォーマンス負荷の大きいモデルを直接確認。

  • パターンフィーチャーのパフォーマンスが向上

  • 「パフォーマンスアシスタント」により、関連情報を素早く表示できる

隔離機能の強化

隔離表示中、さらにモデルを指定して隔離したり、表示状態として保存可能。

AIによるファスナーの簡略化

挿入したファスナー部品のねじ山部分を自動で簡略化。

各機能へのアクセス

CommandManagerからコメント、マークアップ、Collaborative Tasks機能へアクセス。

図面のバックグラウンド更新

変更が生じたパーツ、アセンブリ図面をバックグラウンドで更新。

板金部品のデザインアシスタント

デザインアシスタント機能により溶接ビードの位置を自動で検索し、ビードの作成を補助。

非線形スタディ:ボルトのプリロード

ボルト締結設定にて、開始/終了時間を指定して段階的に締め付けるプリロード設定に対応。

  • モデルに関するコメントの追加など、3DEXPERIENCE機能にCAD画面から直接アクセス

  • ファスナー部品をAIで自動認識し、ねじ山などの形状を自動で簡略化