BIMの魅力を感じる第一歩として、BIM・Revitに関する資料をご用意しています。無料でダウンロードいただけますので、ぜひお気軽にお取り寄せください。
CADからBIMへ ~Revitを使おう~
若手設計者の悩み
「BIMが話題になっているが、どうやって始めていいかわからない」
「事務所にはRevitがあるが誰も使っていないので実務で使ってみたい」
「Revitでこのプロジェクトに取り組んでみたいが、失敗したらどうしよう」
そんな思いに応える「CADからBIMへ - Revitを使おう」です。わかりやすいBIM、Revitの使い方、Revitを使い始める方法を解説します。
監修・執筆:鈴木 裕二
1.AutoCADからRevitへ
二次元CADからBIMへ移行すると、これまでの操作方法は使えずまた一から覚え直さないといけないのでしょうか。いえ、そんなことはありません。例えば二次元CADの代表格AutoCADを例にとりましょう。AutoCADとRevitはどちらもWindows上で動作し、同じオートデスク社の製品です。
AutoCADでは図のように始点と終点をクリックして厚さ100mmの壁をポリラインで作ります。用意された窓の平面図ブロックを、位置を指定して配置します。窓ブロックやポリラインのプロパティを見て内容を確認したり、寸法を変更したりできます。
次はRevitです。壁の種類を選んで始点と終点をクリックして壁を作ります。次に窓の種類を選んで壁に配置します。壁や窓のプロパティで寸法を確認し変更することができます。
どうでしょう?AutoCADとRevitそのユーザーインターフェイスは似ています。平面図で作図する操作手順も同じでした。画面を移動したりズームしたり、図形を選択するマウスのボタン操作も同じです。
このようにAutoCADに慣れた人なら、AutoCADからRevitへ移行しても操作方法に迷うことはありません。
2.2Dと3Dのビューを同時に
AutoCADもRevitも操作は同じですと書きましたが、その機能には大きな違いがあります。壁と窓の操作をRevitで続けましょう。
平面図で壁と窓を配置しました。Revitらしさはここからです。下図の赤で囲った家のデザインの「既定の3Dビュー」アイコンをクリックすると、壁と窓がいきなり3次元になって現れます。学校でRevitを教えていると最初に学生たちが「オーッ」と声を上げる時です。二次元の平面図を作っていたつもりだったのに三次元のモデルができているので驚きます。
もちろん2Dと3Dのウィンドウを並べて表示できます。どれかのウィンドウで窓を動かせば、全てのウィンドウに表示された窓が変化します。
平面図で線を引きながら「立体ではどう見えるかな?」と頭の中で想像する必要はありません。3Dの立体がそこに見えているのですから。また平面図と3D、そして立面図は常に連携しているのです。平面図と立面図が食い違うというありがちな図面のミスが起きることはありません。
実務で設計を行っている人ならここで気づくはずです。「……ということは、平面図で壁や窓を置くときに正確な高さ方向の数値を考えておかなければいけないのか」その通りです。平面図中心に考えていた設計が、常に三次元を意識した設計方法に変わるのです。三次元モデルだけを表示して設計するという若手設計者もいます。
あるいは設計しながらときどきヘッドマウントディスプレイを付けて、VR(バーチャル リアリティ)の中で見え方を確認して、という手法もふつうに行われるようになってきました。
3.Revit嫌いな人好きな人
BIMは嫌いという設計者もいます。既製品の部品を寄せ集めた、いかにもプレハブ建築になってしまうというのがその理由です。
そんなことはないと言いたいところですが、実は半分当たっています。あらかじめRevitに用意された部品(Revitでは「ファミリ」と呼びます)を使って設計する限りは既製品の寄せ集めになります。個性的な形の窓を使いたい、ゆがんだ壁と波打つ屋根を作りたいとなるとハードルが高くなります。標準ではない窓ならファミリを新たに作る必要があります。慣れないうちは専門の人に頼んだ方がいいでしょう。Revitファミリづくりの解説書もあります。
【ファミリ作成の解説書】
BIMをもっと活用したい人のための Autodesk Revit ファミリ入門 (Revit 2019対応)
小林 美砂子、中川 まゆ、内田 公平 出版社 : エクスナレッジ (2019/3/31)
実はゆがんだ壁と波打つ屋根のほうはRevitの得意技です。図のような建物が簡単に作れます。解説はここでは省きます。キーワードは「マス」です。
4.Revitにレイヤーはないけれど
「レイヤー」はAutoCADでは「画層」と呼ばれるCADの基本機能です。寸法のレイヤーだけ表示させておいて一気に削除する、あるいは立面図で窓のレイヤーにある図形を全て選択して建具表にコピーするというような時に、あるレイヤーだけ表示しておいて図形を選択するというように使われます。
手描き図面の時代に透明なシートを重ねて作図する手法を、コンピュータの中で使えるようにしたものだそうです。Revitにはこのレイヤーがありません。しかし表示や選択にはBIMらしいレイヤーより進んだ機能があります。目的の要素をわかりやすく表示や選択するRevitの機能を使いこなせるかどうかが、Revit使いのポイントです。いくつかのRevitの表示、選択機能を図に示します。
5.面積表を見ながら設計
建築設計では建物の面積も大事です。建ぺい率やのべ床面積が法で決められた範囲を超えていたら違法建築になってしまいます。例えば保育所なら乳児室の面積は1.65m2/人、ほふく室の面積は3.3m2/人、2歳以上の保育室の面積は1.98m2/人などと細かな最低基準が決められています。定員によるこれらの面積が確保できているか気にしながら間仕切壁を配置していかなければいけません。
Revitを使えば面積表を表示させなから、壁を配置していくことができます。壁を動かせば面積表も変わります。これだけでもAutoCADからRevitに乗り換える値打ちはあります。
- * m2=平方メートル
6.意匠・構造・設備の連携こそがBIM
面積をチェックしながら設計するのもシミュレーションの一つですが、Revitではエネルギー、色、照明、構造などを常にチェックしながら設計を進めることができます。意匠-構造-設備のモデルをRevitの中で重ね合わせることもできます。
これまでは別ファイルに書き出して、専門的なソフトウエアで計算してまた結果をファイルに書き出してインポート、あるいは結果は別ファイルのままで検討という手順が一般に使われていました。それがだんだんRevitの中で全て実行できたり、専門ソフトウエアとシームレスに連結したりできるようになってきました。
図は建物の構造計算に使う柱や梁の構造芯(Revitでは解析線分と呼ばれる)を表示しています。配置された柱や梁が正しくつながっているかをここでチェックすることができます。構造芯を確認できたらRevitの中から構造計算ソフトウエアを起動して計算します。
7.使えるツール紹介
すでにRevitを使っているユーザ向けに、便利ツールを一つ紹介しておきます。Revit Extension for Architecture Japan 2021というオートデスク社製の無料のツールです。Autodesk App Storeというサイトからダウンロードできます。
Revit Extension for Architecture Japan 2021をインストールするといくつかのツールが使えるようになります。これらのツールの内で筆者の気に入っているのは図のExcel「エクスポート」ツールと、「インポート」ツールです。よくBIMはデータベースだと言われます。データベースですから、例えば「窓」を選択してそのプロパティをExcelに書き出すということができます。
そしてこのツールの便利なのはExcelで変更したその結果をRevitに戻す(インポート)ことができることです。次の図では窓を選択して書き出し、窓の建具番号を変更してRevitに戻すという一覧の作業を行っています。窓に限らず同じような作業はほぼ全てのRevit要素を対象にできます。図面番号の付け直しなどにも重宝します。
監修・執筆:鈴木 裕二
1954年 大阪生まれ。アド設計代表、2011年 BIM LABOを設立する。主な著書に『徹底解説AutoCAD LT』シリーズ、『AutoCAD神テク105』(いずれもエクスナレッジ)、『ARCHICADでつくるBIM施工図入門』(鹿島出版会)など。