Vectorworks 2023の動作検証済みモデルを解説

エーアンドエーがPCの性能検証を実施

建築設計やインテリアデザインの業務では、3D CAD / BIMソフトウェアが近年急速に普及しており、それらを快適に動作させられるPCの必要性が高まっている。「Vectorworks 2023」の国内総販売元であるエーアンドエーは、マウスコンピューターとの協業の下、Vectorworks 2023を快適に動作できるモデルを検証した。実際にレンダリングを行った場合の所要時間などの検証結果とともに、特長や想定利用シーン、ユーザーメリットを見ていく。

Vectorworks 2023の強み

建築設計やインテリアデザインの業務に欠かせない3D CAD / BIMソフトウェア「Vectorworks 2023」は、世界中のユーザーに長年使われている製品である。国内総販売元であるエーアンドエー株式会社 営業本部 カスタマーサクセス部 カスタマーサクセス課 課長 佐藤和孝氏は同製品の強みを次のように語る。

「Vectorworksシリーズは直感的に使える操作性の高さが高く評価されています。さらに2022年からはWindowsならDirectX、MacならMetalというOS標準のグラフィックスに対応し、PCの性能をより引き出せるようになりました。そのうえ、建具表をワンクリックで作成できるなど、痒いところに手が届く機能も多数実装されています」(佐藤氏)

エーアンドエー株式会社 営業本部 カスタマーサクセス部 カスタマーサクセス課 課長 佐藤和孝 氏

これらVectorworks 2023の強みを生かすことで、ユーザーの業務を効率化し、かつ、クリエイティビティをより発揮できる環境を整備するには、最適なPCで稼働させる必要があるのは言うまでもない。

デスクトップPCとノートPCの動作検証(レンダリング時間を実測)

エーアンドエーはこの度、マウスコンピューターと協業し、マウスコンピューター製PCのVectorworks 2023向け動作検証モデルを精査するため、デスクトップPCとノートPCのエントリー・ミドル・ハイエンドモデルの計6機種で実機検証を行った。

表1:マウスコンピューターのエントリー・ミドル・ハイエンドモデルの6機種で、エーアンドエーがVectorworks 2023の動作検証を行った結果(モデル、スペックは動作検証時のものであり、現行の販売製品とは異なる場合があります)

検証では主に3Dモデルのレンダリング時間を計測。レンダリングモジュールはCPUベースの「Renderworks」、GPUベースの「Redshift」および「シェイド」の3種類を用いた。RenderworksとRedshiftではそれぞれ以下の3Dモデルでレンダリング時間を計測した。

  • 図2:Renderworksのレンダリングに用いた3Dモデル

  • 図3:Redshiftのレンダリングに用いた3Dモデル

佐藤氏は表1の検証結果全般を総括し、「どのモデルもVectorworks 2023をスムーズに動かすのに十分な性能が得られました。コストパフォーマンスも高いですね」と前置きしたうえで、特に注目したのがミドルモデルである。

レンダリング時間は例えばデスクトップの場合、図2の3DモデルをRenderworksによって解像度300dpiで仕上げレンダリングした結果、所要時間は22分30秒である(表1<A>)。エントリーモデルの44分57秒と比べ、約半分で済んでいる。

図3の3DモデルをRedshiftによって解像度300dpiで仕上げレンダリングした結果は、所要時間は3分27秒である(表1<B>)。こちらはエントリーモデルの9分46秒に比べ、1 / 3近く短い時間だ。シェイドによるアニメーション取り出しのレンダリング時間も所要時間は半分以下である(表1<C>)。

「ミドルモデルはこれだけ高スペックのデスクトップPCがこの価格で手に入ることに驚きました。PCを3~5年使うと仮定すると、エントリーモデルとの価格差を3~5年×12カ月で割ったら、月々2,400~4,000円程度の違いしかありません。どのモデルもコストパフォーマンスが高いのですが、特にミドルモデルは投資として非常に優れていますね」(佐藤氏)

DAIV FX-I7G70

型番:FXI7G70B7ADCW101DEC
OS:Windows 11 Home 64ビット
CPU:インテル Core i7-14700KF プロセッサー
グラフィックス:GeForce RTX 4070
メモリー:32GB(16GB×2/デュアルチャネル)
M.2 SSD:2TB(NVMe Gen4×4)

  • * 動作検証モデルのOSは「Windows 11 Pro 64ビット」にカスタマイズしています。標準構成の「Windows 11 Home 64ビット」での動作は検証していません。動作検証モデルの後継機です(2023年10月販売モデル)。

ハイエンドモデルなら同時にリアルタイムレンダリングを動作

さらに佐藤氏は実際の利用シーンを想定した際のミドルモデルのメリットとして、「処理能力が高いので、Vectorworks 2023によってバックグラウンドでレンダリングの処理を走らせながらも、Office系などほかのソフトで快適な作業を行えます。レンダリング待ち時間が不要となり、業務を効率化できるでしょう」と挙げた。

また、レンダリング時間は表1<A><B><C>の通り、CPUベースのRenderworksはGPUベースのRedshift/シェイドに比べ、多くの時間を要する。その分、影や間接光などがより精緻でリアルな表現の3Dモデルを作成できる。以上の違いを踏まえ、両者の使い分けの例を佐藤氏はこう述べる。

「短時間で済むGPUベースのレンダリングは、顧客先や現場での打ち合わせで、設計変更を加えた3Dモデルをその場で素早く確認したいときなどに利用します。CPUベースのレンダリングは、プレゼンでよりリアルな3Dモデルが必要な際などに使用します」(佐藤氏)

一方、ハイエンドモデルも佐藤氏は高く評価している。レンダリング時間はエントリーモデルとミドルモデルほどの差はないものの、それ以上に大きなメリットとなるのが、余裕のあるスペックのおかげで高度なソフトを複数同時に使える点である。

「場合によってはTwinmotionやLumionなど、リアルタイムレンダリングのソフトを別に使いたいケースがあります。ミドルモデルはVRAM容量などから、Vectorworks 2023と同時には動かせませんが、ハイエンドモデルなら可能です。そして、Vectorworks 2023はTwinmotionなどとデータをボタン一つでダイレクトリンクできます」(佐藤氏)

水冷で静かなデスクトップPCノートPCは顧客先でウォークスルー

次に動作検証済みモデルのデスクトップPCとノートPCそれぞれの特長と想定活用シーンにも言及した。デスクトップPCでまず注目したのが静音性である。「水冷方式なので、レンダリングなど高負荷な処理の最中でも大変静かです。建築設計事務所などクリエイティブな作業に集中したい環境では、PCのファンの騒音は極力抑えたいので最適ですね」と佐藤氏は目を細める。

加えて、本体下部に装備されたキャスターについても、「背面のケーブル抜き差しなどで、少しだけ本体を動かしたい際に重宝します」(佐藤氏)と語る。

ノートPCについては、軽量で強度も高いため持ち運びやすい点を評価。想定活用シーンとして、以下を例に挙げた。顧客先を訪問し、備え付けのモニターにノートPCをHDMIで接続。Vectorworks 2023のウォークスルーツールを使い、3Dモデル内を移動して顧客と確認を行うというシチュエーションである。

「顧客と一緒に大画面で窓の高さなどを確認し、その場で3Dモデルを修正できます。それによって要望の認識違いを解消でき、トラブルを未然に防げます。3Dモデルを変更すると、図面に自動で反映されますから、一昔前のように、一度事務所に戻って図面変更と3Dモデル再作成を行う必要がなく、スピーディーに業務を進められます」(佐藤氏)

ほかにもノートPCはディスプレイが16インチで、画面比率が16:10である点も特長だ。一般的な16:9の機種に比べ、画面に高さをより確保できるため、「図面等の表示領域には高さができるだけ欲しいので助かります」(佐藤氏)。しかも、テンキー付きであり、数値入力を駆使するベテランユーザーにとって有益である。

DAIV N6-I9G90BK-A

型番:N6I9G90BKACCW101DEC
OS:Windows 11 Pro 64ビット
CPU:インテル Core i9-13900HX プロセッサー
グラフィックス:GeForce RTX 4090 Laptop GPU
メモリー:64GB(32GB×2/デュアルチャネル)
M.2 SSD:1TB(NVMe Gen4×4)
パネル:16型 液晶パネル(ノングレア/sRGB比100%)
解像度:2,560×1,600(WQXGA)

  • * 動作検証モデルのOSは「Windows 11 Pro 64ビット」にカスタマイズしています。標準構成の「Windows 11 Home 64ビット」での動作は検証していません。

3D CADやBIMが主流の時代を見据えマウスコンピューターの動作検証済みモデルで最適な環境を即実現

これら動作検証済みモデルがあらかじめ用意されていることがユーザーにもたらすメリットを「従来はVectorworks 2023が快適に動作するのか、実際に試さないと判断できなかったのですが、動作検証済みモデルなら試さなくても最適な機種を購入できます。試す時間と労力が不要となり、誤って不適切な機種を購入してしまうリスクもなくせます」と佐藤氏は強調する。

佐藤氏がお勧めする動作検証済みモデルはデスクトップPCならミドルモデル「DAIV FX-I7G70」、ノートPCならハイエンドモデル「DAIV N6-I9G90BK-A」とミドルモデル「DAIV Z6-I9G70SR-A」の3機種だ。

「もちろん、ご自分の予算とスペックのバランスから選ぶべきですが、これから3D CADやBIMが当たり前の時代を迎える中、これら3モデルをお勧めします」

DAIV Z6-I9G70SR-A

型番:Z6I9G70SRACCW101DEC
OS:Windows 11 Pro 64ビット
CPU:インテル Core i9-13900H プロセッサー
グラフィックス:GeForce RTX 4070 Laptop GPU
メモリー:32GB(16GB×2/デュアルチャネル)
M.2 SSD:1TB(NVMe Gen4×4)
パネル:16型 液晶パネル(ノングレア/sRGB比100%)
解像度:2,560×1,600(WQXGA)

  • * 動作検証モデルのOSは「Windows 11 Pro 64ビット」にカスタマイズしています。標準構成の「Windows 11 Home 64ビット」での動作は検証していません。

最後に佐藤氏はユーザーに向けたメッセージとして、「今まで2D CADしか使ってこなかったユーザーはぜひ、Vectorworks 2023とマウスコンピューターの動作検証済みモデルの組み合わせで、3D CAD / BIMに挑戦してほしいです。既に3D CAD / BIMを導入済みなら、PCを動作検証済みモデルに変更することで、もう一歩先の設計・デザイン環境を手に入れることができます」と話す。

エーアンドエーは今後もマウスコンピューターと協業を続け、Vectorworks 2023とPCの各種検証や情報発信などを意欲的に実施することで、建築設計およびインテリアデザイン業界全体に貢献していく。