With/Afterコロナ時代に求められるIT機器について ~近未来のオフィスに求められるデザイン~

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークが急速に普及した。東京都の調査によると都内企業のテレワーク実施率は52.1%(従業員30人以上。2022年4月時点)。テレワーク実施回数は週3日以上が47.8%。

  • テレワーク実施率:東京都産業労働局(2022年5月16日)報道発表

  • テレワーク実施回数:東京都産業労働局(2022年5月16日)報道発表

テレワークとオフィスワークに分散させる働き方へ変化してきており、それに伴いオフィス縮小を目的としてオフィス移転を検討する企業も増えている。つまり、オフィス環境のあるべき姿があらためて見直され始めているのだ。

このような働き方の変化に合わせ、各メーカーでは「近未来のオフィス環境にフィットする商品開発」が進められている。オフィス内で使用されているプリンターもその一つだ。

中でも、長野に本社を構えるセイコーエプソンは、近未来のオフィス環境にもなじむ独自デザインのプリンター商品開発に力を入れている。今回は製造業・建設業でも活躍している新製品の大判インクジェットプリンター開発背景について担当者に話を聞いた。

エプソンの自信作「SC-T7750D」開発秘話

エプソンでは、2021年6月30日に44インチ水性大判インクジェットプリンターSC-T7750Dを発表しました。今回はSC-T7750Dの製品デザインができた背景や商品化までの取り組みをご紹介したいと思います。

この商品の開発当初に、働き方改革の意識の高まりがありました。有識者への聞き取りやオフィス環境変化の調査を進めたところ、将来のオフィス環境はより知的生産性を高めながら、健康やストレスの軽減を両立する環境に変わる動きがあることが分かってきました。

これを実現するには今までの個人デスクに加え、よりコミュニケーションができるスペースや、リラックスできるスペースを確保することが必要とされていました。スペース確保のためには、オフィス内で不要なモノの整理やオフィスのレイアウトを変更する必要があります。プリンターの設置スペースもその一つです。

特にPOPや図面などを印刷する大判プリンターやオフィス内で共有使用しているビジネス向けプリンターは、消耗品の保管も含め大きなスペースが必要ですが、設置の自由度を増すことでスペース効率を高めたいと考えました。

図1:消耗品に囲まれた従来のプリンター設置イメージ

そこで、多くの使用環境や設置事例を調べ、「最も狭い所で使用していた1mの通路で使用できる製品を実現する」という目標を立てました。製品奥行きは500mm以下の499mmとしました。本体背面をフラットにして壁ピタ設置を可能とすることで、1mの通路内でも印刷作業に十分な奥行き500mmの作業スペースを作り出すことができます。

次に設置レイアウトの自由度を高めることを考えました。こちらは本体左右もフラット形状にして3面壁ピタ設置と全て前面操作を可能とすることで実現しています。設置場所は棚の下、壁沿いに複数台を横に並べる、製品背面を合わせアイランド型にするなど設置環境や印刷用途によって変えることができます。

さらにスペース効率を最大化するため、天面全体をフラットにすることを考えました。高さは作業台としてちょうど良い950mm程度としています。ノートPCや印刷物を置いたり、カッターマットを置いたりしてちょっとした印刷物の加工も可能になりました。

  • 図2:SC-T7750D

  • 図3-1:SC-T7750Dの設置イメージ(背面合わせ設置)

  • 図3-2:SC-T7750Dの設置イメージ(壁ピタ設置)

もう一つの課題は、印刷の作業効率を高めることでした。天面中央には大きな窓と機内照明を配置し、印刷状況をすぐに確認できるようにしました。右側には4.3インチタッチパネルを配置して操作ガイダンスを表示することで、迷わない操作を実現しています。

ロール紙セットの負担軽減のため、前面一部は引き出し構造や自動給紙構造にしています。非使用時は、本体に収納できる排紙バスケットやインクカートリッジの収納スペースの確保など整理された空間づくりにも貢献しています。

最後に外観デザインについてですが、凹凸を減らしシンプルな形状・オフィスプリンターと同じ白色配色にすることで洗練されたオフィス空間が作れる外観デザインとしました(図4参照)。SC-T7750Dは今までとやり方を変えて設計者とこだわって作り上げた自信作です!

  • 図4:洗練されたオフィスイメージ

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにテレワーク率が増加し、オフィス環境にも新たな変化が起きています。このような変化でもスペース効率にこだわったSC-T7750Dは柔軟にお客様の設置環境に収まり、多くの印刷ニーズに対応できると考えています。

この製品は大判プリンター市場初のレイアウト意匠権を取得し、公的にもレイアウト性を認めていただけました。また、製品特長が評価され、「2021年度グッドデザイン賞」も受賞しています。エプソンとしては、今後もこの新型プラットフォームでさまざまなバリエーションの展開を図り、生産性とデザイン性の両立でこれからのオフィス環境づくりに貢献していきます。

これからのオフィスに求められること

多くの企業で、これからのオフィスの在り方が見直され始めている。IT機器選定については、従来通りの生産性・機能性に加え、デザインやレイアウトのしやすさなども検討材料に含めることで、最適なIT機器選定が実現するのではないだろうか。

セイコーエプソン Pデザイン部課長 柳澤健司氏

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